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「子宮体がん」のはなし

福原 健 
産婦人科 部長
日本産婦人科学会専門医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医
日本周産期・新生児医学会専門医(母体・胎児)
母体保護法指定医

「子宮体がん」とはどのような疾患ですか?

 子宮体がんは子宮体部の内膜にできるがんです。子宮頸部にできる子宮頸がんとは性質が異なります。(図1)国立がん研究センターのがん情報サービスによると、年齢別の罹患率は40歳代から増え始め、50~60歳代で最も多くなります。近年子宮体がんは増加傾向で、若年発症も増えています。(図2)
 初期に治療を開始するほど治療成績は良く、早期発見が大切です。月経ではない不正出血や周期・期間の乱れ、排尿痛や排尿困難などの症状がある場合は注意が必要ですので、婦人科を受診してください。

子宮体がんの検査・診断は?

 子宮体がんの確定診断には子宮内膜の組織検査が必要です。子宮口から細い器具を挿入して細胞を採取し、がんが疑われる場合は組織診を行います。さらにがんの広がりを調べるためにエコー検査やMRI、CT検査などの画像診断も行います。
 治療は手術が基本で、進行している場合は化学療法や放射線療法などを組み合わせた集学的治療となります。手術は開腹手術と、臍や下腹部に3~4か所ほど1cm程度を切開して内視鏡・鉗子などを入れる腹腔鏡手術のほか、当院ではロボット手術も導入しています。

ロボット手術はどのように実施されるのですか?

写真1

 手術支援ロボット「daVinci(ダヴィンチ)」を用います。daVinciが自動で手術をするわけではなく、操作のトレーニングを積み、専門の資格を取得した産婦人科医師が手を動かすと、同様に4本の手術アームが動きます。腹腔鏡手術と同じように、数か所の切開から内視鏡と手術器具を挿入して実施します。執刀医は操作用の機器に腰掛けてモニターを見ながら、コントローラーを操作して手術します。(写真1)

daVinci手術のメリットは

 腹腔鏡手術と同様に手術部位をカメラで拡大して見ながら手術操作を行うため、細い血管も良く見え、少ない出血量におさえられます。ロボット手術では、手術映像が鮮明な3次元画像として映し出され、操作する鉗子が多関節で人間の手以上に自由な動きをします。さらに、術者が実際に6cm動かしても鉗子は2cmしか動かない(動きが1/3に縮小して伝えられる)仕組みで、手振れ防止機能もあり、繊細で正確な操作が可能になります。

手術時間や手術後の経過を教えてください 

 平均で約3時間です。麻酔時間を含めると、5~6時間で手術室から戻ってきます。骨盤リンパ節郭清を行う場合は、さらに1~2時間長くなります。
 手術の結果によりますが、術後1日で食事が開始となり、経過に問題なければ術後6日目が退院の目安になります。術後は定期的に合併症や再発のチェックなどのフォローを行います。2年目までは1~3か月ごと、3~5年目までは4~6か月ごと、5年目以降は6~12か月ごとに、約10年ほどフォローしています。

手術以外の治療法はありますか

 放射線療法や化学療法(抗がん剤)などがあります。がんの性質が比較的穏やかでほとんど進行がなく、将来の妊娠のためにご本人が強く子宮温存をご希望される場合は、ホルモン治療の選択肢があります。ホルモン治療が無効、再発する場合は、子宮全摘が必要となります。

子宮体がんの予防や早期発見のために気を付けるポイントを教えてください

 月経不順などの女性ホルモンの異常や肥満、糖尿病などが子宮体がんのリスク因子となります。月経ではない不正出血や周期・期間の乱れがある場合には、婦人科受診をお勧めします。