血液内科
CAR-T細胞療法
CAR-T細胞療法とは
Chimeric antigen receptor-T cell therapy-キメラ抗原受容体T細胞療法のことです。
我々の体の中で、腫瘍細胞から体を守っている免疫の力は、Tリンパ球と呼ばれる白血球が重要な役割を果たしています。CAR-T細胞療法は、腫瘍細胞の表面が持っている性質と結合する抗体を作る遺伝子を患者さん自身のTリンパ球に組み込み、Tリンパ球が抗体を介して直接腫瘍細胞と結合できるようにして、腫瘍を攻撃することを目指した治療です。
従来の抗腫瘍薬で治療困難な場合も、免疫の力で回復に向かう可能性があります。
他人の造血幹細胞を用いた同種移植も、さらに大掛かりな免疫療法ですが、対象を腫瘍細胞に限った治療が可能な点等で、全身への負担が少なく類似の効果を得られる可能性があります。
当院のCAR-T細胞療法
現在、当院では3種類のCAR-T細胞療法(キムリア、イエスカルタ、ブレヤンジ)を運用しています。
CAR-T細胞療法製造にあたっては、患者さんのリンパ球を採取し、キムリアの場合は細胞処理、凍結をした上で、イエスカルタとブレヤンジは採取した細胞を処理せずに冷蔵の状態で出荷します。出荷するまでの製造過程の一部を医療機関が担うため、人員、設備、細胞調整管理、文書管理等で厚生労働省の定めた最適使用推進ガイドラインの施設要件を満たす必要があります。
当院は2021年5月に、大学病院、公的医療機関以外で初めて認証を受けました。
治療対象
それぞれのCAR-T細胞療法により治療対象はやや異なりますが、現在の治療対象は以下の疾患のうち、疾患の状態、年齢、全身状態、合併症などを考慮しCAR-T細胞療法の適応を検討することになります。
• 再発または難治性のCD19陽性B細胞性急性リンパ芽球性白血病(25歳以下)
• 再発または難治性の悪性リンパ腫
治療の流れ
CAR-T細胞療法では、患者さんのリンパ球を採取した後、遺伝子導入を行う施設に搬送、4-6週かけてCAR-T細胞を製造します。その間、必要な場合には、病勢の悪化を防ぐための治療が行なわれます。
CAR-T細胞の製造が成功し返送された後に、再度治療実施時期を決定、それに合わせて、治療効率を上げるため、患者さんのリンパ球を減らす治療を実施し、そのあとCAR-T細胞を輸注します(時に製造が不成功の場合があります)
合併症
治療は輸血と同様の手技になりますが、時に重篤な合併症を生じる場合があります。
- サイトカイン放出症候群(CRS):輸注したCAR-T細胞が活性化し、いろいろな物質(サイトカイン)を産生することにより、発熱、低酸素、血圧低下などを生じ、集中治療室管理を要することもあります。輸注後2週間頃まで生じる可能性があり、アクテムラで治療します。重篤なものは5%程度の発症率です。
- 神経毒性(ICANS):原因はよくわかっていませんが、意識障害、けいれん、運動性失語等が生じます。輸注後1週間までに生じることが多く、3-4週でも生じる可能性があります。副腎皮質ホルモン等で治療します。重篤なものは4.5%程度の発症率です。
入院期間は、CAR-T細胞輸注前は病状によって異なりますが、CAR-T細胞輸注後は約2~4週間程度です。
重篤な合併症を呈することもあるため、万全の態勢で、治療にあたっています。
CAR-T細胞療法実施に際しては、必ず事前に関連スタッフによる適応カンファレンスを行い、慎重に治療適用を決定したうえで、計画を立案しています。
患者さんとそのご家族のみなさまへ
CAR-T細胞療法関連のご相談は、医療機関からのご紹介のみに限らせていただきます。
CAR-T細胞療法の治療を目的とした受診につきましては、主治医にご相談いただき、医療機関を通じてご連絡をお願いいたします。
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