患者さん向け広報誌「Kニュース」No.11

インタビュー

地域の皆さまとともに倉敷中央病院を育てたい

副院長 島村 淳之輔

副院長 島村 淳之輔

患者さんから「もう少し長く入院していたかったのに、早く退院するように言われた」というご意見をいただくことがありますが、これはどういうことですか

島村 日本は世界で最も長寿の国となり、当院でもご高齢の方の受診が増えてきています。ご高齢の方はしばしば複数の病気を持っておられ、その多くが慢性疾患です。これらの疾患は完全に治るということが期待できず、継続した治療が必要となります。

一方、厚生労働省は質の高い医療を行うことを目的に、医療機関の役割分担を進めています。まず、平成12年に介護保険制度をスタートさせ、介護と医療を分けました。さらに医療機関の役割分担を進め、当院は地域中核病院として、急性期医療を担う病院となりました。つまり、緊急・重症な方を中心に、入院・手術など高度な専門的医療を行う病院です。

当院で必要な専門的医療が終わり、症状も安定した患者さんで、さらに入院が必要な方は療養病床、リハビリ、緩和ケアなどの、次の医療を担う医療機関に転院をお願いしています。

このように、一人の患者さんの治療を当院だけで行うのではなく、地域の医療機関が協力して、それぞれの特色を生かして、地域全体で患者さんの治療をしてゆく地域医療連携、地域完結型医療が求められています。

当院のような急性期病院は、急性期医療を必要とする方が受診されますので時間的な余裕があまりなく、長い間待っていただいて入院するという訳にはいきません。そこで、病床を効率よく使って、何時でも次の緊急で重症の方が入院できるように、急性期の医療が終わった方に退院をお願いしているわけです。

それでは、退院を勧められた患者さんはどうすればいいのですか

島村 当院では、地域の医療機関との間で定期的に情報交換を行っていて、それぞれの医療機関の特色をまとめた資料があります。転院の場合には、それを参考にして、その方にふさわしい医療機関をご紹介しています。

外来の場合はどうなりますか

島村 当院を退院される患者さんで、外来治療が必要な方には、近くの医療機関を紹介させていただきます。もしかかりつけ医を持たれていたら、かかりつけ医にご紹介します。

当院の外来にかかられている患者さんの場合も、当院で必要な治療が終わられた方には、地域の医療機関で診察していただくように勧めています。入院の場合と同じで、当院での治療を必要とされる他の患者さんを受け入れるためです。

かかりつけ医というのは、どういうお医者さんですか

島村 かかりつけ医とは、日頃からご自身やご家族が気軽に受診して、さまざまな健康上の相談ができる医師のことです。患者さんの病歴、病状、健康状態などを把握して、在宅医療、家庭看護、福祉介護、予防注射などの相談にのってくれます。かかりつけ医の専門外の病気や、専門的な検査や医療が必要になった時には、適切な医療機関に紹介してくれます。

このように、患者さんのいろいろな情報を知った上で病気の診断、治療に当たってくれるのがかかりつけ医です。病気の早期発見にもつながり、慢性的な病気の患者さんにとっては、継続した医療を受けやすいのが特長です。

また、介護保険の申請書にもかかりつけ医の意見を書く欄があり、この点からもかかりつけ医を持たれる方が有利であると思います。

かかりつけ医を持つにはどうすればいいのですか

島村 かかりつけ医を選ぶポイントとしては、自宅から近い、持病があればその専門医を選ぶということがあげられます。患者さんの話をしっかり聴き、病気・治療方法・薬などについて分かりやすく納得の行く説明をしてくれる医師、気軽に相談できる医師を選ばれるとよいと思います。何よりも大切なことは医師との信頼関係ですね。

当院の総合相談・地域医療センターには、地域医療機関の特色をまとめた資料がありますので、かかりつけ医に関するご質問があれば、お気軽にご相談ください。

トピックス

個人情報保護について

今日、私たちの生活のあらゆる場面でコンピューターが使われるようになり、さまざまな個人情報を含むデータが大量に收集され、処理され、利用されています。これらの個人情報を適正に取り扱い、有効に利用するとともに、個人の権利や利益を保護することを目的に、本年4月1日から「個人情報保護法」が施行されました。

当院は、皆さまの身体に関する大切な情報をお預かりしています。情報管理につきましては、これまでも、「倉敷中央病院 情報システム管理員会規程」をもとに、システムの整備や職員教育により厳重な注意を払っていますが、これを機に、一層の個人情報保護に努める所存です。

4月1日からの当院の対応について、一部ご紹介いたします。

外来診療での患者さまの呼び出し

「本人確認」と「個人情報保護」とを比較した場合、前者の方が重要と考え、基本的にはお名前を呼ばせていただきます。お名前の呼び出しを希望されない場合は、お申し出ください。

病室の名札の掲示

呼び出しの場合と同様の理由から、基本的にはお名前を掲示させていただきます。お名前の掲示を希望されない場合は、お申し出ください。今後はお名前を掲示しない病棟をつくり、掲示の是非について検討していきます。

電話による病状・検査結果等のお問い合わせ

病状・検査結果のお電話での説明は、なかなか難しい点があります。患者さまご本人の場合も、来院していただいて、直接医師からお話をさせていただくようにしています。

ご家族・ご親族からのお問い合わせ

あらかじめ、患者さまのご同意を得た方のみに限らせていただいています。電話でのお問い合わせは、ご遠慮いただいています。

情報開示について

患者さまの個人情報について、開示をご希望の場合は、「診療情報の提供に関する指針」に従って対応いたします。

個人情報保護に関するご質問・お問い合わせならびに開示のご要望等については、総合相談・地域医療センター 個人情報相談窓口でお受けいたします。ご遠慮なくご相談ください。(086-422-0210)

ヘルシーリビング

うつ病の初期症状には、「夜眠れない、食欲がない、体がだるい」などがあります

心療内科 主任部長 岡部 健雄

心療内科 主任部長 岡部 健雄

毎年、春になると「夜眠れない、食欲がない、頭痛がする」と体の不調を訴えて、心療内科の外来を訪れる「うつ病」の患者さんが増えてきます。

3月、4月は学校では卒業と入学、会社では入社と人事異動の季節です。人の移動が多くなり、今までの環境から新しい環境に適応するために、ストレスを感じることが多くなる季節です。さらに春は気温が高くなり、日差しも長くなって、気候の変化が体や脳に影響を与える時期でもあります。

うつ病は、心の活力が低下して気分が沈み込んだり、何をするにも興味が湧かなくなる心の病気です。一生のうちに、ある人が「うつ病」にかかる率は14%と報告されているように、「うつ病」は我々現代人にとって身近な心の病気です。

うつ病を引き起こす原因

うつ病の原因はまだ十分解明されていませんが、さまざまな要因が複雑に絡み合って発病すると考えられています。もともとの素因に何らかの出来事やストレスが加わって、うつ病が起こることが多いようです。一般に、以下のような原因がみられます。

  1. 生活環境の変化やストレス
    身近な人の死、離婚、失業、退職、就職、進学、転居
  2. 身体の変化
    過労、睡眠不足、出産、育児、体の病気(痴呆の初期、脳出血、脳梗塞、パーキンソン病)
  3. 薬の副作用
    ある種の高血圧の治療薬、経口避妊薬、副腎皮質ホルモン

うつ病の初期症状と症状の進展

うつ病の症状は、最初は体の症状として出てくることが多いようです。

初期に現れる身体症状
睡眠障害(入眠、熟眠、早朝覚醒)、食欲減退、体重減少、全身倦怠感、疲れやすさ、肩こり、頭痛

うつ病は、次第に次のような独特の精神症状を現します。

精神症状

  • 抑うつ気分(気がめいる、気が沈む、気が晴れない、憂うつ、うっとうしい)
  • 挫折感、絶望感
  • 興味・関心・喜びの喪失(テレビ・新聞を見る気がしない、おしゃれ・化粧がめんどう)
  • 意欲低下(時間がかかる、はかどらない、料理がめんどう)
  • 無価値感、自信喪失
  • 不安、焦燥感
  • 自殺願望

うつ病になると、一日の中で気分ややる気に変動がみられます。大低は午前中具合が悪く、午後からは比較的元気になります。

症状の中でもっとも注意しなければならないのは、自殺です。「死にたい」と明言する人もいれば、「どこか遠くに行ってしまいたい」「眠ったまま目が覚めないで欲しい」などと自殺をほのめかす人もいます。うつ病の患者さんの約10%が自殺されるといわれています。

特に、病気の初期と回復期に注意が必要です。自殺の話を打ち明けられた時には、相手の話をよく聞いて「病気は必ず治りますよ」「どんなことがあっても、死んだりしないでね」と伝えてあげてください。

うつ病の治療

うつ病の治療は、「休養」「薬」「精神療法」「環境調整」の4つで成り立っています。一つだけで治療できるものではなく、身体の面から、心理的な面から、そして社会的な面からとあらゆる方面から総合的に治療してゆく必要があります。

適切に治療を行えば、通常3~6か月で症状はよくなります。

休養
軽症の場合には、仕事を続けながら治療をすることがありますが、うつ病の治療の基本は仕事を2~3か月休み、精神的にも肉体的にも負担をかけずゆったりと過ごすことです。休んでいる期間は、原則として無理な活動を避け、早く仕事復帰しようとあせらないことです。

主婦の方は、特に毎日の家事、育児、病人の介護等をできるだけ代わってもらうか、減らすように家族の方に理解と協力を求めてください。

薬物療法
うつ病の治療薬は「抗うつ薬」と呼ばれ、最近では副作用がより軽くなったSSRI、SNRIとよばれる「抗うつ薬」が開発され使用されています。

「抗うつ薬」は服用後1~2週間で効果が感じられ始めます。まず最初に不眠、頭痛などの身体症状が軽くなり、次に憂うつな気分がうすらいで気持ちに明るさが感じられてきます。最後に意欲が改善され、本来のやる気を取り戻します。

うつ病は再発しやすい病気です。症状がよくなつてから最低でも6か月は薬の服用を続ける必要があります。くれぐれも自分の判断で治療の途中で「抗うつ薬」を勝手に中断しないでください。症状が悪化したり再発するばかりでなく、急に薬を中断したことで、中断症候群という状態が時に出現することがあります。

中断症候群の症状は、吐き気・嘔吐、頭痛、ふらつき、めまい、不眠、不安、イライラ、情緒不安定、憂うつなどの様々な症状が現れます。その場合、主治医に連絡すると適切に対処してもらえます。

精神療法
うつ病の患者さんは、うつ気分や悲観的な考え方に陥って、日頃とは違ったものの見方や考え方をするようになります。特に、現在の状況、自己の評価、将来への見通しに対して誤解が生じます。「自分は、病気ではなくなまけ者だ」「自分は能力がない、生きていけない」「病気は治らない」と言ったり、さらに、薬に対しても、「薬は効かない、精神力で治す」「薬はくせになる」「薬を飲んでいると、頭がぼける」と言ったりして、治療を受けようとしなかったり、薬を飲もうとしないことが起ったりします。

精神療法には、このような患者さんのものの見方、考え方を修正したり、患者さんが健康を回復するまで、不安でゆううつな気持ちを支えていく働きがあります。

環境調整
治療には患者さん自身の努力も必要ですが、家族や職場の人など周囲の人々のサポートが欠かせません。特に、家族の理解と協力は、病気の回復に大きな影響を持っています。

家族には、うつ病は病気であることを認め、本人に十分な休息が得られるよう協力し、治療を受けて薬を飲むことを促し、無理に気分転換をさせようと旅行にさそったり、運動や散歩を強制しないで、温かく見守るといった理解と態度が望まれています。

うつ病は早期発見・早期治療が大切な病気です。しかし、早く治そうとすると焦ることになります。その人にあった回復のスピードと期間があるようです。3か月、6か月が過ぎたのにまだ治らないと焦るのでなく、自分のペースで回復するものと信じて、気長にのんびりとかまえてください。きっと、いい結果が現れます。

お知らせ

「赤い屋根まごころ基金」のご案内

倉敷中央病院は、創立当初より地域の皆さま方への社会的貢献をその目的の第一と考えて医療を行っています。今後もこの創立の理念を発展させ、地域との双方向のコミュニケーションを図りながら、急性期基幹病院としての役割を担っていきたいと願っています。

ここに紹介させていただく「赤い屋根まごころ基金」は、これからの病院づくりを皆さま方に応援していただきたく、皆さま方からの温かいご厚志を受け入れる場として設けました。これを機に、病院の運営については皆さま方のご要望を伺いながら、さらに地域に開かれた病院を目指したいと考えます。

基金の趣旨をご理解のうえ、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

  • 『赤い屋根まごころ基金』は、次のようなことに使わせていただきます。
    1. 地域の皆さまの健康づくり、病気の予防など。
    2. 明るく快適な病院環境にするための整備。
    3. 病院で行う臨床研究に対する支援。
    4. ボランティア活動に関する支援。
    5. ご寄附いただいた方のご要望があれば、優先いたします。
  • 『赤い屋根まごころ基金』は、院内に設けられた基金運営委員会で適切に運営いたします。
  • 『赤い屋根まごころ基金』の活動内容(寄附金の受け入れ・使用状況など)については、ご寄附いただいた方をはじめ、広報いたします。
  • 『赤い屋根まごころ基金』へのご寄附は、入院予定・入院中の患者さま、ならびにそのご家族には、ご遠慮いただいています。
    「すべての人に平等に」という創立者の精神に基づき、誤解を招きやすい入院予定・入院中の患者さま、ならびにそのご家族からの寄附はご遠慮いただいています。

お問い合わせは 外来15番窓口または基金事務局 086-422-9030

QQ車 院内ニュース

QQ車は、皆さまに倉敷中央病院のできごとを運ぶ(お伝えする)コーナーです。

地域がん診療拠点病院 医療従事者研修会行われる