心臓カテーテル検査の概要について
心臓カテーテル検査の概要
心臓病の検査には心電図、胸部レントゲン写真、心エコー、心筋シンチグラフィーなどがありますが、より詳しい検査をするために、『心臓カテーテル検査』があります。この検査は、血管内や心臓の各部屋の圧力を測定したり、レントゲンにうつる特殊な薬剤(造影剤)を注入し、心臓の血管(冠動脈)の状態や心臓のポンプとしての動き(左室造影)、弁の働きを調べたりすることができます。また、心臓の筋肉である心筋を病理学的に検査するための、心筋生検(心筋バイオプシー)と呼ばれる検査も行っています。これらの検査を総称して『心臓カテーテル検査』と呼んでいます。
当科では、患者様の状態に応じて日帰り(外来)心臓カテーテル検査と、(入院)心臓カテーテル検査との2つで対応しています。(※患者さんの病態に応じて、検査方法を変更させていただく場合があります)。
カテーテル室
心臓カテーテル検査は、血管造影室という特殊なレントゲン室で行います。当心臓病センターの血管造影室は全部で6室あります。
検査室へのこだわり:2008年12月には、木を基調とした温かみのある検査室をコンセプトとしたカテーテル検査2室のリニューアルを行いました。
血管撮影装置
血管撮影装置は、一度の撮影で2方向からの撮影が可能な『バイプレーン装置』を完備していますので、単方向撮影での心臓カテーテル検査より、造影剤を低減することができ、さらにより短い時間で検査をすることが可能です。また、画像を立体的に解析することができるので、より正確な情報を得ることができます。現在では、最新フラットパネルディテクタを採用したバイプレーン装置が主流となっています。
造影剤について
心臓カテーテル検査では、ヨード造影剤という薬剤を冠動脈に注入し、X線検査で病気の状況や程度、範囲といったことをより正確に評価するために用いています。造影剤を冠動脈に注入すると、体が熱く感じられますが直接の反応であり心配ありません。また、まれに副作用が起きることがありますが、カテーテル検査中は、スタッフが患者さんの様子を観察しており、万一の副作用に対してもすばやく対応が出来るようにした上で検査を行っています。
造影剤は、数時間すれば尿とともに対外に排出されます。検査後は十分水分摂取していただいて、体外排出促進を行っていただいています。
軽い副作用
吐き気、かゆみ、くしゃみ、咳、咽喉頭(のど)違和感、動悸、頭痛、発疹などです。
造影剤投与直後に現れることが多いですが、検査の 1〜2 日後に発疹が現れることもあります。
これらは治療を要さないか、1〜2 回の投薬や注射で回復するものです。
このような副作用の起こる確率は約100 人につき1〜1.5 人、約1〜1.5%です。
重い副作用
呼吸困難、ショック、意識障害、血圧低下、腎不全などです。
このような副作用は、入院の上での治療が必要で、場合によっては後遺症が残る可能性があります。
このような副作用の起こる確率は、約6,000〜9,000 人につき1 人、約0.01〜0.02%です。
病状・体質によっては 10〜20 万人に1人の割合(0.0005〜0.001%)で命にかかわる場合もあります。
心臓カテーテル検査の対象
当院では、狭心症などの冠動脈疾患の画像診断には、患者さんにとって負担の軽い検査(冠動脈CT検査、心臓MRI検査、心筋シンチグラフィ検査など)を優先して行いますが、下記の場合には心臓カテーテル検査を行います。
- 狭心症や心筋梗塞の確定診断
- 冠動脈インターベンション(ステント・風船治療)や冠動脈バイパス手術などの治療方針の決定
- ステント・風船治療後の経過観察
カテーテルの挿入方法
カテーテル(細い管)を体内に挿入する方法は下記の4つがありますが、現在当院では原則として、安全で患者さんの負担が一番軽いとされる親指の付け根(遠位橈骨動脈)からカテーテルを挿入する方法をとっています。 また、通常使用するカテーテルは、直径約1.7mm(5フレンチ)サイズのものを使用しています。
親指の付け根(遠位部橈骨動脈)からのカテーテル検査(遠位部橈骨動脈アプローチ)
親指からカテーテルを挿入して行う検査で当院の現在の標準方法です。
当院では、現在、検査、治療ともに可能な限りこの方法で行っています。緊急のカテーテル治療の場合にも、可能であればここから治療を行います。
メリット
- 出血合併症の頻度が非常にまれであること。
- 神経障害の合併症を基本的に認めないこと。
- 検査後固定がいらず、患者さんにとっての負担が少ないこと。
検査後は、通常3時間圧迫をした後に圧迫を外し、止血が得られていることを確認します。検査翌日まで重いものを持たないようにお願いしています。
これまで、カテーテル検査をより低侵襲かつ患者さんに負担をかけないようにということで、大腿動脈アプローチ(足の付け根)→上腕動脈アプローチ(肘)→橈骨動脈アプローチ(手首)と変更してきましたが、より低侵襲かつ負担を減らすために、当院では2018年7月より遠位橈骨動脈アプローチ(親指の付け根)を開始しました。
利点としては合併症の減少と止血時間の短縮と患者さんの負担軽減です。合併症の内容に関しては手首(橈骨動脈アプローチ)と大きく変わらず出血や神経障害を起こしうりますが、より末梢でのイベントになるため合併症の程度が軽くなると思われます。 止血時間短縮と負担の軽減については、橈骨動脈アプローチ(手首)は止血時間を5時間としていましたが、遠位橈骨動脈アプローチ(親指の付け根)はより末梢であるので止血が容易であり、当院では3時間としております。
また、橈骨動脈アプローチ(手首)は止血中に手首を動かさないようにするためシーネ(固定具)を装着するのに対して、遠位橈骨動脈アプローチ(親指の付け根)はシーネ(固定具)装着の必要がなく、患者さんの負担が軽減できます。
手首(橈骨動脈)からのカテーテル検査(橈骨動脈アプローチ)
手首からカテーテルを挿入して行う検査です。
メリット
- 出血合併症の頻度が非常にまれであること。
- 神経障害の合併症も基本的に認めないこと。
- 検査後に肘を曲げることができ、患者さんにとっての負担が少ないこと。
検査後は、通常、5時間の圧迫をした後に圧迫を外し、止血がえられていることを確認します。検査翌日まで手首は曲げないようにお願いしています。
肘(上腕動脈)からのカテーテル検査(上腕動脈アプローチ)
肘(上腕動脈)からカテーテルを挿入して行う検査です。
検査対象となる方
当院では、以下のような方は上腕から検査を行う場合があります。
- 透析患者の方
- 橈骨動脈からカテーテル挿入が難しい方
検査後は、手首の場合と同様に圧迫後、止血がえられていることを確認します。検査翌日まで、肘は曲げないようにお願いしています。
足(大腿動脈)からのカテーテル検査(大腿動脈アプローチ)
足の付け根の血管からカテーテルを挿入して行う検査です。
検査対象となる方
下肢からのカテーテル検査が必要な方は以下の場合です。
- 緊急を要する重症の方
- 両腕(肘、手首)からの検査が困難な場合(穿刺困難、透析等)
- 心臓バイパス手術後の患者さんで、足からの検査が必要な場合
- 心臓カテーテル検査が必要であるが、両腕からの検査が困難な場合
- 大きなサイズでのカテーテル治療が必要な場合
検査後は、臥位のままで止血できるまで用手圧迫を行い、伸縮性のあるテープで圧迫止血を2時間行った上で、3時間安静が必要となります。