放射線診断科
概要
部門 | 業務内容 |
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画像診断 | 一般撮影、消化管(胃・小腸・大腸)透視、CT、MR |
核医学部門 | RI検査(SPECT-CT含む)、PET-CT |
IVR | アンギオ、生検、ドレナージ |
放射線診断科は画像診断部門、核医学部門、血管造影・IVR部門から構成されています。このうち画像診断部門、核医学部門は外来診療と入院患者の診療を行い、血管造影・IVR部門は主に他科入院患者の診療にあたっています。人員・陣容、検査機器、検査内容、件数、いずれも日本のトップクラスです。
画像診断部門では診療内容が変貌し、画像診断読影業務と地域連携による紹介患者の検査診断診療に専念しています。これまでは、画像診断センターと一体となって検査から診断まで一連の流れの診療を行っておりましたが、2013年1月以降、検査の施行・運営は画像診断センター所管業務として分離され、放射線診断科は最終段階の読影を中心に業務展開する、当院独特の運営形態となっております。
核医学部門では、PET-CT検査の充実とともに、SPECT-CTも加え質の高い画像診断を提供するとともに、RIを用いた治療(各種RI内用療法)についても充実したいと考えています。
血管造影・IVR部門では、予約検査、緊急検査双方に対応すべく体制を整えています。
沿革
歴代の課主任 | |
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早野 常雄 | 大正12年 ~ 昭和4年 |
宇埜 俊治(兼) | 昭和4年 ~ 昭和14年 |
立入 弘 | 昭和14年 ~ 昭和30年 |
石口 修三 | 昭和30年 ~ 昭和33年 |
三浦 貴士 | 昭和33年 ~ 昭和37年 |
重康 牧夫 | 昭和37年 ~ 平成4年 |
渡邊 祐司 | 平成4年 ~ 平成26年 |
小山 貴 | 平成26年 ~ |
倉敷中央病院は、設立当時から京都大学と強い関係を保っていますが、放射線科に関しては大阪大学からの医師派遣でスタートしました。
3代目にあたる立入弘先生は胸部レントゲン写真の専門家で、16年間科主任をつとめられた後、長崎大学の放射線科教授を経て母校、大阪大学の放射線科教授になられました。4代目石口先生、5代目三浦先生も科主任をつとめられた後、それぞれ岐阜大学と兵庫医科大学の放射線科教授になられました。
そして、重康先生が長く科主任をつとめられた後、1992年当時の三宅康夫院長の要請により、京都大学からの派遣が始まりました。現在では、学閥を越えて幅広く人材をもとめ、さまざまな出身大学の放射線科医師が在籍しています。
近代化の歴史と新規事業への取り組み
大正12年 | ドイツに赴きシーメンス社装置を購入 Ra針 70.1mCi 購入 |
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昭和24年 | Ra針紛失 京大の応援で発見 | |
昭和35年 | 600Ci テレコバルト装置を設置 | |
昭和39年 | X線テレビ装置を設置 | |
昭和41年 | RI検査を開始 | |
昭和43年 | テレコバルト装置 2000Ciに更新 | |
昭和44年 | X線テレビ装置を増設 | |
昭和46年 | 血管撮影装置を設置 | |
昭和47年 | ガンマカメラを設置 | |
昭和50年 | 第1棟完成 | |
昭和52年 | ガンマカメラを増設 RIセンターが開設 |
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昭和53年 | 全身用CT装置を設置 RI検査にコンピュータを導入 |
会計オンラインサービス開始 |
昭和54年 | Ra針紛失 焼却炉等で発見 | |
昭和55年 | 放射線科の移転 一般撮影装置の更新と増設 血管撮影装置の更新と増設 全身用CT装置の移設と頭部用CT装置の増設 X線テレビ装置の更新と増設 |
検査棟完成 |
昭和58年 | 頭部用CT装置を全身用CT装置に更新 | |
昭和60年 | 全身用CT装置を更新 | |
昭和62年 | DSA装置を設置 ガンマカメラをSPECT装置に更新 |
保健管理センター開設 |
平成2年 | ガンマカメラをSPECT装置に更新 | |
平成3年 | MR装置を設置 CT装置を更新 |
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平成4年 | リニアック装置とラルストロン装置を設置 骨塩定量装置を設置 パノラマ装置を更新 |
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平成5年 | 一般撮影装置3台を更新 | |
平成6年 | パノラマ装置をCR対応に改造 | |
平成7年 | MR装置を増設 FCR装置を設置 乳房撮影装置を設置 ガンマカメラを三検出器装置に更新 CT装置の移設、更新、増設 |
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平成8年 | MR装置を増設 FCRとのID情報接続 |
オーダリングシステムが稼動 |
平成9年 | 画像ファイリングとレポートシステムを導入 胸部撮影室を分割して増設 起倒式高速断層撮影装置を設置 |
病院機能評価に合格 |
平成12年 | MR装置を増設 救急センターに4列MDCT装置を設置 |
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平成13年 | SPECT装置を三検出器装置に更新 | |
平成14年 | MR装置0.5テスラを1.5テスラに更新 CT装置を4列MDCT装置に更新 |
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平成15年 | RISシステムを導入 FCR装置を増設 移動形X線装置2台を増設 CT装置を16列MDCT装置に更新 |
電子カルテシステムが稼動 |
平成16年 | MR装置を増設 リニアック装置を増設 |
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平成17年 | 循環器血管撮影装置の移設と増設 X線テレビ装置2台を平面検出器搭載装置に更新 救急センターの4列MDCT装置を16列に更新 所見レポーティングシステムを拡張 |
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平成18年 | 放射線センター 改修 in vitro検査を廃止しPET-CT装置を設置 血管撮影装置を廃止しIVR-CT装置を設置 FCRデジタルマンモグラフィ処理装置を設置 X線骨密度測定装置を更新 64列MDCT装置を増設 |
造影剤副作用カード運用開始 |
平成19年 | 64列MDCT装置を増設 4列MDCT装置を移設 |
PACS、フィルムレス開始 |
平成20年 | PACSサーバー、RISサーバーを冗長化 MRI装置を増設 |
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平成21年 | リニアック装置を更新 RALS装置をイリジウムに更新 一般撮影装置、2台を更新 |
CT、MRI、RI検査のウエブ予約を開始 |
平成22年 | 入院専用一般撮影装置を設置 | |
平成23年 | 治療計画CT装置を更新 RI・PET/CT検査室の移転 PET/CT装置を増設 SPECT/CT装置、2台を設置 |
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平成25年 | 放射線科と放射線センターの分離運営の開始 |
PACSとレポーティングシステム
当院では2007年5月から病院全体であらゆる検査画像をモニター端末で閲覧するシステム(PACS)を開始しました。
従来は、検査画像をフィルムに焼き付け、それをシャーカステンとよばれるバックライトで観察していましたが、このPACSシステムの整備に伴いフィルムを使用しなくなりました(フィルムレス)。画像をフィルムに焼き付け、フィルムを搬送する業務が不要になりましたので、検査画像を検査直後に各科のモニター端末で観察できるようになりました。
概略図
構成図
しかし、CT(多列化、高速化)やMR(高速化)の機能向上にともない、画像の撮像コマ数が驚異的に増加し、あふれかえるほどの画像データに臨床現場が混乱しています。そこで画像検査の結果をレポートするのに、重要な画像のコマをキー画像と称してレポートに添付しています。すなわち画像データを整理編集する機能で、レポーティングシステムと呼んでいます。
レポーティングシステムには、レポート作成機能とレポート閲覧機能があります。臨床現場ではレポート閲覧機能を用いて、画像の示す病変や病気の重症度などを示したレポートを簡単に閲覧できます。また、このレポート閲覧機能には時系列表示が組み込まれていますので、患者さんに病気の改善、悪化などが一目で分かるような画像表示ができるようになっています。
興味のある医療関係者の方は一度ご覧になってください。
1995年-2010年の歩み
近年の放射線医学の進歩はめざましく、とくに高速高磁場MR、マルチディテクターCT、PET/CTの出現により、画像診断の世界は大きな変貌をとげています。
MRでは、1995年に高磁場(1.5T)MR装置を導入後、ほぼ2年おきにMR装置を増設し、2013年3月現在合計6台の1.5T MR装置が稼働しています。このMR装置を用いて脳脊髄や関節領域だけでなく、体幹部にも高解像度の世界を日常的に展開しています。
特に力を注いできた領域は、眼科領域、慢性関節リウマチ、頸動脈プラーク、肝胆膵、前立腺、精巣、子宮卵巣、肺腫瘍、造影MRAなど多岐にわたり、高画質高精度のMR画像診断を提供してきました。
CTでは、2000年のマルチディテクターCT(4列)の導入を契機に、現在では64列マルチディテクター(MD)CTを中心に、日常的に㎜の世界を展開しています。このMDCTの高速性は高精度の動態撮像をもたらし、造影剤を用いた血管撮像、臓器の血流評価や血管内腔を可視化することを可能にしています。
核医学では、PET/CTを2006年に導入、2011年に増設し、現在2台のPET/CTが稼働しています。PET製剤FDGの商用供給を利用し、悪性腫瘍の診断において広く活用されています。
一般核医学では、2011年にSPECT/CTを導入し、SPECTで検出した異常部位を同時撮像したCT画像で確認できるようになりました。内分泌系や骨などの診断に威力を発揮しています。
このような画像診断機器の進歩は、医療現場に大きな恩恵をもたらした一方で、これらに携わる放射線診断医の負担は増大し続け、読影業務を行う放射線科医に大変困難な状況をもたらしました。検査あたりの読影画像コマ数が急増し、従来のフィルム読影では、1検査あたり500枚を越えるコマ数の読影を行うことは困難でした。このような状況を打破するために着手したのがPACSです。
PACSへの道のりは長く、まずCT、MR画像のデジタルファイリングと読影レポートシステムに着手したのが1997年です。その後単純撮影をデジタル化するため、一般撮影室にFCRを導入、透視装置をDRに更新、マンモグラフィーもFCRでデジタル化し、PACSの基盤を整えました。2002年には放射線検査情報を管理するシステムRISを導入整備し、2007年5月からPACSを本格稼働させ、病院全体で画像をモニター端末で閲覧するシステム(PACS)を開始しました。
当初はすべての画像を含む予定でしたが、賛同の得られない一部を除いて、放射線科・センター領域、内視鏡センター(消化器、呼吸器)、中央検査部US、保健センター部門の画像でスタートしました。
現在はその範囲を大きく展開していますが、検査数と画像枚数の著明な増加と、アクセス数と時間の著増にともない、2008年にまずPACS、RISサーバーを冗長化、2011年にPACSサーバーを更新、容量を拡充させました。このようにして院内の放射線検査、画像、システムの近代化を押し進めてきました。
同時に、地域医療機関との連携においても着々と近代化をすすめています。
地域医療機関からの検査の請負は、従来、Faxで他院から検査依頼を受け、読影結果を郵送していました。が、院内のPACSと読影システムの環境整ったのを機に、2009年からインターネット予約を開始しました。これにより、他院からは当院の営業時間外でも予約が可能となり、紹介状も同時に作成できるようになりました。検査結果もオンラインで閲覧できるようになり、他院にとって利便性が向上しました。
現在ではこのインターネット予約システムの利用が、他院からの依頼検査の半数をはるかにこえる状況にまで使われるようになりました。
このような院内、院外の環境下で、いまなお放射線科読影医の負担は増大し続けています。今後は、ワークステーションを活用して大量の画像を短時間で読影処理できる読影技術の確立を模索して行く必要を感じています。
IVR部門では、カテーテルの改良に伴い、小血管の選択性が向上しました。また、塞栓物質や金属コイルの多様化により癌や出血に対する血管塞栓術を最適の塞栓物質を用いて病的血管のみに施行できるようになりました。そしてIVR医の高度な技術と判断力が、安全性、確実性、成功率を高く保っています。血管内のIVRだけでなくCT下生検、膿瘍ドレナージなどを行い、低侵襲医療の大きな役割を担っています。
放射線科関連業務の取り組みとして全国展開しているものが、当院放射線科オリジナルの<造影剤副作用カード>です。 造影剤を用いる検査では約1-2%に造影剤の副作用がおこります。過去に造影剤の副作用の既往のある患者さんに造影剤を使用することは、命に関わる重大な事象に陥る危険性があります。それを防ぐのがカードの目的です。 <造影剤副作用カード>を患者が保管することで、副作用のリスク対策に、患者自身が参加する、いわば医療提供者と患者の共同作業です。今では、このカードは日本放射線科専門医会が発行管理し、全国規模で使用されています。 放射線医療の今後の展開として、再生医療をはじめとした医療の発達とともに放射線診療そのものが大きく変貌する可能性があります。そのことをにらみつつ、放射線診療を的確に医療に活かすために、放射線科医が日々切磋琢磨し個々の知識と技術を高めることが将来の放射線診療の展開に不可欠であると思います