Knews No.46 HEALTHY LIVING
「緑内障」のはなし
眼科 医長
岡安 隆
●日本眼科学会専門医
緑内障はどんな病気ですか
緑内障は、目から入ってきた情報を脳に伝達する視神経に障害が起き、視野が狭くなる病気です。生まれつきや若い世代の発症もありますが成人以降に多く、40歳以上の20人に1人が緑内障と推定され、歳を重ねるにつれて増加すると言われています。近年の統計データでは、中高年の失明原因の1位は緑内障です。
緑内障の症状
タイプにもよりますが、少しずつ見える範囲が狭くなっていきます。その進行はゆっくりで、病気がかなり進行するまで自覚症状はほとんどありません。一度狭くなった視野は元には戻らず、進行すると失明に至る恐ろしい病気です。症状がない場合でも、40歳を過ぎたら定期的に眼科検診を受けることをおすすめしています。
緑内障のタイプ
眼の中では水晶体や角膜を栄養する房水が作られており、房水の流れがどこで滞っているかで分けられ、閉塞隅角緑内障と開放隅角緑内障があります。閉塞隅角緑内障は、角膜と虹彩の根本が狭いことで房水の流れが悪くなり眼圧があがります。突然隅角が閉じると、急激に眼圧が上がり眼痛や頭痛、吐き気を伴う急性閉塞隅角緑内障を発症することがありますので注意が必要です。開放隅角緑内障は、房水の出口である線維柱帯やシュレム管の流れが悪くなり眼圧が上がります。眼圧上昇は比較的緩やかであるため、ほとんど自覚症状はありません。
緑内障の治療方法
緑内障は眼圧を適切な値まで下げることで、視野進行が止まりますので、眼圧を下げることが重要です。治療方法としては、点眼、内服薬や点滴、手術などがあり緑内障の種類により治療方針が異なります。閉塞隅角緑内障は、手術が第一選択になり、開放隅角緑内障では点眼治療が第一選択になります。治療を続けながら、その眼圧で視野障害が進行しないかを注意深く経過観察する必要があります。眼圧や視野などを定期的に観察し、病状に合わせて治療変更を行いながら、緑内障の管理を継続して行くことが大切です。当院では、手術療法として従来の線維柱帯切開術や線維柱帯切除術はもちろんのこと、スーチャートラベクロトミーや、より低侵襲なトラベクロトミーab interno、「Express®」を用いたインプラント手術なども行っています。
患者さんへメッセージをお願いします
緑内障は病状が進行しないと症状が自覚されないため、早期発見するには検診がとても重要です。年に1回の検診にて、眼圧測定・簡易視野検査を受けていただくことをお勧めしています。治療を行っても欠けた視野は元に戻らないため、早期発見し視野障害を進行させないことが肝要です。緑内障は生涯にわたり治療が必要ですが、多くの方は点眼治療にて眼圧が下がり、視野の進行が止まります。しかし、緑内障は症状があまりないため治療効果を実感しにくい疾患ですので、治療意欲を維持するのが難しいことがあります。治療効果が実感できるよう、眼圧の変化や、視野検査、網膜・視神経所見など、具体的な検査データをお示して、丁寧な説明ができるよう心掛けています。また、患者さんによって、点眼の組み合わせや手術のタイミングなどが異なりますので、お一人お一人の病状に合わせて最良の治療法が選択できるよう、ご本人やご家族と治療方針を相談しながら日々診療を行っています。