産婦人科

早産について

妊娠22-36週の早い時期の出産を早産といいます。早産で生まれた赤ちゃんは未熟なため、合併症のリスクがあります。特に28週未満の早産は超早産とよばれ、新生児死亡や後遺症の可能性も高くなります。
そのため当院では早産予防に力をいれて診療を行っています。以下に当院でのとりくみについてご説明します。

早産リスクセルフチェック

早産リスクセルフチェックリスト

早産予防をめざして、さまざまな早産リスク因子が報告されていますが、早産因子は多岐にわたるため、効率よく予防に生かす方法はまだ確立されていません。また早産の症状が進んでからでは、予防や治療は困難となることが多いです。
まずは妊婦さんご自身が自分の早産リスクや早産の初期徴候について十分理解し、生活上の注意を行いつつ気になる症状があれば早期に受診していただくことで、早産予防につながる可能性があると考えています。

当院の早産予防のとりくみ

とりくみ一覧
当院で行っている流早産予防のとりくみは多岐にわたります。
まず妊婦さんの早産リスクを把握し、慎重に外来管理を行います。そして早産の徴候を早期に発見し、時期を逸しない介入を行います。それにより早産の発症予防や発症時期を遅らせる効果を期待します。また早期に治療を行うことで、妊婦さんへのより負担の軽い治療を目指しています。これらの中には保険適用外の治療もあり、それらは当院の医の倫理委員会の承認を得て施行しています。
早産予防のとりくみを開始した前後で、とくに28週未満の流早産予防の治療成績が向上しています。

子宮頸管縫縮術

子宮頸管不全症(子宮頸管無力症)は、早産の大きな原因の一つになります。当院では、従来の予防的頸管縫縮術にくわえて合成吸収糸を用いた緊急縫縮術を行い、良好な成績を上げています。また従来の子宮頸管縫縮術では治療困難と考えられる難治性の子宮頸管無力症に対して、黄体ホルモン療法との併用や経腹的子宮頸管縫縮術を行い、良好な成績を上げています。

黄体ホルモン(プロゲステロン腟錠)

プロゲステロン腟錠は、早産既往のある方や妊娠中期に子宮頸管長短縮がある方の早産リスクを下げる効果があるとされています。しかし、どのような場合にどのように使用すればよいかについては、まだはっきりと結論は出ていません。当院では、さまざまな報告をもとに以下のように使用しています。保険適用外となりますので、詳しくは外来でお尋ねください。

①予防的投与:妊娠20週前後~36週ごろまで投与(中途終了はさける)

  • 34週未満の自然早産既往
  • 反復自然早産既往(2回以上)で、予防的頸管縫縮術の適応はない場合
    (難治症例では、予防的頸管縫縮術と併用することもあります)
  • 高リスクは15週から開始。それ以外も遅くとも25週までに開始

②治療的投与:妊娠15~25週の頚管長短縮

  • 早産リスクが高い場合 頚管長<25mm
  • 早産リスクが低い場合 頚管長<15~20mm

カルシウム拮抗薬(ニフェジピン)

本邦では切迫流早産予防目的の子宮収縮抑制剤として、塩酸リトドリンと硫酸マグネシウムが使用されています。しかしこれらの薬剤には副作用がある程度の頻度で存在し、重篤な副作用も報告されています。また塩酸リトドリンは投与量が増加すると持続点滴となり、硫酸マグネシウムも持続点滴製剤のため、長期の点滴入院が必要となります。

一方、欧米ではニフェジピンの切迫早産治療効果が注目され、安全性や治療効果も上記両剤に劣らないか、むしろ優れていると考えられています。またニフェジピンは内服薬として治療量が投与できるため、病態が安定すれば外来処方も可能です。保険適用外となりますので、詳しくは外来でお尋ねください。

プロバイオティクス~腸内環境改善による早産予防について

早産に至る大きな原因の一つとして、腟内の細菌環境の異常(細菌性腟症)から生じる子宮の細菌感染(子宮頸管炎、絨毛羊膜炎)があります。いったん感染が起きると、多くの場合その治療はかなり困難となります。そのような異常を予防するためには、全身の細菌環境を整えておくことが大切と考えられており、例えば口腔内の衛生環境が悪いと(虫歯、歯周病など)早産リスクが高くなることが指摘されています。

また近年、腸内の細菌そうを整えることが、早産の予防につながる可能性も示されております。腸内細菌そうを整える効果がある薬剤や食品は多数ありますが、なかでもプロバイオティクス(ビオスリー配合錠など)やラクトフェリンなどが、早産予防に有望視されています。

外来受診のご案内

初診の方、治療方針の相談など
月曜(午前、午後) 担当医:福原 健
金曜(午前、午後) 担当医:清川 晶、田中 優
妊婦健診、フォロー外来
火曜(午前) 担当医:清川 晶
木曜(午前) 担当医:田中 優
金曜(午前) 担当医:福原 健

※外来予定日は、予告なく変更になることがありますので、事前にご確認ください。

参考文献、学会発表など

1) 当院で出生した超早産児の長期予後と関連因子の解析~3歳時検診を中心に (論文)
倉敷中央病院 産婦人科
福原 健, 大石 さやか, 矢内 晶太, 伊尾 紳吾, 桐野 智江, 福永 文緒, 堀川 林, 村上 幸祐, 上田 あかね, 大塚 由有子, 加計 麻衣, 内田 崇史, 中堀 隆, 高橋 晃, 長谷川 雅明
現代産婦人科(1882-482X)61巻2号 Page145-149(2013.06)

2) 妊婦セルフチェック表を利用した超早産予防の試み (学会発表)
倉敷中央病院 産婦人科
福原 健, 伊尾 紳吾, 上田 あかね, 村上 幸祐, 須山 文緒, 大塚 由有子, 内田 崇史, 長谷川 雅明
日本周産期・新生児医学会雑誌(1348-964X)49巻2号 Page666(2013.06)

3) 治療困難症例から学ぶ 妊娠中期までの流早産を反復した症例の検討 (論文)
倉敷中央病院 産婦人科
内田 崇史, 長谷川 雅明
日本周産期・新生児医学会雑誌(1348-964X)50巻1号 Page141-143(2014.05)

4) 0.8mmの合成吸収糸による子宮頸管縫縮術の有用性と安全性の報告 (論文)
倉敷中央病院 産婦人科
福原 健, 矢内 晶太, 伊尾 紳吾, 桐野 智恵, 村上 幸祐, 上田 あかね, 内田 崇史, 中堀 隆, 長谷川 雅明
産婦人科の実際(0558-4728)62巻11号 Page1553-1559(2013.11)

5) 羊水中IL-6値による組織学的CAM及び臨床的予後についての検討 (論文)
倉敷中央病院 産婦人科
桐野 智江, 重田 護, 大石 さやか, 矢内 晶太, 伊尾 紳吾, 上田 あかね, 村上 幸祐, 大塚 由有子, 内田 崇史, 福原 健, 中堀 隆, 高橋 晃, 長谷川 雅明
現代産婦人科(1882-482X)62巻2号 Page239-243(2014.04)

6) 当院における超早産予防のとりくみ 妊娠12~27週の切迫流早産入院症例の治療成績の検討 (論文)
倉敷中央病院 産婦人科
福原 健, 山本 彩加, 池田 真規子, 植田 彰彦, 重田 護, 近藤 さやか, 矢内 晶太, 伊尾 紳吾, 河原 俊介, 上田 あかね, 大塚 由有子, 内田 崇史, 中堀 隆, 高橋 晃, 長谷川 雅明
現代産婦人科(1882-482X)63巻2号 Page231-236(2015.05)

7) 子宮頸管に交通のある重複子宮に生じた難治性頸管無力症に対し経腹的頸管縫縮を行い成熟児を得た1例 (論文)
倉敷中央病院 産婦人科
高口 梨沙, 福原 健, 稲葉 優, 池田 真規子, 山本 彩加, 上田 あかね, 河原 俊介, 中堀 隆, 本田 徹郎, 長谷川 雅明
産婦人科の実際(0558-4728)65巻12号 Page1703-1707(2016.11)

8) 0.8mmの合成吸収糸による予防的頸管縫縮術(McDonald法)の報告
倉敷中央病院 産婦人科 (論文)
河原 俊介, 福原 健, 高口 梨沙, 稲葉 優, 池田 真規子, 山本 彩加, 上田 あかね, 中堀 隆, 本田 徹郎, 高橋 晃, 長谷川 雅明
現代産婦人科(1882-482X)65巻2号 Page275-278(2017.05)

9) 合成吸収糸による治療的頸管縫縮の予後因子についての検討 (学会発表)
倉敷中央病院 産婦人科
安井 みちる, 福原 健, 西村 智樹, 井上 彩美, 池田 真規子, 山本 彩加, 上田 あかね, 河原 俊介, 長谷川 雅明
日本周産期・新生児医学会雑誌(1348-964X)53巻2号 Page655(2017.06)

10) 当院での切迫早産に対するニフェジピン使用についての検討 (学会発表)
倉敷中央病院 産婦人科
井上 彩美, 福原 健, 西村 智樹, 安井 みちる, 池田 真規子, 山本 彩加, 上田 あかね, 河原 俊介, 長谷川 雅明
日本周産期・新生児医学会雑誌(1348-964X)53巻2号 Page655(2017.06)

11) 当院のプロゲステロンによる早産予防治療の検討 (学会発表)
倉敷中央病院 産婦人科
荒武 淳一, 福原 健, 赤松 巧将, 黒田 亮介, 加藤 爽子, 西川 貴史, 西村 智樹, 原 理恵, 安井 みちる, 田中 優, 障子 章大, 黒岩 征洋, 清川 晶, 中堀 隆, 本田 徹郎, 長谷川 雅明
現代産婦人科(1882-482X)67巻Suppl. Page S77(2018.09)

12) Maternal Glucocorticoids Make the Fetal Membrane Thinner: Involvement of Amniotic Macrophages. (論文)
Department of Gynecology and Obstetrics, Kyoto University Graduate School of Medicine
Kiyokawa H, Mogami H, Ueda Y, Kawamura Y, Sato M, Chigusa Y, Mandai M, Kondoh E.
Endocrinology. 2019 Apr 1;160(4):925-937. doi: 10.1210/en.2018-01039.

13) 当院で経腹的頸管縫縮を施行した3例の報告 (学会発表)
倉敷中央病院 産婦人科
福原 健, 西村 智樹, 寺林 博之, 藤塚 捷, 黒田 亮介, 中村 しほり, 舩冨 爽子, 小嶋 一司, 西川 貴史, 原 理恵, 田中 優, 障子 章大, 黒岩 征洋, 清川 晶, 楠本 和行, 中堀 隆, 本田 徹郎, 長谷川 雅明
現代産婦人科(1882-482X)68巻Suppl. Page S57-S58(2019.09)

14) 妊娠中の高用量ステロイドは卵膜を脆弱化する (論文)
京都大学 大学院医学研究科器官外科学婦人科学産科学
最上 晴太, 清川 晶, 上田 優輔, 千草 義継, 近藤 英治, 万代 昌紀
産婦人科の進歩(0370-8446)72巻4号 Page361-364(2020.10)

15) 組織学的絨毛膜羊膜炎の予測因子の検討 (論文)
倉敷中央病院 産婦人科
西川 貴史, 長谷川 雅明, 黒田 亮介, 舩冨 爽子, 西村 智樹, 原 理恵, 清川 晶, 楠本 知行, 福原 健
日本周産期・新生児医学会雑誌(1348-964X)56巻3号 Page437-444(2020.12)

16) 羊水バイオマーカーによる妊娠延長期間および分娩週数予測の検討 (論文)
倉敷中央病院 産婦人科
西川 貴史, 長谷川 雅明, 黒田 亮介, 赤松 巧将, 荒武 淳一, 露木 大地, 西村 智樹, 原 理恵, 田中 優, 伊藤 拓馬, 楠本 知行, 福原 健
日本周産期・新生児医学会雑誌(1348-964X)57巻3号 Page457-464(2021.12)

17) 当院における子宮頸管不全症に対する治療的頸管縫縮術とプロゲステロン療法の治療成績の検討 (学会発表)
倉敷中央病院 産婦人科
福原 健, 長谷川 雅明, 藤塚 捷, 黒田 亮介, 原 理恵, 西村 智樹, 田中 優, 楠本 知行, 中堀 隆, 本田 徹郎
日本産科婦人科学会雑誌(0300-9165)74巻臨増 Page S-577(2022.02)

18) Betamethasone use and risk factors for pulmonary edema during the perinatal period: a single-center retrospective cohort study in Japan.  (論文)
Department of Obstetrics and Gynecology, Kurashiki Central Hospital
Nishikawa T, Fukuhara K.
BMC Pregnancy Childbirth. 2022 Aug 12;22(1):636. doi: 10.1186/s12884-022-04918-2.

19) 双頸双角子宮の頸管無力症に対して経腹的頸管縫縮術を施行した2例 (学会発表)
倉敷中央病院 産婦人科
福原 健, 田中 優, 黒田 亮介, 原 理恵, 西村 智樹, 伊藤 拓馬, 堀川 直城, 清川 晶, 楠本 知行, 中堀 隆, 長谷川 雅明, 本田 徹郎
日本産科婦人科学会雑誌(0300-9165)75巻臨増 Page S-406(2023.02)

20) 妊娠中の子宮頸管ポリープ切除に関する後方視的検討 (学会発表)
倉敷中央病院 産婦人科
福原 健,深江 郁,田中 優,西村 智樹,加藤 慧,清川 晶,楠本 知行,中堀 隆,長谷川 雅明,本田 徹郎
第16回 日本早産学会 2023.12.9

21) 当院における早産既往症例の反復早産予防のとりくみ (学会発表)
倉敷中央病院 産婦人科
深江 郁、平松 桜、山中 智裕、中野 秀亮、手塚 聡、杉山亜未、戸田 愛理、黒田 亮介、門元 辰樹、田中 優、澤山 咲輝、清川 晶、堀川 直城、楠本 知行、中堀 隆、本田 徹郎、長谷川 雅明、福原 健
第17回 日本早産学会 2024.11.2