破裂する前に、確かな判断と適切な治療を

大動脈瘤とは

大動脈は体の中で最も太く、心臓から全身に血液を送る重要な血管です。加齢や動脈硬化の進展などによって血管の壁が弱くなると、風船のように膨らむ「大動脈瘤」が形成されます。大動脈瘤は、できる部位によって名称が異なります。

種類 場所・特徴
腹部大動脈瘤 腹部の大動脈に発生。最も多いタイプ

胸部大動脈瘤

胸部の大動脈に発生。上行・弓部・下行に分類

胸腹部大動脈瘤

胸部から腹部にまたがる広範囲の瘤で、治療が複雑

⚠ 破裂リスクは「直径5cm以上」で急上昇
大動脈瘤は多くの場合、破裂するまで症状が出ないため、サイレントキラーとも呼ばれています。破裂すると大量出血を起こし、救命は非常に困難となります。

大動脈瘤の大きさが5cmを超えると破裂のリスクが急激に高まるため、破裂する前の計画的な治療が重要です。また、大動脈瘤の内部に付着した血の塊の血栓が剥がされて流れると、脳梗塞や下肢の血流障害など、別の血管を詰まらせる「塞栓症」を引き起こす恐れがあります。

大動脈瘤のリスクが高い方
  • 高血圧
  • 喫煙歴がある
  • 糖尿病、脂質異常症
  • ご家族に大動脈瘤の患者さんがいる
  • 65歳以上の男性
健康診断のCT検査やエコー検査で偶然見つかることも多いため、定期的な検査も大切です。

当院の大動脈瘤治療

患者さんの全身状態や瘤の形状や場所を総合的に評価し、以下の2つの治療から選択します。

ステントグラフト内挿術 人工血管置換術
方法 カテーテルで人工血管を留置 開腹・開胸して人工血管に置換
傷の大きさ

足の付けに針孔もしくは約2-3センチの切開

約15-20cm

手術時間

約1-2時間

約3-6時間

入院期間

約3-4日間

約7-10日間

長期成績

定期的な検査が必要で、追加治療が必要な場合もある

再手術は少ない

適した方

高齢者や手術のリスクが高い方

比較的若い方、長期成績を重視する方

ステントグラフト内挿術(EVAR/TEVAR)

身体への負担が少ない「カテーテル治療」

ステントグラフトは、人工血管(グラフト)に金属のワイヤー(ステント)を組み合わせた医療機器です。カテーテルの中に収め、足の付け根の小さな傷から挿入します。動脈瘤のある場所でステントグラフトを広げることで、弱くなった血管を内側から補強し、破裂を防ぎます。

対象

腹部大動脈ステントグラフト内挿術(EVAR)

EVAR(Endovascular Aneurysm Repair)は、腹部大動脈瘤に対するステンドグラフト治療で、両足の付け根から挿入し、腎臓の下で動脈瘤を治療します。

胸部大動脈ステントグラフト内挿術(TEVAR)

TEVAR(Thoracic Endovascular Aneurysm Repair)は、胸部大動脈瘤に対するステントグラフト治療です。心臓や肺への負担が少なく、高齢の方や合併症のある方でも治療ができる可能性があります。

ステントグラフトのメリット
  • 胸やお腹を大きく切らないため、身体への負担が少なくなる
  • 手術時間が約1~2時間
  • 術後数日で歩行が可能
  • 入院期間は約3~4日間
  • 高齢者や手術リスクが高い方にも選択肢となる
  • 術後早期からの食事が可能

※定期的なCT検査によるフォローが必要で、追加治療が必要になる場合もあります。

人工血管置換術(開胸・開腹手術)

確実性と長期成績を重視した「標準治療」

動脈瘤を切除し、人工血管に置き換える治療です。複雑な形態にも対応でき、長期成績が良好な治療として知られています。

対象

開腹人工血管置換術

腹部大動脈瘤に対する人工血管置換術。腹部を切開し、動脈瘤の上下で血流を遮断した後、人工血管に取り替えます。入院期間は約7~10日間です。

開胸人工血管置換術

胸部大動脈瘤に対する人工血管置換術。左胸または胸の正面を切開し、人工血管に取り替えます。場所によっては人工心肺を使用します。入院期間は約2週間です。

人工血管置換術のメリット
  • 動脈瘤部分を直接除去できる
  • 長期成績が安定
  • 追加治療が少ない
  • 複雑な瘤の形態にも対応可能
  • 高齢者や手術リスクが高い方にも選択肢となる
  • 術後早期からの食事が可能

※定期的なCT検査によるフォローが必要で、追加治療が必要になる場合もあります。

当院の大動脈瘤治療の強み

【1】年間約200件の治療実績

大動脈瘤に対する手術として、ステントグラフトと人工血管置換術を合わせて年間約200件実施しています。

腹部大動脈瘤に対する手術

胸部大動脈瘤に対する手術

【2】両方の治療に精通したチーム

ステントグラフトにも開胸・開腹手術にも豊富な経験があり、患者さんにとって適した治療を選択できます。

【3】ハイブリッド手術にも対応

複雑な大動脈瘤に対しては、ステントグラフトと人工血管置換を組み合わせた「ハイブリッド手術」にも対応が可能

【4】24時間対応の緊急手術

破裂や切迫破裂など、緊急を要する症例にも対応できる体制を整えています。

治療の流れ
  1. CT検査で大動脈瘤の大きさ・形・位置を詳しく評価
  2. 心臓や肺、腎臓などの全身状態を評価
  3. カンファレンスで最適な治療法を検討
  4. 患者さん・ご家族に説明し、治療方針を決定

 

詳細はこちらから
腹部大動脈瘤に対する治療-EVAR vs. open repair-