手術センター
当センターの概要
当院手術センターは第3棟竣工にあわせて拡充、2024年よりハイブリッド室が2室となり30室で運用しています。手術件数は年間11,634件(2023年度実績)。当院は救命救急センターの指定を受けており(2013年4月より)、24時間救急をもつ地域の基幹病院としての役割を担っています。
あらゆる種類の緊急手術に対応するとともに、内視鏡や顕微鏡を用いた手術や治験手術など難易度の高い術式に対応できる環境を整え、人材を育成しています。
また、周術期での多職種間での連携の強化に力を注いでいます。
概要・歩み
当院の手術センターは、1975年に第1病棟完成後、10室を中央手術室として運用してきました。その後、手術件数の増加に合わせて増築を重ね、2010年には第3病棟が新築されたことにより23室の手術室を持つに至りました。これは、2008年の新中期計画(2008年4月~2013年3月)に基づくもので、2012年9月にさらに9室が追加され、1病棟の手術室の改修により眼科専用のアイセンターと外来手術センターが完成、2024年よりハイブリッド室が2室となり30室で運用しています。心臓血管外科領域では、近年、急性大動脈解離に対してステントグラフト内挿術を行っており、そのためのハイブリッド型手術室も2010年に導入しました。現在は脳神経外科領域の手術もハイブリッド型手術室で行われています。
手術の内容は、診療科を問わず高齢化、重症化、高度化の傾向にあります。手術件数は2023年度の実績で年間11,000件を超えていますが、手術センターは手術件数を誇るものではなく、いかに安全に周術期管理を行い患者満足度の高い手術を行うかに力を注ぎたいと考えています。麻酔科医、外科医、手術室看護師の一人ひとりが自らのアセスメント能力(患者の状態を把握する力)を高め、勉強会を開き、危機管理マニュアルやガイドラインを整備するなど、社会的ニーズに応えつつ麻酔と手術の安全を確保する努力を行っています。
増え続ける手術症例に対して、これまで夜間まで手術を続けることで対応してきましたが、スタッフの疲労を招き危険性も増すため、数年前から積極的に業務改善に取り組んでいます。手術センター業務管理室を設け、専任の室員が手術室に関係するさまざまなデータをまとめ、統計処理を行い、分析し、業務の改善に役立てています。曜日毎あるいは時刻毎に必要とされる麻酔科医・看護師の人数の割り出しを行い適切な人員配置に努めるとともに、21時までにすべての手術を終了するにはどうすればいいかなどを考えています。
フロアマップ
ギャラリー
PMT(Perioperative management team)
周術期管理チーム (perioperative management team)
手術決定から退院まで、患者さんに安全・安楽な医療を
PMTとは、周術期管理チーム(perioperative management team)の略称です。
PMTでは、手術決定から退院まで、安全・安楽に医療を受けていただけるようチームで取り組んでいます。
手術を安全に行うためには、高い手術の技術だけでは十分ではありません。周到な手術の準備、術後の回復能の評価、十分なリハビリなどの周術期管理が大変重要となります。
そのため、PMTは、医師(麻酔科、外科系、内科系、歯科)看護師(外来・手術室・病棟)、薬剤師、事務職員などの多職種から構成されています。
PMT外来では、PMT担当看護師がチェックリストに基づいた問診および身体審査、術前検査データのチェックを行います。
診察を外来で行うのには、大きな意味があります。
①入院前に患者さんの状況を把握することで、必要があれば追加検査や治療を行うことができ、検査や治療が不十分なまま手術を受けることを未然に防ぎます。
②現在飲んでいる薬の把握、アレルギー歴、飲酒・喫煙歴などの情報を聴取し、入院後に行う治療や手術に悪影響を及ぼす要因がないか確認し、指導を行っています。
③手術を受ける患者さんには、個々に応じて色々な不安があります。それぞれの分野での専門職種が関わりを持ったり、説明を行うことで、不安を一つ一つ解決し、安心して入院・手術に臨めるように援助します。
④手術室では、PMT外来での情報を元に、術前訪問を行ったり、患者さんの個別性にあわせた手術の準備を行います。
薬剤師外来を行っています
2017年2月から病棟薬剤室、薬品情報室が連携して、手術を控えた患者さんのための薬剤師外来を行っています。面談を行い、手術前に中止するべき薬剤の確認はもちろん、服薬状況や薬に関する質問にも対応しています。
PMTナース院内認定看護師
2014年4月18日、ハイレベルケアナース認定証授与式が行われ、手術センターから2名が認定されました。
倉敷中央病院では、特定の看護領域のケアを学ぶ独自の教育プログラムを全課程受け、一定レベル以上の知識・技術を身につけた看護師をハイレベルケアナースとして認定する制度を新設しました。
自部署に質の高い看護を展開し、看護の質向上に寄与することが期待されています。認定後は、ロールモデルとなり、教育的指導を担っていく立場となります。
ハイレベルケアナース認定者はこのピンバッジを名札につけています
山本 千恵 ( PMTナース院内認定看護師 )
周術期管理チーム(PMT)で始めた術前外来が3年目を迎えます。患者さんに、より安全に手術を受けていただくために多職種でチームワーク良くがんばっていきます。
植田 優子 ( PMTナース院内認定看護師 )
賞状とバッチをいただいて、身が引き締まる思いです。PMTでの意図的な情報収集により、患者さんを診る視点が広がりました。年間勉強会、PMT見学も随時受け付けております。皆さん、一緒にPMTナースを目指しませんか?
教育
スタッフの知識・技術の向上へ
患者さんの安全と安心を保証できる看護を提供するために
当センターでは、新人教育に本院独自のシステム(アプリコット製の修正版)を取り入れています。新人スタッフが職場環境に適応し、手術看護の知識・技術を習得できるよう、スタッフ全員でサポートを行っています。
教育ワーキンググループによる年間計画のもと、リスク予測と対応についてスタッフがトレーニングできるよう企画運営を行っています。昨年度は呼吸管理、今年度は循環管理といった、年間を通したテーマのもとに勉強会や事例検討会を実施しています。患者さんの安全と安心を保証できる看護を提供できるよう、スタッフみんなで知識・技術の向上に努めています。
急変症例への対応訓練
整形外科の急変症例に対し、医療安全委員会を通し対応について協議し、それに基づいて麻酔科医・整形外科医・手術室看護師・臨床工学技士でシミュレーションを行いました。
超緊急CSシミュレーション
総合周産期母子医療センターを有する当院では、夜間・休日の超緊急帝王切開にスタッフ全員が対応できるように、シミュレーションを行っています。
手術看護認定看護師
2012年まで手術看護分野での認定看護師養成課程は東京女子医科大学にしかなく、大変狭き門でした。 現在、関西にも養成課程ができたことで手術看護認定看護師の人数は増えましたが、まだ岡山県には多くはいません。そのうち、3名の手術看護認定看護師が当センターに所属しています。
患者さんを、ただ一人の大切な人として看護する
私が手術室看護師として大切にしていることは、手術を受けるということが、目の前の患者さんやその家族の生活・人生の中でどのような出来事であるのか、患者さんは何を期待してその手術を受けるのかを考えることです。患者さんが手術を終えて退院した後の日常生活・社会生活をイメージし意識することで、患者さんがただ一人の大切な人として、安心して手術を受けられるような看護を提供していきたいです。
患者さんに関わるすべての医療チームで患者さんを支える環境を作っていくことを実感する日々
私は、2010年7月に手術看護認定看護師審査を合格後、育休をいただいて2011年より手術室へ復帰しました。仕事に育児に頑張っています。手術を受ける患者さん・ご家族が安心して手術を受けられるようにと日々、周術期における看護実践を行っています。今頑張っているのは、PMT外来(周術期管理外来)です。
各診療科外来で手術決定され、外来診療時から外来看護師・医師、手術室看護師はじめチームで患者さんをサポートしています。PMT外来で、患者さんに直接面談し、全身審査・手術の受け入れ状況・周術期のリスクを把握し、外来、病棟看護師・麻酔科医師・手術室看護師と情報共有することで医療を提供する準備が確実に行え、安全・安心な入院・治療環境を提供できます。PMT外来を担当し、術前から患者さんの状態を把握し情報提供することで、手術室看護師だけでなく、患者に関わるすべての医療チームで患者を支える環境を作っていることが感じられています。
専門的な知識や技術で患者さんの安全を守り、不安を理解し精神面での援助をする
手術室看護師は、患者さんの危機的な状況に閉鎖空間の中で立ち会います。だからこそ、専門的な知識や技術で患者さんの安全を守ること、不安を理解し精神面での援助をすることがとても重要だと思っています。 手術を安全に行うためには、高い手術の技術だけでは不十分です。手術や麻酔に影響を及ぼす可能性のある問題点をピックアップして、チームの中でその問題点を解決していくことで、患者さんが心も身体も安心して安全に手術を受けることができる環境を整えていきたいです。
手術を安全に
医療安全への取り組み
多職種での情報共有、多重チェック、定期監査など積極的に実施
WHOで推奨されているブリーフィングを当センターでも導入しています。
患者入室前には実際に手術を担当する多職種のスタッフが集まり情報共有のミーティングを行い、手術が安全に行えるように取り組んでいます。
手術前に医療者全員が手を止め、患者さんのネームバンドとカルテを照らし合わせ、名前・生年月日・手術部位の確認を行っています。
また、リスクのワーキンググループメンバーを中心に、ガーゼカウントが正確に行えているか定期的に監査を実施したり、事故防止のための対策を考えたり、ヒヤリハットの事例をスタッフ間で共有することで、大きな事故に繋がるのを未然に防止しています。
周術期を通してのかかわり
質の高い周術期看護を実施
術前、術後の訪問で計画的な支援室を実施し、リスクの軽減へ
手術室看護師が周術期のリスクが高い患者さんに術前から関わりを持ち、計画的な支援を行うことは、リスクの軽減につながります。術後訪問を行い、術中の問題について病棟看護師と連携を図ることで、質の高い周術期看護を実施しています。
術前訪問:PMT外来で面談した結果、看護介入が必要など周術期のリスクが高いと判断した患者さんに対して実施しています。入院時病棟でも術前訪問が必要かアセスメントを行い、患者情報を共有しています。術前訪問は手術を担当する予定の看護師が前日に行っています。
術後訪問:術中外回りを担当した看護師が、術前訪問を行った患者さん・術中看護に気がかりがあった患者さんに術後2~3日を目安に実施しています。術後訪問を行うことで、患者さんの声を直接聞き、自分たちの看護を振り返り、より良い看護を提供できるよう目指しています。
研修会・学会への参加
より良い看護を目指して
看護研究の積極的な実践を全国へ展開。他院とともに学ぶ場も。
日本手術看護学会中国地区岡山分会の研修会の講師として当院の認定看護師が活動したり、研修会会場として、当院の施設を利用することも多いため、研修会に参加し他院の看護師と交流を深めたり、学びを深める機会が多くあります。
当センターでは、患者さんにより良い看護を提供するために、積極的に看護研究を行っています。
行った研究は日本手術看護学会や手術医学会等で発表をしています。