耳鼻咽喉科

当科の特色

主任部長 佐藤 進一

岡山県中西部の耳鼻咽喉科の中核としてスタッフの陣容、設備面ともに最先端の医療レベルで時代に適応した診療ができるようにつねに心がけています。現在病床数は約30床で、頭頸部外科と合わせて耳鼻咽喉科医師12名で診療を行っています。地域の中核病院として特に手術治療、急性期の疾患の治療に重点を置いていますが、耳鼻咽喉科疾患は聴覚、音声言語、呼吸、嚥下、嗅覚などの人間として重要な機能に影響を及ぼすため、諸疾患の治療も、単に病変部を治すだけでなく、それらの機能を改善、保存することも心がけています。患者さんとの信頼関係のもとに、患者さんにも治療に参加してもらえるような、心の通った医療ができるようにしたいと思っています。手術数は、外来手術も含めて年間約1,300件です。

診療圏

岡山県中西部、倉敷市を中心に、北は総社市、高梁市、新見市、西は井原市、笠岡市などから患者さんが来院しており、地域に密着した診療を行っています。また、専門外来では岡山市東部、香川県、広島県東部からの紹介患者さんもいます。

診療内容

耳科領域

中耳疾患に対しては、伝音難聴、鼓膜穿孔、真珠腫があれば積極的に手術加療を行っており、平均入院期間は1週間です。慢性中耳炎は術後耳の難治症例に対しても積極的に手術を行っています。真珠腫性中耳炎は術後メンテナンスフリーの耳を目指し、後壁保存の一期的手術を基本方針としています。聴力改善成績は全国的に見てもトップクラスです。また可能な症例では外来での鼓膜穿孔閉鎖術を行っています。2022年は耳科手術を218件行っており、そのうち鼓室形成術は66件行っています。また、めまい・平衡機能障害および聴力障害に対する専門的診断治療を行っています。補聴器外来では適切な補聴器の装用を指導しています。また新生児聴覚スクリーニング検査で異常があった場合、精密診断機関としてさらに聴性脳幹反応(ABR)やASSRを行い、適切な診断や指導を行っています。

鼻副鼻腔領域

内視鏡を使用して、マイクロデブリッダーやレーザーの使用など低侵襲で効果的な手術を行っています。2022年は73例に対し内視鏡下副鼻腔手術を行っています。また、2009年よりナビゲーションシステムも導入され、より高度で安全な鼻科手術が可能となっています。

口腔咽頭領域

扁桃摘出術は術後出血などの危険もあり、麻酔・手術設備の完備した病院に集中する傾向があり、2022年は全身麻酔による扁桃摘出術を78例行っています。

喉頭気管食道領域

声のかすれなど音声障害に対して、電子スコープ、ストロボスコピーやコンピュータによる音響分析などを使用して専門外来で詳しく診断し、症例に応じて音声の改善を図る音声外科手術を行っています。2022年は声帯ポリープなどのラリンゴマイクロ手術を41例、甲状軟骨形成術や披裂軟骨内転術などの音声改善手術を8例行っています。また手術の適応でない症例や術後の例には言語聴覚士と協力して音声言語治療を行っています。
最近は社会の高齢化に伴い、脳血管障害などによる嚥下障害の患者さんが増加しており、患者さんや家族の生活の質(QOL)や介護のことなどが問題になっています。また、乳児期に罹患した病気のため、嚥下障害を生じ、誤嚥性肺炎を繰り返すお子さんもおられます。このような患者さんには専門外来で咽喉頭内視鏡検査(VE)を行っています。嚥下障害が高度な患者さんではリハビリテーション科で嚥下リハビリテーションを行いますが、リハビリだけでは改善しない症例には輪状咽頭筋切断術、喉頭挙上術や、喉頭気管分離・気管食道吻合術、喉頭摘出術などの嚥下改善、誤嚥防止手術を行っています。

リハビリテーション科

甲状腺疾患

甲状腺腫瘍に対しては内分泌代謝科と密接な連絡を取り、病理診断科臨床検査・感染症科とともに定期的にカンファレンスを行い、外科的治療を行っています。2022年は70例甲状腺手術を行っており、そのうち悪性腫瘍は47例でした。腫瘍の根治とともに、可能な限り、神経、副甲状腺を温存する患者さんに優しい手術を行っています。またバセドウ病に対して、亜全摘または全摘を7例施行しています。1次性、2次性副甲状腺機能亢進症に対する手術を17例行っています。

病理診断科臨床検査・感染症科