患者さん向け広報誌「Kニュース」No.1

インタビュー

患者本位の病院をめざして

院長 高三秀成

院長 高三 秀成

倉敷中央病院では、基本理念として「患者本位」ということが一番にあげられていますが、具体的には、どういうことなのでしょうか。

高三 最近、患者本位という言葉がよく聞かれますが、これは、今までは医者中心の治療が行われていて、実際は患者本位ではなかったということです。医療が進歩し、習得しなければならない技術が増えて、心が失われてきているのも、その原因の一つと言えます。

しかし、本当の意味の医療とは、患者さんを中心に医師・看護婦・薬剤師・技師・事務員などがひとつのチームとして患者さんの治療にあたるということです。

それでは、患者本位の医療を行うために、病院はこれからどのようにしていくのでしょうか。

高三 病院として組織的に行わなければならないことと、個人のレベルで、職員一人ひとりがやっていかなくてはならないことがあります。

病院としては、まず患者さんに質の高い医療を提供できなければなりません。幸い当院は優秀なスタッフに恵まれ、最新の医療機器の購入も行っています。とは言いましても、医療の分野は日進月歩です。これに甘んじることなく、日々研鑽を積むことにより、高度な医療を提供できているのではないかと思います。

今後は、当院で行っている医療の内容を、その治療成績も含めて説明して、患者さんご自身に治療方法を選択していただくようにしていきたいと思っています。

また、今年度から研修医の公募を始め、医師の教育にも力を入れています。医師・看護婦・その他の専門スタッフが協力して診療を行うチーム医療を実践することにより、患者さんに質の高い医療を提供していきます。

当院でいま一番皆さま方にご迷惑をおかけしているのは、外来の待ち時間の問題だと思います。予約で来られた患者さんに30分以上も待っていただかなくてはいけないというのは、あってはならないことです。

問題はどこにあるのか、どうしたら解決するのかを徹底的に分析して、お待たせしない外来にする必要があります。来年5月末の外来棟完成までには、しっかりとした体制を整えるよう、外来担当の職員が検討をしています。

患者さんが何を望まれているかを、患者さんの立場にたって謙虚に考えることが、患者本位の基本だと思います。

最近は、アメニティ(日常的な快適性)という言葉をよく耳にされるのではないでしょうか。居心地のよさとでも言いましょうか、家庭にいるときと同じ感覚で診察を受けていただいたり、入院生活を送っていただけるように、院内の環境整備を進めています。

では、個人レベルで心得なければならないことは、どのようなことでしょうか。

高三 職員一人ひとりの問題として徹底したいのは、患者さんの接遇です。そもそも患者本位ということは、患者さんの立場にたった診療であり応対です。患者さんの苦痛や不安を自分のこととして感じることができるのが、医療従事者の必須条件です。

最近よく耳にします医療事故について、当院は病院として組織的にその防止に取り組んでいますが、これも患者さんへの思いやりの欠如で起こる場合が多いと思います。ある病院で、患者さんを取り違えて手術をするという事故が起こりましたが、普通では考えられないことです。手術前の患者さんは不安で一杯です。それを和らげるために、なぜ、声をかけられなかったのでしょうか。患者さんと看護婦なり、医師なりとの間に会話があれば、取り違えという事故は起こらなかったはずです。患者さんを一人の人間としてみる心配りにかけていたのではないでしょうか。

当院の創立者である大原孫三郎は、すべての患者さんに平等に、最新の医療を受けていただくことを院是としました。採光や風通しを配慮した病室、病気で沈んだ気持ちを和ませるために温室を作るなど、当院は創立当初から患者本位の精神があります。私たちはこの創立者の精神を受け継いで、患者本位の病院を実現していきます。

トピックス

急性期病院にふさわしい外来に

急性期病院にふさわしい外来に イメージ画像外来棟の南に増築工事を行っていることは、皆さまお気づきのことと思います。騒音や震動のほか、バス停までの通路がせまくなるなど、ご迷惑をおかけして申し訳ございません。この建物は外来棟で、来春の竣工を目指して、工事は順調に進んでいます。

現外来棟は20年前にできましたが、当時予想していたより患者さんの数が多くなり、皆さまに大変ご迷惑をおかけしています。新外来棟では、安心して気持ちよく診察を受けていただけるように、診察室を広くし、プライバシーの確保に配慮します。また、待合などもゆったりとり、快適にお待ちいただけるようになります。

しかし、今回の増改築のもう一つの目的は、当院が急性期病院としての役割を果たせるようにすることです。医療費の膨張にともなって保険財政がひっ迫し、医療制度の改革が進められているということは、皆さま新聞・テレビ等でお聞きになっていると思います。それに関連して、医療の質の確保と効率化のために、病院を急性期病院と慢性病院とに大きく分けて機能分担を図り、急性期病院は入院機能を重視して、外来は一定の範囲にとどめようという動きになっています。

当院でも、その方向を踏まえながら外来診療のあり方を見直し、さらに地域の方々の要望にこたえるためには、地域の基幹病院の外来にふさわしい、質の高い外来診療を行える体制を作り、同時に、それを支える外来棟の増改築が必要と判断しました。

今回の外来棟増改築工事に当たって、当院は基本的に次のように考えています。

紹介患者さんについて

当院が地域の基幹病院として急性期医療を行うためには、地域の医療機関(診療所や病院)との役割分担が重要になってきます。そのため、他の医療機関からの紹介患者さんを優先して受け入れ、質が高く、かつ予約制度の充実を含めたスムーズな診察を受けていただけるようにします。

まことに勝手ですが、当院を受診される場合には、できるかぎりご近所の開業医の先生による、皆さま方の診療情報(紹介状)をお持ちいただきますようにおすすめします。

入院患者さんについて

当院で必要な急性期治療の後、容体の安定した入院患者さんには、早期に自宅または地域の医療機関へ退院していただくことになります。各種処置や点滴など、退院後も継続して通院治療が必要な患者さんのためには、通院治療室を設けます。そこには点滴用のリクライニングベッドを入れ、静かなゆったりした環境で、点滴治療を受けていただけるようになります。

また、専門の看護婦がストーマ(人工肛門・人工膀胱)、自己導尿、皮膚管理等について指導をするための指導室や、在宅酸素の患者さんの呼吸指導、糖尿病患者さんの食事・運動指導などを行う部屋も新設します。

定期的な継続治療の必要な患者さんについて

病状の安定した患者さんは、紹介元あるいは近所の医療機関に戻っていただくようおすすめします。しかし、そうした患者さんにも、地域の先生方と連携を取りながら、当院に求められる専門性の高い定期的な継続治療をさせていただきますのでご安心ください。

以上、当院の今後の外来診療についてご紹介しましたが、これはあくまでも基本的な方針です。これまで皆さま方と築き上げてきた信頼関係を大切にし、お一人ひとりの患者さんと十分話し合いをさせていただきながら実施していきたいと思っています。他科受診を含めた総合的な診療が必要な場合や、患者さんのご事情・お気持ちをなどは何でもお話しください。それらを受けとめながら、少しずつ方向を変えていくつもりです。ご協力のほどよろしくお願いいたします。

なお、増築棟の完成は平成14年5月末の予定です。その後、既存棟の改築を行い、こちらは平成14年秋にはほぼ整備が終わる予定です。

健康な毎日のために

「健康寿命」が大切です

総合保健管理センター所長 井上 武紀

総合保健管理センター所長 井上 武紀

最近、「平均寿命」という言葉に対して「健康寿命」が大切であるといわれるようになりました。寝たきりや痴呆などで人の世話になることなく、元気で過ごせる期間のことを健康寿命といいます。

日本人の健康寿命は74.5歳で世界一ですが、さらにこの寿命(期間)を延ばすことが求められています。心身ともに自立して健康に暮らすことは、特に急速に少子化と高齢化の進むわが国では何よりも大切なことです。

日常生活を見直して元気で長生き

そのためには、現在病気知らずで元気な人はその健康を保ち、さらに高めるためにどうすればよいかに思いをめぐらし、日常生活をもう一度見直していただきたいと思います。また、何らかの病気を持っている人は、その病気の適切な治療を受けるとともに、もう一度日常生活について考え直すこと、いわゆる「一病息災」を心がけて、病気は持っていても元気で長生きをめざしたいものです。

現在、国の「健康日本21」をもとに、岡山県では「健康おかやま21」が策定、発表され、市町村や関係団体に対して具体的に推進するよう勧めています(インターネットで見ることができます)。

その内容の一部を紹介しますと、「食事」「運動」「休養・こころの健康」「飲酒」「喫煙」「歯の健康」などの日常生活習慣についてもう一度見直して、元気で長生き、生活の質の向上、壮年期の疾病や死亡の減少をめざそうというものです。

肥満の解消は成人病予防の第一歩

「食事」や「運動」で体重をコントロールすること、すなわち、肥満を解消することは糖尿病、高脂血症、脂肪肝、高血圧や高尿酸血症の治療の基本であり、それらの病気の予防のためにも最も大切なポイントです。

「休養・こころの健康」を心がけることはすべての病気の予防・治療の基本であることはいうまでもありません。

「お酒」と上手に付き合うことも生活習慣病の予防に大切です。すでに肝臓病にかかっていて、どうしても禁酒が必要な人を除いて、お酒は「節酒」でよい場合が多いのですが、ブレーキのきかない方は注意が必要ですし、自分では多くは飲んでいないという人も、その人の酒量が肝臓その他の臓器に影響の見られる時には、さらに節酒ないし禁酒が望まれることになります。上手にお酒を飲んでいただきたいものです。

あきらめないで、禁煙にチャレンジを

「たばこ」は「節煙」でなく「禁煙」が求められます。肺気腫とか喘息のような肺の病気の人では、たばこが悪影響を及ぼすことが分かっています。また、たばこは肺がんはもちろん、それ以外にも喉頭がんや胃がんなど、多くのがんの発症の割合を高めるとされています。心臓にも良くないことが証明されています。

それでも、そのようなことはよく知ってはいても、たばこはストレス解消に必要で、絶対に止める気はないという人もいます。止めたいとは思うがなかなか止められない、という人も多いです。そのような人に禁煙を勧めること、また自分で決断・実行することは大変難しく、機が熟すのをじっくり待つことが必要なこともあります。

ある日急に思いついて禁煙を始めて、うまく成功したという方も稀にはいますが、なぜ止めるべきかをしっかり意識すること、気持ちを盛り上げていくこと、さらに周囲の人の協力などが必要な場合が多いものです。また、一度禁煙に失敗したけれど、二度三度と試みて初めて成功した人もいます。最近、ニコチンガムが市販されるようになりました。いろんな情報を手に入れて、諦めないでチャレンジしていただきたいと思います。

歯は「8020」を目指して

「歯の健康」については、八〇歳になっても自分の歯が二〇本残っているように歯の手入れをしましょうという8020運動があります。日頃の注意とともに、定期的に歯科で歯の手入れをしてもらいましょう。自分の歯で噛み、食べることは非常に大切なことです。

元気な人は検診・人間ドックを活用していただき、また病気のある人は病医院で医師や看護婦、栄養士などの指導を受けていただき、ともに、元気で長生きをめざしていただきたいと思います。

お願い

病院ボランティアのお願い -あなたの時間を患者さんとともに過ごしていただけませんか-

みどりのエプロンをかけて、外来患者さんの行き先案内や、車椅子での移送を行ってくださっているボランティアさんにお気づきでしょうか。当院では、現在約20名の方がボランティアとして登録されています。上記のほかに、歩行介助、代筆などを行っていただいて、患者さんにとても喜ばれています。

ボランティア活動は、皆さま方の社会に役立ちたいというお気持ちだと思います。当院はよりよい医療を行うために、地域の皆さまにもっともっと病院のことを知っていただき、皆さまとの連携を深めたいと願っています。多くの方にボランティアとして参加していただき、活動を通じて地域と病院のかけはしになっていただきたいと思っています。

このたび、ボランティアさんとの窓口になる専任の職員を任命しました。地域の皆さまの交流の場としての「ボランティア・ショップ」の設置や、いろいろな勉強会などの開催も計画しています。

ボランティアさんの募集についての詳細は、庶務課までお電話ください。(086-422-0210)

QQ車 院内ニュース

QQ車は、皆さまに倉敷中央病院のできごとを運ぶ(お伝えする)コーナーです。

倉敷中央専門学校で県内の高校生が1日看護学生に

QQ車 活動画像1毎年夏休みに、高校生を対象に、1日体験入学を行っています。今年は県内の22校から67人が参加しました。

参加した高校生は、本院看護学生の実習着であるブルーのエプロンに着替えて、血圧測定や本物そっくりの腕の模型を使っての注射・採血の演習をしました。午後からは、病棟で看護婦と共に、看護体験をしました。

この体験入学をきっかけに、看護の道へ進む高校生もいます。

倉敷天領祭りに参加しました

QQ車 活動画像2この夏、倉敷のメインストリートを、みどりと金色のマークを染めぬいた真っ白なはっぴ姿が駆け抜けたのを、皆さまご覧いただけましたでしょうか。「倉敷天領祭り OH!代官ばやし踊りコンテスト」に、当院職員110人が参加しました。仕事とはまた違った活気と緊張感のなかで、地域の皆さまと一緒に参加できたことに、みんな感動しました。

見物していらっしゃった患者さんに、応援の声をかけていただいた職員もいました。ありがとうございました。

医療事故防止を目的に医師を対象としたワークショップ開催

QQ車 活動画像3倉敷中央病院では、医療事故防止については主要な部門に専任のリスクマネージャー(危機管理担当者)を置いて、病院全体で組織的に取り組んでいます。

医師の部門では、9月に2日間にわたって、事故防止対策を検討するワークショップ(研修会)を行いました。ワークショップでは、典型的な事故事例について、グループで原因の分析を行い、対策を検討しました。研修後は、各科ごとに話し合いをすすめて、より充実した事故防止対策を作り、その徹底を図ることにしました。今年中に計4回行い、合計で100人の医師が参加することになります。

看護補助者研修会

QQ車 活動画像4ブルーのユニフォームで(最近はPHSの赤いひもが目立ちます)患者さんのお世話をさせていただいている看護補助者。9月に行われた研修会では、車椅子による移送と、洗髪・足浴の方法を学びました。実際に自分たちが車椅子に乗ることで、患者さんの目の高さや速度が実感でき、よい勉強になりました。足浴も、軍手を使うととても気持ちがよいことが分かりました。今後の仕事に生かしていきます。

ただ今当院では、看護補助者を募集しています。患者さんのお世話や、病院の環境整備などの仕事に関心のある方(40歳まで)は、人事課・若林までお電話ください。(086-422-0210)