麻酔科

診療内容

麻酔

倉敷中央病院は全国でもトップクラスの手術件数を誇ります。当院の手術室は局所麻酔の手術部屋を含めると29室あり、2つの病棟に分かれて運営されています。そのうち心臓手術が行える手術室はハイブリッド手術室を含めて4室あります。

2019年1月から12月までに当院で行われた全手術件数は12,318件です。内、麻酔科管理手術症例6,184件の内訳は以下のとおりです。

開頭 222件
開胸 407件
心臓・大血管 708件
開胸+開腹 21件
開腹 2,032件
帝王切開 289件
頭頸部・咽喉頭 1,033件
胸壁・腹壁・会陰 203件
脊椎 459件
四肢 772件
その他 38件
合計 6,184件

当院は日本麻酔科学会の麻酔専門医研修基幹施設となっています。

2020年5月現在、麻酔科には、常勤20名、非常勤3名が在籍しています。後期研修医は7名(非常勤含む)、麻酔科専門医は14名(非常勤含む)です。

当院では、初期研修1年目は麻酔科の1ヶ月の研修が必須であり、全身管理の基本を全研修医に教育します。全身管理に興味がある場合は、初期研修2年目に、追加で1~2ヶ月程度の研修を行っています。

後期研修医1年目では、一般外科、整形外科、脳外科、産婦人科、呼吸器外科などの症例をまんべんなく研修し、全身麻酔のみならず、硬膜外麻酔や脊髄くも膜下麻酔などの区域麻酔に加え、体幹や腹壁、四肢の神経ブロックの研修を行います。成長に応じてさらに重症症例の麻酔管理を担当してもらいます。後期研修1年目の後半から2年目には、心臓血管麻酔に加えて経食道心エコーの研修を行い、3年目からはICUの当直に入ります。現時点では手術症例が大変多く、すべての手術を麻酔科で管理することができないため、各科からのサポートを受けながら手術症例をこなしています。

麻酔科管理手術症例のうち、約20%が緊急手術となっています。緊急手術を含め深夜にまで及ぶ手術も多く、麻酔科医への負荷も大きいですが、当直・拘束後の早退などを行い、できる限り長時間労働にならないよう対応しています。

周術期管理チーム(Perioperative Management Team: PMT)

高齢化社会を反映し、65歳以上の患者さんが約半数を占めています。心不全、虚血性心疾患、COPD、脳梗塞、腎不全、悪性疾患などの併存症をもつ患者さんの麻酔は特に難しく、高度の技術と幅広い知識が要求されます。

当院では、2011年の冬に周術期管理チーム(Perioperative Management Teamを略して“PMT”と呼んでいます)を立ち上げました。スタッフは、麻酔科医、手術室看護師(認定看護師を含む)、集中ケア認定看護師、外来および入退院支援室看護師、薬剤師、歯科(歯科医、歯科衛生士)、事務(手術室、外来、病棟)、医師診療支援課、情報システム課など、多くの職種から構成されています。

PMTの主な役割は、

  • 病歴、既往歴のチェック
  • 術前検査データと画像チェック
  • 口腔衛生、関節可動域などの身体状況のチェック
  • 手術オリエンテーション、休薬指導、禁煙指導、疼痛コントロールの指導
  • 麻酔前の実際の診察と詳細な麻酔前評価の作成
  • これらの情報を手術に関わるスタッフへ周知

 

などです。多用な患者さんが抱える個別的な問題を見落とすことなく、可能な限り安全な手術が行えるようにすること、服薬チェックができていなかったための手術延期を発生させないこと、患者さんの不安を取り除くことがPMTの目的です。

集中治療

1975年、当院に初めて集中医療センター(ICU/CCU)が創設されました。現在は、麻酔科管理のICU以外に、CCU-C(循環器内科疾患)、CCU-S(心臓血管外科疾患)、EICU(外傷を中心とした救急疾患)、SCU(脳外科・脳卒中疾患)と分かれ、それぞれが専門領域の重症患者の治療に当たっています。ICUは、診療科に関係なく、術後管理、院内急変疾患管理、小児重症管理などを行っています。2019年1月から12月の新規入室患者さんは933人でした。

心肺蘇生、ショック治療、緊急気道確保、呼吸管理などは麻酔科医が得意とする分野であり、集中治療領域は麻酔科医の知識や技術が大きく活かされる場でもあります。麻酔科医(集中治療専門医4名含む)がICU専従医として常駐し、さらに内科医や外科医、他各科担当医、シニアレジデント、ジュニアレジデントなどが加わり、活発な議論のもと治療を進めています。ICUの研修実習は、後期研修2年目から2ヶ月程度行う予定です。

ペインクリニック(疼痛外来)

ペインクリニックでは、慢性疼痛を中心とした診療を行っています。疾患としては、帯状疱疹痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、腰痛、頚椎捻挫、頚椎症性神経根症などが中心となります。これらに対して薬物治療、神経ブロックなどを行っています。また、ペインクリニック専門医の一人が、緩和ケア科医師と共同し、癌性疼痛に対応しています。現時点では研修医に対して、ペインクリニックの研修は行っていません。

麻酔の種類

麻酔科は、手術室における手術中の麻酔管理と、周術期の全身管理を担当します。
手術前に検査を行い、患者さんお一人お一人にあった麻酔を検討・選択します。
対応する手術は日帰り手術から長時間におよぶ大きな手術まで幅広く、麻酔科医師一同万全を重ねて手術に臨んでいます。

全身麻酔

全身麻酔薬には吸入麻酔薬と静脈麻酔薬がありますが、多くの場合二つを併用します。全身麻酔中の呼吸を補助する方法として、気管内挿管、喉頭マスク、フェイスマスクなどがあります。
局所麻酔が全身麻酔に併用されることも多く、とくに全身麻酔と硬膜外麻酔を併用すると術後の痛みが少なくなるので、最近は積極的に併用されています。
手術部位、手術時間、患者さんの状態などによって、最適な麻酔法を選ばせていただきます。
顔面、頭部、頚部、背部の手術、心臓、肺の手術、開腹手術などでは気管内挿管による全身麻酔が選択されます。危険性の高い手術に望まれる患者さんにも気管内挿管が行われます。

麻酔中の手技について

気管内挿管麻酔の際には、喉頭鏡という器械を用いて患者さんの気管に口からチューブを挿入します。 このとき操作によって唇に切り傷がついたり、ぐらぐらしている歯が抜けることがあります。チューブがのどの奥まで挿入されるため、術後にのどの痛みを感じることがありますが、数日で消失します。数千人に1例の割合で数か月間、声のかすれが残ることがあります(半回神経麻痺といいます)。

局所麻酔

末梢神経ブロック

脊髄から枝分かれした末梢神経は筋肉の間などを通って、全身に分布していきます。この枝分かれした神経に麻酔を行うことで、その神経の分布している領域だけに麻酔をきかせることができます。例えば腕に分布する神経は首の表面近くを通っていますので、ここで麻酔を行うと、片腕の感覚を麻痺させ、力が入りにくい状態になります。
短時間の手術であれば、末梢神経ブロックのみでも手術が可能ですが、比較的時間のかかる手術の場合、手術中じっとしていなければならない等の苦痛を伴いますので、全身麻酔に併用していただくことが多いです。またブロックを行う神経によっては細い管(カテーテル)を神経の近くに入れて、局所麻酔薬を持続して注入していく場合もあります。この場合、局所麻酔薬を注入している間ずっと麻酔が効いている状態になります。

末梢神経ブロックができない患者さん

ブロックを行う皮膚・皮下の感染症、ブロックを行う神経の障害が事前に明らかな場合、重症糖尿病、重度の出血傾向、上肢(腕)のブロックでは呼吸機能の低下している患者さんや、嗄声(声嗄れ)のある患者さん。 カテーテルを留置する場合は、患者さんのご協力が得られないとき。

脊椎麻酔

脊髄は背骨の奥の脊柱管という中の脳脊髄液という液体の中に浮いています。脊椎麻酔は局所麻酔薬を脳脊髄液の中に注入することにより、脊髄から出ている知覚神経と運動神経が麻痺されることによって完成されます。手術中に患者さんは意識が保たれたまま痛みはなく、筋肉も動きにくい状態です。一般に脊椎麻酔は短時間の下腹部、会陰部、下肢の手術の麻酔に用いられます。

硬膜外麻酔ができない患者さん

脊椎の術後、脊椎(脊髄)腫瘍、後縦靭帯骨化症、皮膚の感染症、出血傾向、小児、重症糖尿病、患者さんのご協力が得られないとき。

硬膜外麻酔

硬膜外麻酔は局所麻酔薬が細い管を通して脊髄の外側にある狭い硬膜外腔に注入されることにより、脊髄から出ている知覚神経と運動神経が麻酔されます。手術中に患者さんは意識が保たれたまま痛みはなく、筋肉も動きにくい状態です。
一般に硬膜外麻酔は、短時間の下腹部、会陰部、下肢の手術の麻酔に用いられます。

硬膜外麻酔ができない患者さん

脊椎の術後、脊椎(脊髄)腫瘍、後縦靭帯骨化症、皮膚の感染症、出血傾向、小児、重症糖尿病、患者さんのご協力が得られないとき。

麻酔に関する注意事項

偶発合併症

どんな麻酔であっても、ひとたび麻酔が開始されると予測もできない偶発合併症が発生することがありますが、麻酔科医は適切に対処いたします。
気がかりなことやご不明な点がありましたら、手術前夜に病室まで訪問する担当麻酔科医に遠慮なくおたずねください。

全身麻酔(気管挿管麻酔)

麻酔中の循環器系の偶発合併症としては、血圧低下、徐脈、不整脈、ショックなどがあります。呼吸器系の偶発合併症としては、無気肺(とくに肥満の方、喫煙される方、肺に障害がある方)、胃内容物の誤嚥(緊急手術の方、術前の絶食ができていない方)、気管支痙攣(とくに喘息のある方)などがあります。
さまざまな薬剤によって、ショックになることがあります。悪性高熱症という遺伝疾患で、全身麻酔により体温が異常に上昇して危険な状態におちいることがあります。
手術中はさまざまな偶発合併症が起こることがありますが、麻酔科医は患者さんの枕元を片時も離れず、全身状態を監視しますので、ご安心ください。
長時間の手術、大手術、あるいは患者さんの状態により、持続的に血圧を監視するために、手の動脈にカテーテルを留置させていただきます。この手技の偶発合併症として血腫と神経損傷があります。
大手術のときは、術中と術後管理のために、頚部または鎖骨の近くの太い静脈に向かって中心静脈カテーテルまたは肺動脈カテーテルを挿入します。この手技の偶発合併症としては気胸、血胸、血腫などがあります。

末梢神経ブロック

末梢神経ブロックに伴う偶発合併症としては、神経損傷(針やカテーテルによる直接損傷、局所麻酔薬や結集による神経の圧迫)、出血(特に神経が血管の近くを走行している場合)、局所麻酔薬中毒、局所の細菌感染、カテーテル断裂などがあります。
またブロックを行う場所に応じて、気胸(肺に針が当たった場合)、腹腔内穿刺(腹部のブロック)などもあります。

硬膜外麻酔

硬膜外麻酔にともなう偶発合併症としては、誤ってクモ膜下腔を穿刺したときに、術後の頭痛、脊髄損傷(穿刺針による直接損傷、血腫による脊髄の圧迫)、神経根損傷(穿刺針が直接神経に触れることによる足のしびれなど)、細菌感染による硬膜外膿瘍、カテーテル断裂などがあります