脳神経外科・脳卒中科

診療内容

脳神経外科・脳卒中科の入院病床は一般病床50-60床、これに集中治療室(SCU)12床で、年間約1400名の入院患者さんを受け入れています。入院患者さんの内訳は、その約7割を脳卒中が占め、脳腫瘍と頭部外傷が1-2割という内容です。また、脳卒中全体の中では最近の傾向として脳梗塞の患者さんが増加し全体の7割を、2割を脳出血、1割がくも膜下出血(破裂脳動脈瘤)の患者さんとなっています。

手術件数は、2018年は578件が行われ、うち、観血的手術数が401件、血管内手術件数が177件となっています。観血的手術の内訳の主なものは脳腫瘍摘出術が64件、破裂脳動脈瘤手術が21件、未破裂脳動脈瘤手術が22件、内頸動脈内膜剥離術が30件、頭蓋内・外バイパス術が11件、高血圧性脳出血手術が24件です。また脳血管内手術では破裂脳動脈瘤塞栓術が31件、未破裂脳動脈瘤塞栓術が16件、内頸動脈ステント留置術が21件、動静脈瘻が10件です。

特に最近脳梗塞の超急性期治療において新たなエビデンスが確立したのを契機にt-PA投与100件、血栓回収術が88件と飛躍的に治療件数が増加しています。

主な疾患への取り組みについて

くも膜下出血

破裂脳動脈瘤に関しては24時間対応しており、手術によるクリッピング術あるいは専門医による動脈瘤塞栓術(血管内手術)を行っています。また術後に最も問題となる脳血管攣縮に対する治療として脳槽潅流療法を積極的に取り入れ、これまで非常に良好な成績を挙げてきています。

未破裂脳動脈瘤

最近の脳ドックの普及により未破裂脳動脈瘤が発見され、相談に来られる患者さんが増加しています。ISUIAやUCAS Japanなどの結果をふまえ、患者さんが得られる恩恵とリスクを慎重に検討したうえで治療を決定しています。

脳梗塞

脳梗塞の診療は、‘Time is brain.’ という言葉に示されるように迅速な診断および治療の開始が重要です。当院では、一刻も早いt-PA投与及びカテーテル治療をめざし発症4.5時間以内の脳梗塞に対して治療プロトコールを作成し、医師のみではなく全職種が協力して標準化された治療を行い、かつ常に治療手順のブラッシュアップを図っています。現在では来院からt-PA投与までの時間は平均30分以内に行われており、引き続いて行われる血栓回収術までの時間は平均60分以内となり治療開始までの時間が著明に短縮されました。これに伴い閉塞血管の再開通率は、以前は2/3程度でしたが90%近くまで改善されています。また、最近増加傾向にある動脈硬化性の内頸動脈狭窄症に関しては、より客観的な適応決定の下、内頸動脈内膜剥離術と共に内頸動脈ステント留置術も数多く実施しています。さらにもやもや病に対する診断・治療、特に、直接血行再建術にも取り組んでいます。

脳腫瘍

良性腫瘍に関しては基本的に手術的治療を優先し良好な成績が得られております。特に下垂体腫瘍は、鼻腔から内視鏡下で腫瘍摘出を行うことにより侵襲は少なくなり、摘出率も向上しています。当院は内視鏡認定医が5名在籍し、専門外来を設け広く患者さんの受け入れを行っています。一方悪性脳腫瘍については、腫瘍のゲノムタイピングが可能となり、手術、放射線治療、分子標的薬を組み合わせた最新の集学的治療に取り組んでおり、さらなる成績の向上に努めています。

頭部外傷

救急科と協力し24時間緊急手術のできる体制で臨んでおります。最近増加傾向にある高齢者の急性硬膜下血腫に対してはより侵襲が少ない内視鏡を用いた小開頭による血腫除去術を行っています。

その他

三叉神経痛や顔面痙攣に対する機能的手術、産科・新生児科と連携しての先天奇形に対する手術などを実施しています。