胸を大きく切らずに行う、大動脈弁狭窄症の治療

大動脈弁狭窄症とは

心臓には4つの部屋があり、全身から戻ってきた血液は、右心房→右心室→肺→左心房→左心室と流れ、大動脈弁を通って全身へ送り出されます。大動脈弁狭窄症は、この大動脈弁が硬くなり血液が流れにくくなる病気です。

高齢とともに進行しやすく、治療を行わなければ、症状発症後2〜3年で命に関わる可能性があると報告されています。
(胸痛:5年以内、失神:3年以内、息切れ:2年以内に約半数が死亡というデータあり)

息切れ・胸痛・立ちくらみ・心雑音などがある場合は、早めの受診が重要です。

こんな症状はありませんか?

  • 坂道や階段を上がると息切れする
  • 胸が締め付けられるような痛みを感じる
  • めまいや立ちくらみを起こすことがある
  • 健康診断で心雑音を指摘された
  • 足がむくむようになった

これらは大動脈弁狭窄症のサインかもしれません。症状がある方は、早めに専門医の診察を受けてください。

TAVI

TAVI(Transcatheter Aortic Valve Implantation)は胸を大きく切開せず、カテーテルで人工弁を留置する治療法です。
2013年10月に日本で保険適用となり、従来の外科手術と同等の効果が期待できる一方で、身体への負担が少ないため、高齢の方や外科手術リスクが高い方にも治療の選択肢を広げる方法として普及しています。“年齢だから” と諦める必要はありません。

メリット
  • 胸を大きく切開しない:傷が小さく、痛みが軽い
  • 人工心肺を原則使用しない:身体への負担を軽減
  • 入院期間は約1週間
  • 高齢の方も治療が可能(80歳以上も適応)
  • 外科手術が難しい方にも選択肢
  • 回復が早い:翌日から歩行も可能
対象となる方
  • 重症の大動脈弁狭窄症と診断された方
  • 高齢(80歳以上)の方
  • 外科手術のリスクが高いと判断された方
  • 過去に心臓手術歴がある方
  • 外科手術が困難と判断される理由がある方
※近年は中等度リスクの患者さんにも適応が広がっています。
※当院ではハートチームで慎重に適応を検討しています。

当院のTAVIの特長

【1】累計1,000例以上の治療実績(2026年時点)

2013年の保険適用開始から早期に治療を開始し、累計1,000件以上のTAVI治療を行っています。

【2】ハートチームによる多職種体制

循環器内科、心臓血管外科、麻酔科、看護師、臨床工学技士など、多職種からなるハートチームが一丸となって治療にあたります。必要があれば外科手術へ切り替えられる体制も整備しています。

【3】患者さんの状態に合わせた複数のアプローチ

患者さんの血管の状態により、以下の5つの治療経路から最適な方法を選択します。

アプローチ名 挿入部位 特徴 麻酔
TF-TAVI
【第一選択】
足の付け根
(大腿動脈)
低侵襲で傷が小さい 局所麻酔も可能
TC-TAVI


(頸動脈)

心臓に近く低侵襲

全身麻酔

TSCA-TAVI

鎖骨の下
(鎖骨下動脈)

血管径が比較的太い

全身麻酔

TAo-TAVI

右胸
(上行大動脈)

心臓い最も近く正確
(胸骨を切らない)

全身麻酔

TA-TAVI

左胸
(心尖部)

血管状態に依存しない

全身麻酔

①TF-TAVI(大腿動脈アプローチ)

足の付け根(大腿動脈)からカテーテルを挿入する方法で、傷が小さく、局所麻酔での治療も可能。当院では第一選択となるアプローチ法で、80%以上の患者さんに選択しています。

②TC-TAVI(経頸動脈)

首の動脈(頸動脈)から直接カテーテルを挿入する方法で、大腿動脈が使用できない場合の有力な選択肢になります。心臓までの距離が短いためカテーテル操作がしやすく、局所麻酔での治療も可能。

新しいTAVIアプローチ:頸動脈アプローチ(TC-TAVI)

③TSCA-TAVI(経鎖骨下動脈アプローチ)

鎖骨の下を通る動脈(鎖骨下動脈)からカテーテルを挿入します。左の鎖骨下動脈を使うことが多いです。

④TAo-TAVI(経大動脈アプローチ、肋間切開法)

右胸の肋骨の間を小さく切開し、上行大動脈から直接カテーテルを挿入する方法です。心臓に近く、高い精度で人工弁の留置が可能です。当院では胸骨は切らずに肋間の切開で実施します。末梢血管からのアプローチが難しい患者さんに適応します。

⑤TA-TAVI(経心尖部アプローチ)

左胸を小さく切開して心臓の先端(心尖部)から直接カテーテルを挿入します。血管が使えない場合でも治療が可能です。

①~⑤はCT検査で血管の状態を詳しく検査したのち、ハートチームカンファレンスで最適なアプローチを検討します。患者さんやご家族に説明し、治療方針を決定します。

治療の流れ
  1. 外来受診・検査:心エコー、CT検査、心臓カテーテル検査など
  2. ハートチームカンファレンス:TAVIの適応やアプローチを検討
  3. 治療方針の説明
  4. 入院・TAVI治療:入院期間は約1週間
  5. 術後のリハビリテーション:翌日から歩行を開始

診療実績

大動脈弁狭窄症に対する手術(件)

よくあるご質問

Q1.TAVIの治療費は?

A1.健康保険が適応されます。高額療養費制度もご利用いただけるので、実際のご負担額は年齢や所得によって異なります。詳しくは、医療ソーシャルワーカー(MSW)がご相談に応じます。

Q2.入院期間はどれくらいですか?

A2.約1週間程度です。患者さんの回復状況によって多少前後することがあります

Q3.痛みはありますか?

A3.TF-TAVIは局所麻酔が多く、術中の痛みはほとんど感じません。他のアプローチ方法も全身麻酔で行うため、治療中の痛みはありません。

Q4.90歳でも治療できますか?

A4.年齢の制限はなく、全身状態を総合的に評価します。

Q5.セカンドオピニオンは受け付けていますか?

A5.もちろん対応しています。お気軽にお問い合わせください。