パルスフィールドアブレーションによる心房細動の治療
心房細動は、不規則で速い脈が続くことで動悸や息切れを引き起こし、脳梗塞の原因にもなる不整脈です。従来のアブレーション治療では、熱による周囲臓器への損傷リスクが課題とされてきました。これらのリスク低減を目的に、当院では非熱エネルギーを用いるパルスフィールドアブレーション(PFA)を導入しています。
心房細動とは
心房細動は、心臓の上部にある心房のリズムが不規則かつ非常に速くなる不整脈の一種です。日本国内では100万人以上の方が罹患していると推定されています。動悸や息切れ、めまいなどの症状を引き起こすことがあります。また、心房内に血の塊である血栓ができやすくなり、この血栓が脳の血管を詰まらせると脳梗塞を引き起こす恐れがあります。
心房細動の治療方法
薬物療法とカテーテルアブレーションという方法がありますが、動悸、めまい、息切れといった症状を伴う心房細動であれば、第一選択治療としてカテーテルアブレーションを行われることが増えています。カテーテルアブレーションは、足の付け根の血管から細い管(カテーテル)を挿入して左心房内にすすめ、不整脈の原因となっている肺静脈の入り口にある心筋細胞を壊死させることで正常な心拍リズムを回復させます。

従来のアブレーション治療とその課題
これまでのカテーテルアブレーションでは、標的となる心筋細胞を高周波の電流を用いて焼灼する「高周波アブレーション」と、凍結させる「冷凍バルーンアブレーション」という方法が主に用いられてきました。いずれも効果的な治療法ですが、治療を行う心筋細胞の周囲にある食道や横隔神経、肺静脈などを、標的となる心筋細胞を壊死させる際に発生する熱によって損傷してしまうリスクが課題とされてきました。
新たな選択肢:パルスフィールドアブレーション(PFA)
これらの損傷リスクを低減するために開発されたのが、「パルスフィールドアブレーション」(以下、PFA)です。
PFAは「非熱アブレーション」とも呼ばれ、熱や冷却を使わずに治療を行う新しい手法です。
治療の仕組み
カテーテルの先端の電極から、パルス電圧と呼ばれる瞬間的に強い電気を流すと、電極の周囲に「パルスフィールド」という電気の力の場(電場)が形成されます。このパルスフィールドが標的となる心筋細胞にあたると、細胞の表面に小さな穴が開き、細胞死が誘導されることで心房細動の原因を根治します。
この細胞膜に穴が開く原理は電気穿孔法と呼ばれており、パルス電圧の大きさや時間を調節することで、細胞が回復しない永続的な細胞障害(非可逆的な細胞死)を起こすことが可能です。
さらに、患者さんの心房細動のタイプや心臓の構造に応じた、より効果的な治療を行うため、先端の電極構造が異なる種々のカテーテルを使い分けます。これらのカテーテルによって、初期の発作性心房細動から左心房の拡大を伴う持続性心臓細動まで幅広く治療を行うことが可能となります。

PulseSelect™ (日本メドトロニック株式会社提供)

FARAPULSE™ (ボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社提供)

VARIPULSE® (ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 メディカル カンパニー提供)
PFAの特徴
1. 高い安全性
これまでの研究により、心筋細胞は食道や横隔神経、肺静脈を構成する細胞に比べてパルスフィールドの影響をより受けやすいという特性が示されています。この特性を利用することで、標的となる心筋のみを選んで治療することが可能となり、従来のアブレーション治療で起こりうる横隔神経麻痺や胃食道蠕動運動障害、肺静脈狭窄のリスクを低減することが期待されています。
2.治療時間の短縮
短時間のパルス電圧を用いるため、従来のアブレーション治療と比べて治療時間が短く、患者さんの負担軽減につながります。






