腎臓内科

診療内容

診療内容は大きく分けて、①慢性腎臓病(CKD)、とくにメタボリックシンドローム・糖尿病などの生活習慣病に関連した腎臓病の診療、②腎炎、ネフローゼ症候群、他の全身病に関連した腎臓病の診療、③急性腎不全の診断・治療、④慢性腎不全の診断・治療、⑤血液浄化療法の5項目で、患者さんの生活状況にも配慮し、最小限の負担で必要十分な診療を行うよう努めています。

慢性腎臓病(CKD)、とくにメタボリックシンドローム・糖尿病などの生活習慣病に関連した腎臓病の診療

倉敷中央病院付属予防医療プラザでのドック受診で腎機能低下が疑われた方を対象に、2020年11月から同施設内でCKD外来を開始。

CKDのなかでも肥満・糖尿病・高血圧・脂質異常症など生活習慣病に伴うものは末期腎不全のみならず致死的な心血管病を発症しやすいことが知られています。蛋白尿がわかった時点で腎臓専門医により正確な診断がなされなければ、治療・管理の方針が立たず、気付かないうちに進行してしまうことがあります。当科では、経験豊富な専門医が病診連携のもとに患者さんの診断・治療・管理に関わっています。

倉敷中央病院付属予防医療プラザCKD外来での情報提供

腎炎、ネフローゼ症候群、他の全身の病気に関連した腎臓病の診療

検診で指摘された蛋白尿・血尿からネフローゼ症候群や腎機能障害をきたしている場合までさまざまな程度の病気が対象です。糸球体腎炎に限らず、全身の病気に合併した腎臓病でも腎生検を行い、正確な診断に基づいて治療を行います。腎生検入院は4日間で、習熟した医師が確実に検査を行います。診断は、病理医とカンファレンスを行って確定します。

治療は、ガイドラインを参照しながら行います。適応があればステロイド治療を行い、重症あるいは難治性の場合は免疫抑制薬やアフェレーシスを追加します。IgA腎症に対する扁桃腺摘出+ステロイドパルス療法も積極的に行っており、多くの患者さんが寛解に至っています。

急性腎不全の診断・治療

種々の原因による急性腎不全から手術や重症感染に続発する多臓器不全のような重篤な疾患まで、関連科と連携しながら治療を行います。重症の場合は持続血液浄化療法のため集中治療室管理を必要とすることもあります。

慢性腎不全の診断・治療

保存期慢性腎不全では、栄養状態と日常活動度の低下に注意しながら、残腎機能を保持して透析導入までの期間を延長すること、また心血管合併症の発症を予防することを目標に治療・管理を行っています。慢性腎不全の教育入院をされる患者さんも増えています。外来ではベテラン看護師とともに腎代替療法について詳しく説明する時間を作り、ご家族からも透析の事がよくわかると好評です

透析導入となる場合は、社会的あるいは家庭生活に配慮してできるだけ負担の少ない導入を行い、円滑に維持透析に移行できるよう努めています。

血液浄化療法

急性疾患に対しては病態に応じた血液浄化療法を選択し、慢性腎不全に対しては至適透析を心がけ、心血管合併症および長期透析合併症に注意しながら管理を行っています。

  1. 急性血液浄化療法
    急性腎不全をはじめ、心不全、電解質異常、重症膵炎、劇症肝炎、敗血症など様々な病気に対して血液浄化療法が行われます。重症の場合は循環器内科、集中治療科、救急科などとの連携により集中治療室で持続血液浄化療法を行います。
  2. 血漿交換、吸着療法
    血液治療センターや集中治療科との協力により、急速進行性腎炎に対する血漿交換、難治性ネフローゼ症候群に対するLDLアフェレーシスなどを行います。
  3. 維持血液透析療法および連続携行式腹膜透析(CAPD)
    当院での外来血液透析歴の長い方は28年目を迎えておられます。高齢化と透析の長期化にともなって増加している全身合併症に対しては、各専門科の協力により治療を行い、他院の患者さんも数多く受け入れています。シャントの作成や拡張術は心臓血管外科と腎臓内科で分担して行っています。
    シャント手術 腹膜透析は入院で導入し、安定すれば月1~2回外来受診としています。入院期間が短くて導入後の経過のよいSMAP/SPIED法を選択しています。

腎生検と組織診断

腎生検の穿刺手技はエコーを利用して全例で確実に標本を採取します。局所麻酔を十分行い検査時の疼痛も最低限に抑えます。エコーガイド下に標準的な方法で検体を採取し、病理検査科の迅速な検体処理により光学顕微鏡標本は3日以内に、沈着物を検出する蛍光抗体法と高倍率の電子顕微鏡画像は1週間以内に結果を確認できます。病理診断科と毎週腎生検カンファレンスを行い、おおむね検査後10日で患者さんに結果を説明できます。急速進行性糸球体腎炎など診断を急ぐものは、でき次第光学顕微鏡標本を確認し治療方針を決めます。腎生検は特殊な検査で合併症が心配と受け取られがちですが、当院では安全、迅速、正確に腎生検と組織診断を行う点で高いレベルを維持しています。

薬剤を選別し食事内容を評価した腎不全診療

高齢化や糖尿病性腎症を原疾患とする腎不全の増加に伴い、多数の薬を使用している患者さんが増えています。お薬手帳の活用が勧められていますが、内科以外の診療施設で処方された薬もすべて確認し、現在の腎機能を守るために最善の組み合わせを検討して入院中に薬を調節したり、かかりつけ医の先生に連絡し薬を変更していただきます。食事内容は調査票に記入して管理栄養士が栄養摂取量を計算します。別の方法として24時間蓄尿検査で塩分、蛋白質の摂取量を計算式で推測したり、尿量から水分摂取量を推定することもできるので、これらに基づいて適切な食事内容を医師、管理栄養士がアドバイスします。

腎疾患に関する先進的な治療

多発性嚢胞腎に対するトルバプタン療法は開始時に看護師・管理栄養士が飲水方法などの生活指導を行い、長期投与の方もおられます。再発を繰り返す難治性ネフローゼに対するリツキシマブ療法、膠原病・血液疾患に腎炎・腎不全を合併した場合に腎組織を確認して治療方針を検討するなど、先進的な治療や専門の他科と連携した治療に積極的に取り組んでいます。

合併症治療中の透析管理

腎移植を除いて、当院は透析患者さんのあらゆる合併症に対応しており、広汎な地域から治療目的の患者さんが紹介され入院中は当院の人工透析センターで透析を行います。