泌尿器科

診療内容

前立腺がん

限局性前立腺がん(ステージB)に対する治療としては手術療法(前立腺全摘除術)があります。当科における前立腺全摘除術の件数は全国的にみても上位に入っています。多くの症例ではロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術を行っていますが、腹部手術歴があり腹腔内の癒着が強い症例は通常の開腹手術で行っています。開腹手術といっても皮膚切開は5~6cmと小さくミニマム創手術の大きさです。ロボット支援手術、開腹手術とも、術前日入院、術後5~6日目に尿道カテーテルを抜去、6~7日目に退院するクリニカルパスを適用していますが、95%以上の症例はパス通りに退院しています。

限局性前立腺がんに対する根治的治療法としては放射線療法もあります。がんの根治率に関しては手術と放射線療法は同等と考えられます。岡山県内には強度変調放射線療法(IMRT、当院)、高線量率組織内照射(川崎医科大学)、ヨード(I-125)密封小線源永久挿入(岡山大学)、粒子線治療(津山中央病院)の4通りの方法があり、患者さんの希望に応じて紹介していますが、大部分の患者さんは当院でのIMRTを選択されているのが現状です。通常、6か月間の内分泌療法を行った後で、37~39回(週5回×8週間弱)に分割して放射線治療を行います。

また、局所進行性前立腺がん(ステージC)に対しては、内分泌・IMRT併用療法によって根治あるいは長期間の局所制御を目指しており、良好な治療成績を上げています。

ロボット支援前立腺全摘除術放射線治療科

腎がん

治療の原則は手術ですので、がんの大きさに応じて腎臓摘除術もしくは腎部分切除術による根治切除を目指します。比較的小さながんに対してはロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術を行い、周りに正常腎組織を少しつけた状態でがんを切除しつつ腎機能の温存を図ります。大きめのがんに対しては腹腔鏡下腎摘除術を行いますが、腎周囲への浸潤があるような大きながんに対しては開腹手術による腎摘除術を行います。すでに転移のある症例、あるいは術後に転移をきたしてしまった症例に対しては、分子標的薬治療や免疫チェックポイント阻害薬を使用した全身治療を行っています。

尿路上皮がん(膀胱がん・腎盂がん・尿管がん)

進行性膀胱がんに対しては根治性最優先のため膀胱全摘除術を第一選択としており、抗がん剤・放射線併用による膀胱温存治療はあまり積極的には行っていません。手術療法としては、膀胱がんに対してはロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術を、腎盂尿管がんに対しては主に腹腔鏡下腎尿管全摘除術を行っています。

膀胱がん、腎盂尿管がんの治療においては、術前、術後の局所制御や転移巣治療を目的とした多剤併用抗がん剤治療が重要な位置を占めています。当科では、集学的治療により根治の可能性がある症例には積極的に化学療法を行っています。また、緩和的治療、延命治療としての抗がん剤治療も適応を十分に考慮した上で積極的に行う方針で治療にあたっています。

副腎腫瘍

副腎腫瘍の多くは良性腫瘍です。ホルモン産生を伴うものについては、内分泌代謝内科と協議して適応を判断したうえで、主に腹腔鏡手術による副腎摘除術を行っています。

前立腺肥大症

2005年からホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)を導入し、ほとんどの手術症例はHoLEPを施行しています。経尿道的前立腺切除術(TURP)と比べて出血量が少なく、灌流液吸収による循環器系への影響が小さいため、高度の前立腺肥大症や内科的合併症のためTURP不適応とされた症例にも安全に施行できます。術後の排尿状態の改善も非常に良く、3泊4日入院のクリニカルパスを適用しています。

尿路結石

腎・尿管結石に対しては以前から体外衝撃波結石破砕術(ESWL)がありますが、効果が不確実で十分破砕できなかったり複数回の治療が必要になったりする場合があるため、近年では細径尿管鏡を挿入して内視鏡下にホルミウムレーザーで結石を破砕する経尿道的砕石術が主流になっています(TUL、2泊3日入院)。大きな腎結石に対しては背中から腎瘻を増設して内視鏡下に結石を破砕する経皮的砕石術(PNL)を行う場合があります。

男性不妊症

産婦人科と協調して男性不妊症の治療を行っています。近年は精巣内精子を直接回収して顕微受精(ICSI)を行うケースが多くなっているため、当科では手術用顕微鏡を用いて精巣内精子回収術を行っています(microdissection法)。本法では顕微鏡観察下に造精がありそうな精巣組織のみを少量採取するだけですので、精巣機能へのダメージが少なく精子回収率が高いのが特長です。社会的生産年齢期にある患者さんのニーズに応えるため、可能であれば外来手術でも行っています。

女性泌尿器科

40歳~50歳以降の女性では、骨盤内臓器の支持組織(筋肉、靭帯等)の脆弱化が原因で生じる尿失禁や骨盤内臓器脱が高頻度に見られます。骨盤内臓器脱に対するメッシュ修復術(TVM手術)は2006年から多数の症例に実施してきましたが、2018年度からは腹腔鏡下膣仙骨固定術(LSC)も行っています。腹圧性尿失禁に対しては中部尿道スリング手術(TOT手術)を行っています。