大動脈弁狭窄症
大動脈弁狭窄症は、大動脈弁が硬くなり、開きにくくなることで血液が全身に送り出されにくくなる病気です。原因として、生まれつき弁が2枚しかない(先天性二尖弁)や高齢化に伴う石灰化で弁が硬くなることが挙げられます。重症になると胸痛や失神、安静時の息切れ、さらに無症状でも突然死に至ることもあります。
大動脈弁置換術
標準的な治療は、傷んだ大動脈弁を人工弁に取り替える大動脈弁置換術です。胸の真ん中を切開し、人工心肺を用いて心臓を一旦停止して人工弁を縫着します。
人工弁には以下の2種類があります。
● 機械弁
・身体の中で壊れにくく、再手術の可能性は通常低い
・血栓ができやすいため、弁が動かなくなったり脳梗塞を起こしたりする恐れがあります。そのため、ワーファリンという薬を生涯内服する必要がある
・不慮の出血リスク(脳出血や交通事故など)に注意が必要
● 生体弁
・従来の生体弁は劣化により10年前後で劣化し取り替えが必要だったが、近年は15年以上の耐久性が期待できる製品も登場
・血栓がつきにくく、術後数ヶ月以降は原則として抗凝固薬が不要
・高齢者を中心に、60歳前後まで適応が拡大

スーチャーレス人工弁を用いた右小開胸での大動脈弁置換術
人工弁に取り替えるには、開胸後に人工心肺を用いて心停止とし、自己弁を切除した後に人工弁を糸で縫い付ける必要があります。近年使用できるようになったスーチャーレス人工弁(Perceval弁、Intuity弁)は、ステント構造を利用して固定します。TAVIで使う人工弁もステントを利用して固定しますが、スーチャーレス人工弁はご自身の大動脈弁を切除した後に適切なサイズの人工弁を挿入し、風船でステントを圧着させます。人工弁を縫い付ける時間を短縮できる特徴があります。
当院の小切開手術の特徴
小切開手術では大動脈弁が深く、糸をかけるのが難しくなります。小切開法としては、胸骨を一部切る正中法と、肋骨の間からアプローチする右開胸法があります。正中法では骨を切開するのが欠点であり、右開胸法は大動脈弁がより遠くになり手技的に難しくなるのが欠点です。当院では、右開胸による小切開法で上行大動脈から送血する方法を標準手術としました。右胸に7㎝の切開を加えて、第3肋間または第2肋間を切開します。送血管は上行大動脈から、脱血管は大腿静脈から留置して、人工心肺を確立します。心停止としたら上行大動脈を切開して、自己弁を丁寧に切除したのち人工弁を留置します。

正中小切開法

右小開胸法






