患者さん向け広報誌「Kニュース」No.4

インタビュー

『患者のみなさまの権利』宣言

患者の権利宣言策定ワーキンググループ 委員長 漆谷 英禮

患者の権利宣言策定ワーキンググループ委員長 漆谷 英禮

「患者の権利宣言」とは、どういうものですか

漆谷 患者の権利宣言の先駆けとなったのは、1973年にアメリカで公表された「患者の権利章典」です。60年代に起こった公民権運動に端を発して、市民が患者中心の医療を訴え、これまでの、医療は医師におまかせという考えから、患者さんと医師は同等で、どのような医療を受けるかを決めるのは患者さん自身である、という考えが求められるようになりました。

ここ数年、日本の病院でも「患者の権利」に関して、宣言、章典といった形で作られてきています。

それを、倉敷中央病院でも作ったのですね

漆谷 当院では、創立者の理念を受け継いで患者さん中心の医療を実施するために、その時代時代にふさわしい病院のあり方を求めてきました。ここ数年は、患者さん参加の医療を行うために、職員は患者さんとどのような係わりをもてばいいのか、職員の意識改革を図るにはどうすればいいのかについて、議論を重ねてきました。

この宣言は、患者さんの権利はどのように尊重されるべきかについて、患者さんに代わって私たちが、その権利を主張するものです。

内容を教えてください

漆谷 権利は五つの項目からなっています。

第一は個人の尊重で、これは憲法で明確にされています。

第二は平等で最良の医療を受ける権利で、法の下の平等は憲法で明確にされていますが、当院は創立者、大原孫三郎の院是である「平等主義」と「進歩せる医療」を常に目指してきています。

第三のインフォームド・コンセントと自己決定権は医療上、患者さんの権利の基本となるものです。

インフォームド・コンセントとは、どういうことですか

漆谷 言葉の意味は「説明と同意」ということですが、それだけでは十分ではありません。患者さんが、自分の治療法を選択できるようにすることです。

具体的にいいますと、例えば、医師は患者さんの病状を調べるために検査を行いますが、事前にその検査について効果や危険性を説明しなければなりません。その結果をもとに患者さんに病状を正しく伝え、どのような治療ができるのか、その内容を、成功率や危険性を含めて、患者さんが理解できるように説明し、患者さんに自分の治療法を選択していただくのです。

患者さんに不安感を与えるものであってはなりません。むしろ、患者さんとの信頼関係を深めるためのものです。

先生の説明は難しい言葉が多くて分かりにくいことがあります。説明を聞くコツはありませんか

漆谷 医師の説明で分かりにくいところがありましたら、遠慮なく、何度でも聞いてください。

もし、一人で説明を聞かれるのが難しいと思われたら、ご家族とご一緒に聞かれることをお勧めします。医師に尋ねたいことを、あらかじめメモしておくこともいいのではないでしょうか。

また、最近は患者さん向けに病気を解説した本や雑誌がたくさんありますので、お読みになるのもいいでしょう。当院も本年末を目標に、患者さん用の医療情報コーナーを設置する予定です。

また、自分が治療を受けているとき、これでいいのかなと思うときがあります。そんな時、よその病院で自分のかかっている医師とは別の医師の意見(セカンドオピニオン)を聞くことができるよう、システムをつくります。

その他には、どのような内容がありますか

漆谷 第四は情報に関する権利で、第五がプライバシーの保護と秘密保持の権利です。プライバシーに関しては、施設的に改善しなければならない点がありますので、順次進めていきます。

最後に患者さんに対するお願いがありますが・・・

漆谷 他の患者さんの診療に支障をきたさないようにというのは、当たり前すぎて大変失礼なことですが、患者さんにぜひお願いしたいのは、受診のときはご自分の体調について正しくお話しいただき、積極的に医療に参加していただきたいということです。

みなさま方とともに、信頼され、満足される医療を行う病院にしたいと願っています。

トピックス

外来増築棟ができました -地域医療連携とプライバシーを考慮して-

外来増築棟 画像

かねてから工事をすすめていた外来増築棟が完成し、6月10日から使用を開始しました。オープンに当たり、外来全体で窓口番号を見直したため、当初は皆さま方に大変ご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした。引き続き、既存の外来部分を改築していきます。来年三月までの予定ですので、今しばらく騒音・ご不便等あるかもしれませんが、ご理解ください。

さてこのたびの増改築は、皆さまにより質の高い医療を受けていただくために、当院が近隣の病医院と連携をとりながら、地域の急性期基幹病院としての役割を果たすためのものです。地域医療連携では、慢性の病気や日々の健康維持にはご近所のかかりつけの先生に診ていただき、専門的な検査や治療を必要とされる場合に、当院に来院していただくようになります。(受診のさいは、かかりつけの先生の紹介状を持って来院してくださるようお願いします。)

さて、増築した外来の診察室はプライバシーを考慮して、カーテンで仕切った診察前後の着脱衣のスペースをなくしました。看護師と落ち着いて話ができるように、多数の看護相談室を設けると同時に、診療アシスタントを導入して看護師との仕事を区分し、看護師が皆さまの相談を受けやすいシステム作りも行っています。どうぞお気軽にご相談ください。

外来増築棟 フロア図

健康な毎日のために

夏の皮膚病

形成外科 主任部長 小山 久夫

形成外科 主任部長 小山 久夫

毎日、強い日差しに焼かれ、大汗をかき、虫に刺される皮膚にとって、夏は過酷な季節です。毎年この時期になると増えたり、悪くなったりする皮膚病をいくつか挙げて、その治療法や予防方法について説明します。

水虫

水虫の典型例 安西喬他編「最新皮膚科図鑑」より

水虫の典型例
安西喬他編「最新皮膚科図鑑」より

ある統計によれば、水虫は現代サラリーマンの持病の四分の一を占め、肩凝り・痔・胃炎・腰痛を抑えて堂々の一位だそうです。

水虫(足白癬)は皮膚糸状菌というカビによって起こる一種の感染症です。足の指の股や足の裏に水ぶくれやカサカサが生じて、かゆくなることが多いのですが、足だけでなく手に生じることもあり、またかゆくないことも多いので、きちんと皮膚科医にみてもらって、顕微鏡でカビを確認してから治療するのがいいでしょう。温疹など他の皮膚病でも水虫とそっくりの症状を示すことがあるので、素人療法でかえって悪くなってから皮膚科に来られるケースが多いです。

虫刺され

人間にとっては住みにくい夏も、虫類にとってはいい季節らしく、六月から九月にかけては、さまざまな虫類による被害が生じます。

夏草が生い茂る場所で、虫とりなど野外作業をした後、蚊やブヨに刺されたり、気付かないで庭木にいる毒蛾やその幼虫である毛虫に触れて、かゆいブツブツができたりします。おおむね、手先や足先など露出した部位に、とびとびのブツブツとして生じ、かゆいことが多いです。

毛虫や毒蛾の場合は、虫の表面の鱗粉や毛を塗り広げるために広範囲がおかされます。やられたと思ったら、やたらこすらないで、そっと流水で洗い流すか、入浴しましょう。

岡山県のような川や水田が多い地方では、青羽蟻形羽隠し(あおばありがたはねかくし)という羽虫が分泌する毒素に触れて、化膿したようなひりひりする発疹が線状に生じることがあります。

青羽蟻形羽隠しにより顔に生じた皮膚炎の例

(アオバアリガタハネカクシ)
青羽蟻形羽隠しにより
顔に生じた皮膚炎の例

意外に多いのが猫蚤(ねこのみ)による被害です。猫蚤は猫だけでなく人や犬にも被害を起こします。庭の砂に卵を産むために、庭を歩く人の足首を中心としてひどくかゆいブツブツが沢山生じ、水ぶくれができることもあります。駆除にはのみとり粉が有効ですが、野良猫の遊ぶ庭の砂地にも撒く必要があります。

虫刺され対策は、毛虫など特定の虫が繁殖するとわかっている場所には近寄らないことですが、刺されてしまったら、副腎皮質ホルモンの塗り薬を塗るしかありません。一般に効くと信じられているアンモニアは無意味です。

日光皮膚炎

要するに日焼けのひどいケースです。色白の人が、海水浴などに行き、いきなり長時間直射日光にさらした場合などに起こり、手の甲・腕・背中・項部(うなじ)・耳・顔など露出部が赤くなり、腫れ上がり、、水泡ができます。ピリピリ痛くて、体を動かすのもつらいことがあり、全体的に熱が出ることもあります。

予防法は、いきなり直射日光に体をさらさないこと、長時間日差しの強いところにいる必要があるときには、シャツや帽子を身に付け、紫外線を遮る遮光剤(サンスクリーンの類)を塗っておくことです。遮光剤にも色々等級があり、また一定時間おきに塗り足さなければいけません。紫外線にはシミやそばかすを増やす作用だけでなく、将来皮膚癌ができる要因になることがあるので、必要以上の日焼けはさける方がいいでしょう。

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎もしばしば、夏悪くなる人がいます。夏の蒸し暑さと発汗が悪化の原因と考えられています。

とびひ

歳の子供のお尻にできた とびひ(伝染性膿痂疹の例)

歳の子供のお尻にできた
とびひ(伝染性膿痂疹の例)

感染性膿痂疹(とびひ)も子供に多い夏の皮膚病です。黄色ブドウ球菌という細菌による感染症で、特にアトピー性皮膚炎の子供がよくかかります。薬を塗るだけでは駄目で、抗生物質の内服を一週間ほどきちんと行えばたいていはすぐ治りますが、時々再発します。

皮膚に優しい夏の過ごし方

夏は毎日入浴を欠かさず、汗をかいたらシャワーを浴びるなどして、さっぱり気持ちよく暮らしましょう。石鹸を使ってはならない場合はほとんどなくて、むしろ石鹸を使用してその日にかいた汗や皮膚の分泌物、皮膚にこびりついた垢や細菌をきれいに落とすのがいいのです。

規則正しい生活を送るように工夫して、かゆくても掻くかわりにまめにきちんと薬を塗り、十分な睡眠をとって、ストレスを貯めないように心がけましょう。

QQ車 院内ニュース

QQ車は、皆さまに倉敷中央病院のできごとを運ぶ(お伝えする)コーナーです。

岡山県災害拠点病院 医療救護要員研修会行われる

6月16日、倉敷中央病院で岡山県災害拠点病院医療救護要員研修会が行われました。岡山県には岡山赤十字病院を中心に7つの災害拠点病院があり、毎年、春秋2回、訓練を行っています。今回、当院が担当になったものです。

今回の訓練は、化学コンビナートで工場が爆発し、地域住民を含め多数の被災者が発生した事故を想定したものです。2次災害防止のため、化学物質で汚染された患者さんの除染(シャワー等で汚染物質を洗い落とすこと)、被災の重傷度を把握するためのトリアージ、ヘリコプターによる患者搬送などを行いました。参加者は岡山県、各消防署、医師会、災害拠点病院等の関係者と当院職員で約500人でした。

なお、ご近所の皆さまには当日、騒音・通行等で何かとご迷惑をおかけしましたことをおわびいたします。

岡山県災害拠点病院 医療救護要員研修会のようす 画像2 岡山県災害拠点病院 医療救護要員研修会のようす 画像1