腫瘍内科

当科の特色

腫瘍内科 仁科慎一主任部長

仁科 慎一 主任部長

2020年より新しく開設された診療科です。がん種をこえた診療、多診療科、多職種によるカンファレンスを行い治療のサポートを行っています。
神経内分泌腫瘍(NET、NEN)を含めた希少がんも対象とし、診断および治療方針は多臓器にわたる診療科、放射線診断科と放射線治療科、病理診断科、遺伝診療部、薬剤師、看護師、MSWによるカンファレンスで検討し、最適な治療を提供します。

診療内容

原発不明がんや重複がんに対する診療

原発巣がわからない原発不明がんはがん全体の約2%にみられるといわれます。原発不明ですので確立した治療法はなく、また、全身に転移しており予後はよくありません。しかし、原発不明がんの中には治療が有効で予後良好な症例も含まれており、診断、治療法の検討は慎重に行う必要があります。また、がんの治療の進歩により長期生存される方は増えており、治療中にふたつ目のがんを抱える患者は少なくありません。腫瘍内科ではこれらの患者さんに対して、がん種を超えた臓器横断的なオンコロジーボードを開催し、様々な角度から検討した診療を行っています。

神経内分泌腫瘍(NET、NEN)に対する診療

神経内分泌腫瘍はNETやNENと呼ばれ、10万人あたり2.9人が毎年発生する希少がんです。日本では原発巣は直腸が最も多く、次いで膵臓、胃に発生し、低悪性度のものからきわめて悪性度の高い神経内分泌がんまで悪性度が幅広い一方、希少がんであることから、診療にあたり豊富な治療経験が必要です。腫瘍内科では経験豊富な医師とともに多職種カンファレンス(オンコロジーボード)にて多方面から疾患を検討し、最適な治療を提示いたします。
2022年3月より新規の治療法であるPRRT(ペプチド受容体核医学内用療法)を開始いたしました。岡山県では岡山大学と当院でのみ可能で、かつ、年間治療数に限りがあるために腫瘍内科で一括して管理し、治療適応を適切に決定しています。これらを背景に2022年6月より隔週の火曜日に神経内分泌腫瘍外来(NET外来)を開設し、統一して診療に当たる体制といたしました。

マイクロサテライト不安定性がんに対する免疫治療など臓器横断的治療

免疫チェックポイント阻害薬、がん遺伝子変異に対する分子標的治療などはいろいろながん種に行われており、今までの殺細胞薬といわれる抗がん剤とは全くちがった治療効果があります。それらの治療は臓器ごとではなく、臓器をこえて分子生物学的な分類で行われています。有望な治療法ではありますが、今までと全く異なる副作用があり、治療法の適応、毒性の対応に知識が必要です。またこの分野の進歩は目覚ましく、治療について日々アップデートしていかなければなりません。当院では、オンコロジーボードでカンファレンスすることで、知見を共有し、患者さんへの最新の治療を提供することに努めています。

がんゲノムパネル検査やペプチド受容体核医学療法など新規治療の導入

標準的な薬物治療終了後のがん患者さんには有望な治療法がありません。
当院はがんゲノム医療連携病院に指定されており、このような患者さんに対して、がんゲノムパネル検査による網羅的がん遺伝子検査を行っています。がんゲノムパネル検査とは、がん組織もしくは血液よりがんのDNAを抽出し、がんに関連する数100種類の遺伝子を調べることによってがんの特徴を調べる検査です。毎週、がんゲノム医療中核病院である岡山大学病院と個々の症例の遺伝子検査結果についてWebでカンファレンスを行い、有望な治療を探索するとともに臨床試験や治験への橋渡しを行っています。
がんゲノムパネル検査で有望な臨床試験等が行われる可能性は約10%程度ではありますが、治療の希望につながります。また、がんのゲノム検査結果は厚生労働省が設置したがんゲノム情報管理センターに登録され、がん研究の促進につながります。今後、地域のがん患者さん検査を提供できる体制を早急に整えていきます。