小児科

小児血液・がん部門

小児の血液疾患や小児がんの診断・治療には専門的な知識や設備が必要です。当院は小児血液・がんの専門医を2名配し、日本小児がん研究グループ(JCCG)および血液腫瘍分科会(JPLSG)、日本小児白血病研究会(JACLS)の参加施設として診療を行っています。小児がんは比較的まれな疾患で、治らない・怖いイメージを持たれる方も多いでしょう。年間2000-2500人のお子さんが小児がんを発症し、病死の原因としては第一位であり、決して稀な病気ではありません。治療法の進歩も非常に早く、現在では8割を超えるお子さんが完全に治癒しており、治る病気になっています。しかし、一部の患者さんでは病気そのものによるもの、治療に伴う合併症のために長期的な問題を抱え、生活の質(QOL)が低下することも知られており、我々はお子さんを「後遺症がないよう」、「安全に」、「苦痛や不安を取り除き」どのように治すかも重要だと考えています。血液・がん部門では、小児がん以外の血液疾患や免疫異常の診断や治療も行っております。

小児血液・がん部門の特色と当院の取り組み

国際小児がんデー

国際小児がんデーの取り組み

小児がんの治療は化学療法(抗がん剤)、手術、放射線治療などを組み合わせた治療を行います。当院では小児外科、脳外科、放射線治療科、血液内科、歯科、眼科、耳鼻科、病理診断科、放射線診断科などの院内各科と連携して、年間20名から30名のお子さんの診療を行っています。多くは半年から1年の入院治療が必要です。入院生活はお子さん、そして御家族の皆様にとって重大な出来事ですが、小児看護専門看護師をはじめとした看護師、薬剤師、臨床心理士、リハビリ、栄養士、保育士、ソーシャルワーカー、院内学級教員と柔軟な連携を取り、みんなで乗り越えようとチーム一丸となって支えていきます。強い化学療法を行うのに適したクリーンルームも9つ有しており、施設環境面でも子ども達を守っています。

【2017~2020年に新規診断した疾患と患者数】

血液疾患
急性リンパ性白血病 21
急性骨髄性白血病 4
ホジキンリンパ腫 2
非ホジキンリンパ腫 4
ランゲルハンス組織球症 1
若年性黄色肉芽腫 1
骨髄異形成症候群 3
再生不良性貧血 2
TAM 5
血友病A 4
血友病B 1
vWD 1
EBV-HLH 1
自己免疫性溶血性貧血 1
sJIA 1
血縁者間造血幹細胞移植 1
固形腫瘍
上衣腫 3
髄芽腫 2
ジャーミノーマ 3
神経膠腫 2
肝腫瘍 2
神経芽腫 2
腎腫瘍 2
卵巣腫瘍 6
精巣腫瘍 1
その他・胚細胞性腫瘍 3
甲状腺癌 1
上咽頭癌 1
脊索腫 1
胸膜肺芽腫 1
炎症性筋線維芽細胞腫 1
自己末梢血幹細胞移植 4

 

私たちは以前より、「地域のお子さんを地域で診ること」を大切にしてきました。入院生活もお子さんのこころと体にとっては大切な時間です。ご家族、友人そして地域のみなさんが、病気の子ども達の成長を見守りながら、質の高い治療を行える環境を作るために当院では以下の取り組みを行っています。

当院のの特色

幅広い診療圏のなかで、1次から集中治療の必要な3次救急にも24時間対応しています。また、NICUは岡山県西部の新生児医療の中核となっています。診断がつかず当院に紹介いただくお子さん、別の病気で来院され偶然発見されるお子さん、急いで集中治療を行う必要があるお子さんなど、様々な小児血液・がんのお子さんを治療しています。

JCCGといった全国レベルの臨床研究に参加し、診断・治療・副作用対策など、よりよい医療を高い水準で提供しています。また、がんゲノム医療連携病院であり、網羅的ながん遺伝子を調べることで有望な治療への橋渡しも行っています。中国・四国ブロックの小児がん連携病院となっていることに加え、血液・小児がんスタッフが京都大学小児科のメンバーであることから、広島大学・岡山大学・京都大学とのカンファレンスや連携をとった造血幹細胞移植も頻繁に行っています。常に最先端の知識を獲得すると同時に、治療内容の検討を丁寧に行っています。

チーム医療を実践し、より高い専門性をもったメンバーが「軽いフットワーク」と「密なコミュニケーション」でお子さんに関わっています。

がんリハビリテーション
がんのリハビリテーション研修会を受講したチームが積極的なリハビリを行い、運動能力・体力の評価、維持・増大を目指しています。小児に特化した小児リハビリテーション室のメンバーが、個別指導やレクリエーションを取り入れて行っています。週2回のラジオ体操や院外・院内のお散歩(お花見や公園での遊び)も恒例行事です。


歯科ラウンド
歯科医と歯科衛生士のチームが毎週、病棟のお子さんを診察・ケアしています。口内炎の予防や治療を行い、口腔内を清潔に保つことは治療の副作用を軽減し、おいしくご飯を食べて栄養状態を保つことにもつながります。


栄養管理
栄養サポートチームが週1回、食べることや栄養面で問題を抱えるお子さんについて検討しています。どうしたら食べやすくなるか、栄養バランスはどうか、補助食品の検討などを管理栄養士、医師、看護師、薬剤師、リハビリチームが意見を出し合っています。


保育
小児科病棟には2名の院内保育士が活躍しています。乳幼児や学童期の子ども達に個別保育や集団保育を行い、子どもたちの健やかな成長や発達を促しています。プレイルームもクリーンルーム内および院内学級横の2か所に配置しており、いつもにぎやかな声と笑顔があふれています。


教育 倉敷市立倉敷東小学校、東中学校の特別支援学級(院内学級)が病棟内にあります。入院中のお子さんは一度転校をして、新しい友だちと院内学級に通い、担任の先生のもとで学校生活を送ります。治療が終われば、また転校をして元の学校に戻ります。当院の院内学級は、原籍校の教科書を使い、原籍校のクラスメイトと同じテストを受けます。また、退院後も問題なく原籍校に戻れるよう、オンラインを使うなどして原籍校の担任の先生やクラスメイトと積極的につながりを持ち続けるように取り組んでいます。調理実習や仲間とのレクリエーションも欠かせない楽しみです。教育委員会や原籍校との連携をとり、高校入学試験を院内で実施した中学生や、県立高校に在籍してオンライン授業を病室でうけ、休学や退学することなく進級・卒業した高校生もおられます。


妊孕(よう)性温存
治療内容によってがん患者が妊娠するために必要な能力(妊孕性)を失う可能性があります。治療前または治療の間に、院内または他院にて卵子保存や精子保存を実施しています。


当院ならではの行事
大原美術館の学芸員さんからのレクチャーや作品製作を出張講義もしくはオンラインにて受けることができます。病院ボランティアの皆さんによる楽しい読み語り、手芸教室、院内学級の学習支援、オンラインでの音楽鑑賞なども行っており、入院生活を送るお子さんに笑顔やワクワクを届けてくれています。

ボランティア活動(英語読み聞かせ)

ボランティア活動(英語読み聞かせ)

ボランティア活動(絵手紙短冊作成)

ボランティア活動(絵手紙短冊作成)

大原美術館交流

大原美術館オンライン交流

人材育成

小児血液・がん部門は小児科ならではの治療だけでない小児医療の醍醐味を身近に感じられる場所です。正確な診断を行い、標準的な治療を行う能力だけでなく、多職種間でチーム医療を丁寧に行う能力が必要です。多彩な一般小児疾患を診療できるオールラウンダーな能力を有する小児科専門医、さらに血液専門医、小児血液・がん専門医といった小児血液・小児腫瘍性疾患を専門とする優秀な医師を育てることにも注力しています。
各学会での症例発表、研究発表に加え、専門医取得には必須の論文作成も当部門は積極的に行っています。
当院は小児科学会専門医研修施設、日本血液学会血液研修施設、日本がん治療認定医医療機構認定研修施設、小児血液・がん専門医研修施設に認定されています。

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