Knews No.38 HEALTHY LIVING

てんかんのはなし

森  仁 
脳神経内科 医長
日本内科学会総合内科専門医、指導医
日本神経学会専門医、指導医
日本頭痛学会専門医、指導医
日本てんかん学会専門医
日本宇宙航空環境医学会宇宙航空医学認定医
日本臨床神経生理学会脳波分野専門医
日本臨床神経生理学会筋電図・神経伝導分野専門医
Movement Disorder Society associate member

てんかんはどのような症状ですか?

 実は、これが一番難しいことですが、最も大事なことです。脳の異常な活動によって起こる一過性の症状が、てんかんの症状(発作)です。同一の症状が繰り返されます。

意識がなくなる・記憶にぽっかりと穴があく・性格が変化する・口をもぐもぐと動かす・一点を見つめる・目を見開く(閉眼することはまれ)・白眼をむく・頭をひねって回転する・見えないはずのものが見える・聞こえないはずの音が聞こえる・胃のあたりがこみあげるような感じがする・懐かしいような
感覚、景色が頭の中に入ってくる・手足が勝手に動く・手足が動かなくなる・言葉を理解できなくなる・言葉が出なくなる・頭痛がする・口の中を怪我する・筋肉痛を感じる・一過性の物忘れ

など多彩です。お気づきでしょうか、そう、「けいれん・ひきつけ」がてんかんの代表的な症状とは限らないことです。さらには、「けいれん」の原因がてんかんでないこともしばしばあります。例えば、大人の側頭葉てんかんの場合は、認知症と考えられてしまい、てんかんと気づかれないことがしばしばあります。

てんかんの原因は何ですか?

 原因は多彩です。脳の構造異常を生じるあらゆる疾患が原因となります。

かかりやすいのは男女どちらですか、発症しやすい年齢は?

 男女同程度です。てんかんは、100人に1人の患者がいらっしゃる、「ありふれた」病気です。子供と高齢者が多く、80歳以上に至っては小児より発病率が高いことも特徴です。決して子供だけの病気ではありません。成人から発症するてんかんも普通です。

てんかんは治る病気ですか?

 治る場合と治らない場合があります。治らない場合でも、内服薬によって事実上の発作ゼロを実現できる場合もあります。ずっとつきあっていかないといけない病気です。

てんかんはどのように診断しますか?

 診断の手順を図1に示します。診察・問診がすべてです。てんかん発作にかかわる情報を徹底的に集めます。本人が気づいていないこと、家族が気づいていないことがしばしばあるので、国際抗てんかん連盟(ILAE)の基準に基づき、系統立てて医師から質問します。てんかんかもしれないと思い、的確な質問ができるかが、専門医の腕の見せ所です。その次に脳波検査(図2)を行いてんかんに特徴的な結果が出ているかを確認します。発作の動画記録があるとなおよいです。ぜひ、家族が発作を動画記録してください(スマホで十分)。診断はここまでで確定します。頭部MRIなどの検査は、原因究明や治療方針決定のために行います。頭部MRI検査ではてんかんの診断ができません。脳波検査は奥が深く、「その目で見ないと」異常があっても異常を見抜けません。

図1.てんかんの診断手順

図2.脳波記録場所

 

倉敷中央病院ではどのような治療を行いますか?

表1.昔ながらのてんかん分類法
特発性局在関連性(部分)てんかん 特発性全般てんかん
症候性局在関連性(部分)てんかん 症候性全般てんかん

 表1のようにどのタイプのてんかんに属するかを決めます。次にそれぞれのタイプで一番効果があるとされる、発作を抑える内服のお薬を処方します。患者さんにとって最適な薬を見つけるまで根気よく本人・家族と相談して決定します。どの薬を使うかは、医師によって意見が異なることがよくあります。正解は1つではありません。てんかん外科による焦点切除術、迷走神経刺激装置の挿入などが必要となれば、てんかん外科を施行することができる施設へ紹介しています。てんかんを専門にする2名の医師から最大限、専門的な医療を提供していきます。

てんかんはどの診療科を受診すればいいですか?

 病院によっててんかんを診療する科は違います。ありふれた疾患なのに、てんかん専門医が少なすぎることも診療科が決まらない一因です。一般的には脳神経外科、脳神経内科、精神科の一部の先生が成人てんかんの診療をしています。小児のてんかんは、小児科が診ています。15歳以上のてんかん患者は、当院では脳神経内科が中心に診ています(中学生の患者は原則小児科です)。脳卒中との関連が深いてんかんは脳神経外科、精神症状との関連が深いてんかんは精神科が中心に診る場合があります。当院脳神経内科では、てんかんを専門にする医師(藤井、森)を軸に脳波診断を行っています。患者さんと医師との二人三脚による診断・治療が重要であり、患者さんの考えに合う医師を見つけていただきたい。