呼吸器内科

当科の特色

主任部長 石田 直

呼吸器内科の扱う疾患の範囲は、腫瘍、感染症、アレルギー、免疫、慢性閉塞性肺疾患と多岐にわたり、また救急入院やICUでの呼吸管理などエマ-ジェンシ-の多い分野です。よって幅広く実践的な臨床能力が求められ、我々もグル-プ診療を通して切磋琢磨しています。また、専門に偏することなく全般的な内科の知識を持つことも重要と考えています。臨床面ではすべての呼吸器疾患に対して対処でき得るように心がけていますが、同時に専門的な臨床研究も進めています。現在、呼吸器感染症や肺癌、間質性肺炎、気管支喘息等の集学的な診断治療に力を注いでいます。国内外の学会発表や和文英文雑誌への投稿も積極的に進めており、対外活動の積極的なグループのひとつとなっています。

診療内容

当科では、1994年より肺炎についての前向き調査を進めており、現在27年目が継続中です。年間約300-400例の登録があります。これは、本邦での最大規模の調査であり、日本呼吸器学会市中肺炎ガイドラインおよび米国胸部学会(ATS)/米国感染症学会(IDSA)合同の市中肺炎ガイドラインの基礎資料となりました。特に肺炎の起炎微生物の検出に可及的努力しており、喀痰定量培養、グラム染色、血液培養といった通常の方法から、各種抗体検査や尿中抗原、核酸ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような最新の検査まで取り入れ検索しています。また、診断や治療効果の補助として、バイオマーカーを利用する研究を多施設で行っています。

非結核性抗酸菌症は、近年患者数が増加している疾患です。当科でも外来で数多くの症例を有しており、経過観察をおこないながら、治療を行っています。その他の呼吸器感染症も積極的に診療かつ症例の集積・検討を行っており、インフルエンザについては、感染症学会や厚生労働省のガイドライン作成にも携わりました。近年は、COVID-19についても入院症例の担当を行っています。

肺癌は癌死亡順位の上位に位置し、当科にも年間約300例前後の新規症例があります。当科は内科ですので、検診で発見された症例の診断をつけて手術可能例は外科に送ることおよび手術不可例または手術後の補助治療必要例について化学療法または放射線療法を組み合わせた治療を行うことが中心となります。全国規模の肺癌治験組織に属しており、最新の薬物による治療や治験を行っていますが、患者さんの状態や希望に合わせた治療を、患者さん本人や家人と相談しながら選択するように心がけており、そのために原則、告知を行っています。

気管支喘息は、最も有病率の高い疾患の1つであり、当科も数百人の外来患者を常にかかえています。最近のガイドラインに則り、慢性期にはステロイドの定期的吸入を中心とし、発作時には救急や入院で対応するようにしています。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)もまた、有病率の高い疾患であり、最新のガイドラインに基づいた診断と治療を行っています。その終末像である慢性呼吸不全患者のマネ-ジメントも呼吸器内科医の重要な仕事で、当科でも多くの在宅酸素療法症例を有しています。また最近は非侵襲的な人工呼吸(NPPV)症例も増えています。

各種のびまん性肺疾患はその診断や治療に難渋することが多く、それだけに呼吸器内科医の腕の見せ所といえます。当科でも特発性間質性肺炎や膠原病性の肺疾患など数多くのびまん性間質性肺疾患を経験してきました。気管支肺胞洗浄(BAL)やビデオガイド下胸腔鏡手術(VATS)、クライオバイオプシーによる病理診断を必要に応じて行い診断に努めており、薬物治療やリハビリを行っています。

気管支内視鏡検査は、呼吸器領域で最も汎用され主要な検査です。当院では年間600例を超える検査を施行しており、全国でもトップクラスの検査数となっています。超音波内視鏡やクライオバイオプシーといった最先端の機器を備えています。