第6次中期経営計画(2024年4月~2027年3月)

第6次中期経営計画の基本方針(継続)

1.ステークホルダーから期待される役割・機能

  1.  <地域住民・患者>
    安心して急性期医療を受けられ、最新治療の情報を分かりやすく提供する
  2. <地域医療機関・法人内の他事業>
    地域医療のハブ機能*1として頼れる存在で、役割分担を進める
  3. <働く人材>
    新世代の新しく多様な価値観に沿ってイキイキと働ける職場を提供する

2.行動指針(組織を貫く基本姿勢)(継続)

  1. 職員の成長(自己変革): 新たな自分への挑戦、成長できる組織
  2. 透明性の確保: 金魚鉢の中の医療*5
  3. 効率化・高機能化: 高価値医療の提供
  4. 共創性の推進: 他職種・他組織との共創、イノベーション
  5. 価値観の共有: 文化・風土の醸成

3.基本方針(第7次院長基本方針)(継続)

理念を実践するための主要な指針

  1. システムとして総合的・包括的な医療の提供を行う
    医療の専門性が強まる中で、職員協働によるシステムとして統合された医療を提供する。 
  2. 協力の科学としてチーム医療を実践する
    いつでも誰にでも協力、助けを求められる組織風土の中で職員間の信頼と敬意の念に根ざしたチーム医療を実践する。
  3. 患者安全を優先した高品質な医療を行う
    安全を最優先する組織文化の定着をはかり、測定することにより、患者安全と質改善をはかる。
  4. 説明と誠意ある医療を行う
    医療のリスクを十分説明し、患者の理解を得て、医療への参加を推進する。
  5. 人材育成に根ざした医療を行う
    高い専門技術と豊かな人間性を育みながら職員が自らの成長を感じられる医療を行う。
  6. IT活用を推進し、効率的に価値ある医療を提供する
    業務負荷が増大する現場を、IT活用を推進し、効率的に価値ある医療を提供する。
  7. 地域住民の安心できる暮らしを地域で連携する医療機関と構築する
    地域連携医療機関と安心して暮らせる環境を構築し、予防医療を通して、地域住民の健康維持・増進に貢献する。

4.ありたい姿<次なる100年に向けて “倉敷中央病院のこれからのありたい姿”メッセージ>

  1. 今後の医療の変化に対応した地域医療連携の「倉敷(岡山県西部)モデル」の確立
  2. これからの医療イノベーションにも対応した世界水準の質の高い医療の確保
  3. 学びと成長の場としてこれからを支える有為な医療人材を惹きつける病院に
  4. 人の心を大事にする医療、地域とともに歩み続ける病院

第6次中期経営計画のテーマと戦略(重点課題として3年間で取り組むこと)

<テーマ>

人の心を大事にする医療を実践し、地域とともに歩み続ける
学びと成長の場として、これからを支える有為な医療人材を惹きつける

<戦略>

  1. 「地域医療エコシステム」の実現を通して、地域全体として裾野が広く医療の質の頂点が高い持続的な医療ネットワークモデル確立を主導
  2. 医療イノベーションにも対応した世界水準の質の高い医療
  3. スキルアップと自己実現を実感できる、病院スタッフにとって魅力ある職場
  4. 地域とともに歩み続け、事業をサステナブルなものへ

<キーワード>

  • 地域住民、患者、地域医療機関、職員といったステークホルダーの心を大切に
  • 地域医療全体の課題を共有し、地域全体の医療の質向上を裾野広く、そして高く
  • 個々の改革・改善を統合し、最新の技術(DX等)を活かして、事業をサステナブルなものへ

<この3年間で重点的に取り組むべきこと> 戦略から戦術へ

1. 「地域医療エコシステム2」の実現を通して、地域全体として裾野が広く医療の質の頂点が高い持続的な医療ネットワークモデル確立を主導し続ける

  1. 地域医療機関と対等な対話の上、共通の課題を共有し、「地域医療エコシステム*1」の実現を通して課題を解決するため、具体的な役割分担の姿を模索する
    1) 成功モデルを共有できる連携先病院とお互いの強みを活かした役割分担を対等な対話を繰り返し、検討する
    2) 法人内・リバーサイド・予防医療プラザを成功モデルとする
  2. 地域住民の心に寄り添った、患者にとってシームレスで安心できる医療を共に目指す
  3. 強みを活かした役割分担の進捗状況を共同でフォローする
  4. 行政・地域住民へ成功モデルを示し、PRすることで賛同してくれる仲間を増やしていく

2. 医療イノベーションにも対応した世界水準の質の高い医療

  1. 先進医療技術の情報を収集・分析し、戦略的に強みを活かす
  2. 高額医療機器の戦略的投資、投資効果を 見える化 する
    1) 医師の確保、使いこなせるための教育・人材育成
    2) 戦略的投資をした機能の活用事例・状況を把握し、成果広報
  3. 環境整備として、DX人材育成や知財管理体制の構築を行い、使いこなせる人材育成につなげる

3. スキルアップと自己実現を実感できる、病院スタッフにとって魅力ある職場であり続ける

  1. 働き方改革を実質的な運用で「働きがい」につなげる
  2. タレント・マネジメント として、最適配置・評価できる体制を整備する
    1) 求められる人材が育つための評価を軸とした制度改革
    2) 多様な人材・働き方を用意し、活躍できる環境・居場所づくり
  3. イキイキ“をプラスする要素を強化するとともにマイナス要素を撲滅し、あらゆるハラスメントから解放され、職員が安心して能力を発揮できる、心理的安全性の高い職場を目指す
  4.  “イキイキ”働いている実像を内外へ広報する

4. 地域とともに歩み続け、事業をサステナブルなものへ

  1. 現在進めている改革(ポストコロナ改革*3など)の出来たこと、課題となることを確認する
    1) 急性期医療資源の生産性のコントロール機能を強化
    2) 人員・施設などの保有資産の生産性・効率性向上
  2. 「地域医療エコシステム」で役割分担を進めた場合の事業計画を確認
    1) 事業規模(病床・外来の機能、人員)計画などの検討を着手
  3. 事業の達成状況を見える化し、対策について、職員の参画意識を醸成する

 

これらの戦略は相互に関連しており、中でも人材の確保は最も基本となる重要な課題であると認識しております。

 

第6次中期経営計画の経営指標

課題別の指標KPIについて、達成状況を職員と広く共有し、一体感を持って推進するために進捗状況を見ながら、個々に設定してまいります。

<KPIなどで 目指す姿の到達状況を示す方向性について>

  • 地域全体で質の高い医療を提供できている:
    例)当院および連携医療機関のそれぞれが強みを活かした効率的な医療提供体制
    地域の中で、患者にとって安心してシームレスな質の高い医療を提供している
  • 職員が“イキイキ”働いている姿:
    例)職員起因のハラスメント撲滅、チームSTEPPS受講率、若年層離職率
  • 高度急性期機能の稼働状況:
    例)救命救急(年齢別・病態別)、手術、集中治療、紹介から入院等の稼働状況

財務的な視点では、完全独立採算制の民間病院として、使命を達成し成長を続けるために再投資の原資は自らの活動の中で生み出す必要があります。病院の稼働に関わる個々の指標はあえて設定しないものの、当院の使命達成に必要となる高度先進医療投資や増改築・機器更新などのインフラを継続する必要があるので、償却前経常利益 40億円の安定的確保を指標とします。

 

*1.ハブ(つなぐ)機能: ハブ(hub)とは、車輪やプロペラなどの中心にある部品や構造のことで、転じて、中心地、結節点、集線装置などの意味で使われています。結節(つなぐ)という意味から、患者にとって切れ目のない医療・福祉サービスを安心して受けてもらえるため、人・情報を集約して全体をつなぐ機能です。
*2.地域統合型・医療のエコシステム 地域全体を相互補完的な大きなネットワークと見立て、地域の中の各々の医療機関が得意とする領域での技術・ノウハウ・知見を持ちよって、患者に切れ目のない医療を提供する仕組みです。
*3.「ポストコロナ改革優先課題」 10年先に想定していた構造的な環境変化がコロナ禍ですでに現実化している厳しい状況を、「ピンチをチャンスに」と捉え、倉敷中央病院ならではの5つの機能(救急・高度トリアージ・高度先進・デスティネーション・予防先制)を果たし続けるため、病院全体の変革を促すために掲げた、優先して取り組むべき課題です。
*4.デスティネーション医療 デスティネーション(destination)は英語で「目的地」を意味します。体調に不安を抱えているのにどこからも診断のつかない患者さん達に、診療科の枠を超えて包括的かつ迅速に診断・治療し、当院を含む適切な医療機関につなぐという実績を蓄積していくことで、当院がこういった患者さん達にとっての「最終目的地となる医療」を目指します。
*5.金魚鉢の中の医療 金魚鉢は360°ガラス張りの透明なタイプの水槽を意味し、常に周りから見守られる様子を表現しています。透明性の確保による治療の見える化によって、いろんな角度の専門家が見守ってくれて、疑問を聞くこと、助けを求めることが強く推奨されている環境を目指します。      
(イラスト)360°ガラス張りの透明なタイプの金魚鉢

*4.「デスティネーション医療」と*5.「金魚鉢の中の医療」は、かねてよりありたい姿として目標としているメイヨークリニック(米国ミネソタ州ロチェスータに本部を置く世界屈指の総合病院)で実践されている医療モデルです。

2024年度の重点課題

 <第6次中期経営計画のテーマ>

  • 人の心を大事にする医療を実践し、地域とともに歩み続ける
  • 学びと成長の場としてこれからを支える有為な医療人材を惹きつける

 <初年度として優先する課題>

  1. 厳しい経営状況に対応(魅力ある職場で人材確保、財務目標の達成)
  2. 地域の高齢化の中で、高度急性期機能を維持していく
1. 地域全体として裾野が広く、医療の質の頂点が高い
持続的な医療ネットワークモデル確立を主導

    1) 地域医療エコシステムの目指す姿の具体化
      法人内で成功モデルを検討し、法人外病院と対話の上成功の形を共有
    2) 患者にとってシームレスな医療の構築と転院等の際の納得性向上
    3) 強みを活かしあう役割分担の進捗状況をフォローし、KPIの設定検討

    持続的な「地域医療エコシステム」の構築
    地域が一体となって、シームレスな医療を提供する

    2. 医療イノベーションにも対応した世界水準の質の高い医療

    1) 優先IPSG取り組み<ex.患者誤認>
    2) 標準化・パスを起点にし、地域とともに患者安全・質向上
    3) DX推進含め投資を一元管理見える化し、戦略的な協議決裁
    4) 知財管理などの環境体制整備

    (1) IPSG(国際患者安全目標)の遵守
    (2) 標準化を起点にした質向上
    (3)先端技術の情報収集・分析し、戦略的に強みを活かす

    3. スキルアップと自己実現を実感できる、病院スタッフにとって魅力ある職場

    1) A水準の運用、職場全体で主旨を理解・納得し浸透させる
    2) 職員起因のハラスメント撲滅、心理的安全性のある職場文化
       <ex.職歴別の離職状況、ハラスメント件数、職員満足度>
    3) 求められる人材が育つための評価制度改革
    4) ”イキイキ“働いている実像の内外への広報

    新世代の価値観で“イキイキ”働ける病院
    (1)タレント・マネジメントの体制整備
    (2)“イキイキ”のプラス・マイナス要素への対策

    4. 事業継続のため、財務目標の達成

    1) 進めてきた改革の成果を可視化し、実質的なものへ定着させる
    救急・新入院・集中治療・手術・カテなどの整合運営による機能強化
    外来の抜本的改革などトップダウン型改革<稼働率、償却前経常利益>
    2) 紹介後の新入院状況フォロー<ex.紹介後の早期(1~3ヵ月)入院>
    3) 大型投資後の稼働把握

    (1) 人員・施設などの保有資産の生産性・効率性向上
    (2)地域の役割分担を進めた場合の事業計画・確立
    (3)事業の達成状況を見える化し対策、参画意識醸成