持続可能な医療の提供に向けた取り組み
止水壁建設(2024年6月竣工)
背景
この県南西部の地域は高梁川の酒津堤防が決壊した場合、2時間後に1メートル前後浸水する想定となります(※参照:国土交通省・洪水ナビ)。さらに、倉敷市のハザードマップで当院の想定区域を確認すると計画規模降雨の雨が降った場合、想定では、当院の1階の床上41センチ(周辺エリアより110センチ程度)が浸水すると考えられています。計画規模降雨とは、その河川を将来的に氾濫させないように整備する際に目標とする大雨のことで、河川ごとに個別に定められています。
さらにこの数年、気候変動の影響もあり、全国の1時間降水量(毎正時における前1時間降水量)50mm以上の大雨の年間発生回数は増加しています。最近10年間(2014~2023年)の平均年間発生回数(約330回)は、統計期間の最初の10年間(1976~1985年)の平均年間発生回数(約226回)と比べて約1.5倍に増加しています。西日本でも7・8月を中心に毎年のように洪水被害が生じています。

全国(アメダス)の1時間降水量50mm以上の年間発生回数(気象庁統計)
気象庁、大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化(最終アクセス2025年2月3日)
一方で、昨今の洪水件数・降雨量、倉敷中央病院の立地を踏まえると、当院の洪水対策は決して充足している状況とは言えません。仮に洪水が起こってしまった場合、
- 入院患者さん1,000名の避難、転院
- 復旧費用に200億円が必要
- 医療の完全復旧は2年を要する
と想定されており、これまでのような医療の継続は難しい状況となります。
洪水災害があった際にも医療活動を止めないために止水壁の建設を決定、2022年10月に着工しました。
止水壁の概要
国土交通省の想定によると、集中豪雨で高梁川が氾濫した場合、当院1階の床上約40㎝程度が浸水するとされています。地階や1階にはインフラ設備や大型検査・治療設備があり、水没による機能不全に陥れば、長期にわたってご入院中の患者さんの治療だけではなく、近隣からの救急搬送患者の受け入れにも大きな支障が生じます。浸水を防ぐため、高さ1.6m、厚さ30cmのコンクリート製の止水壁を、敷地周囲約800mに設置しました。出入り口用開口部は、洪水のリスクが高まったときに組み立て式ゲートを設置し、水の侵入を防ぎます。

止水壁設置個所(全周約800m)

コンクリートの躯体に赤いレンガを積み、当院のシンボル「赤い屋根」につながるデザインに。