患者さん向け広報誌「Kニュース」No.12
インタビュー
地域の皆さまとともに倉敷中央病院を育てたい
心臓病センターができましたが、これはどのような施設なのですか
光藤 緊急を要する処置の多い心臓病を診療するには、医師と患者さんができるだけ近い空間にいて、循環器内科医と心臓外科医とが、いつもコミュニケーションを取りながら治療を進めていくことが理想です。その理想を実現するために、循環器内科と心臓血管外科の外来診察室と病棟、心電図や超音波の検査室、カテーテル室、CCU(心臓の集中治療室)を集約した施設が、この心臓病センターです。
検査や治療の場所が一か所に集まっているので、患者さんにとっては移動の負担が少なくなり、落ち着いて治療を受けていただくことができます。
実際にはどのような特長がありますか
光藤 患者さんのプライバシーを確保するために、診察室はもちろんですが、検査室や日帰りカテーテル検査用のリカバリー室は個室化しています。個室化したため人の目が届かなくなるということのないように、コーディネーターを置き安全についても十分配慮しますので、安心して検査を受けていただけます。
当院では開業医の先生からの要請があれば、循環器内科の医師が乗って患者さんをお迎えに行く、モービルCCUという心臓病専用の救急車があります。一般の救急と分離して、モービルCCU専用の救急入り口を設置しましたので、一刻を争う心臓病の患者さんの受け入れが、よりスムーズに行えるようになりました。
治療を優先するために、プライバシーの確保の難しかったCCUも原則個室化して、24床設けています。そのうち16床を内科系の患者さん、8床を手術後の患者さん用に使用します。従来、内科系のCCUは8床で、手術後の患者さん専用のものはありませんでしたので、より多くの患者さんを収容できるようになりました。
医療の内容について、変わることがありますか
光藤 私たちはこれまでずっと、患者さんに現在できる最高の医療を行いたいと願って診療を行ってきました。センターができたからといって、すぐその内容が変わるわけではありません。しかし、患者さんからはより高いレベルの医療を求められると思いますので、そうした社会的要請に応えて、診療のレベルをあげるきっかけになると思います。
また、将来的には若い人を育てる教育センターの役割を担えるようにしたいと考えています。
先生は、以前から地域との医療連携を大切にされていると聞いていますが・・・
光藤 もともと医療は医師1人でできるものではなく、看護師、各種技師、医療福祉相談員など様々な職種の人が協力して、チームで行うものです。
また高齢化の進んだ今日では、多くの患者さんは複数の病気を持っています。そうした患者さんを診療するには、専門の違う複数の医師が診る必要があります。
私たちは、急性期の心臓の患者さんの診療に全力を尽します。容体が落ち着いたら、ご近所のかかりつけの先生に診ていただきます。かかりつけの先生は、普段から皆さんの身体についてよくご存じですし、ご家庭の中にも入って行けますので、皆さんにふさわしい病気や健康の管理をしていただけます。
その上で、目の病気は眼科の先生に、足や腰が痛かったら整形外科の先生にというように、その専門の先生に診ていただきます。
1人の患者さんを、かかりつけ医、それぞれの専門の医師、急性期の診療を担当する基幹病院が役割分担して、地域で患者さんの診療を行うことを、私は「地域チーム医療」と呼んで、20年前から実践しています。こうすることによって、はじめて全人医療が行えるのではないかと思います。
この心臓病センターが、当院の医療の場であるだけでなく、中四国の心臓病の診療の要となるよう努めたいと思っています。
トピックス
心臓病センター・新病棟開設 -高度な医療を安全・プライバシー・アメニティを配慮した環境で-
倉敷中央病院では、本年7月4日、心臓病センター・新病棟を開設しました。建物は地下1階、地上8階で、地下から2階までを心臓病センターとし、うち、1階部分は内視鏡センターと総合保健管理センター(人間ドック施設)のサテライトも併設されています。
3階から7階は病棟で、8階はベッドセンターと屋上庭園となっています。
地域の医療機関と連携して、急性期医療を担うことを使命とする当院にふさわしく、進歩する医療に弾力的に対応できるようになっていると同時に、創設以来のあたたかみのある、人間性尊重の精神を生かした設計を心がけました。
心臓病センター
センター機構の最大の利点は、疾患に関連する複数の診療科の医師、看護師、各種検査技師等でチーム医療が行えることです。循環器内科および心臓血管外科の外来診察室と病棟、生理機能検査室(以上、1階、病棟は3階)、カテーテル室(地階)、CCU(2階)を集約配置した当センターは、患者さんにとっても移動の負担が少なくなり、安心して検査や治療を受けていただくことができます。
病棟
病棟では、従来のナースステーションを、医師・看護師・薬剤師、各種検査技師等が協力してチーム医療を行えるようにスタッフステーションとました。その前側には重症患者さん用の個室を設けて、常にスタッフの眼が届くようにしています。
4床室には、通路側のベッド脇にも窓が配置されるように工夫され、わずかですが、自然の光を楽しめるようになっています。
明るく見晴らしのいい面会コーナーでは、和やかに歓談されるご家族がいらっしゃったり、患者さん同士で楽しくお食事をされていらっしゃいます。
ヘルシーリビング
乳がんの話
乳がんについての話をします。
まず、乳がんの特徴ですが、そのひとつに、ゆっくり大きくなることがあります。最初の1個の細胞ががんになってから、手で触れることのできる、1~2cmのしこりに成長するまでにかかる時間は、10年とも20年とも言われています。また、乳がんを治療せずに放置していればどうなるか?という研究はあまりありませんが、あるデータによると、5年生存率は18%、10年生存率は4%といわれています。つまり、何も治療しなくとも、約5人に1人が5年、25人に1人は10年生き延びられることを示しています。
最初の乳がん細胞は20~30歳代に発生
ここまで聞くと、乳がんは高齢者の病気のように感じますが、日本の統計では、実は、30代から
50歳代の女性で、がんで亡くなられた方の第1位が乳がんです。そして、乳がんが発見されるのは40~50歳代がピークで、60歳代以降は少しずつ減少します。ということは、最初の1個の細胞ががんになったのは、20~30歳代の頃ということになります。
30代から50歳代で亡くなられますと、まだ子供も小さいので、残された家族はもちろん、社会的にもその損失は大変大きく、これを減少させることが重要な課題となります。
乳がんの発生そのものを予防する(これを一次予防といいます)有効な方法はありませんので、できるだけ早期に、小さいうちに乳がんを見つけて(これを二次予防といいます)、治癒率を高めることが大切です。
このお手本が欧米にあります。欧米では、乳がんの発生は日本の3倍ほどありますが、ここ数年、乳がん死亡率は減少しつつあります。その原因として考えられているのは、術後補助療法です。再発転移の危険の高い人には、手術後に抗がん剤や、ホルモン治療剤をしっかり投与することによって、術後再発率は減少します。
自己検診で早期発見
もうひとつの原因は早期発見です。乳がんの約8割は触って分かりますから、注意深く自己検診をしていれば、1cm以下の、非常に小さなうちに見つけることができます。しかし、触って分かるタイプの乳がんは、浸潤性乳がんといって、転移する能力をもっているので、たとえ1cmでも、すでに転移していることがあります。
もちろん、より小さいうちに見つけることは大切ですが、もっといいのは、触れないものを見つけることです。この、触れないタイプの乳がんの大部分は、非浸潤がんといって、ほとんど転移することのない乳がんです。これを見つけて手術してしまえば、ほぼ100%治ってしまいます。
触れない乳がんを見つけるマンモグラフィ
触れない乳がんを見つけるのは、マンモグラフィが非常に役に立ちます。マンモグラフィとは、特殊なレントゲン検査です。乳房を2枚の板でぺしゃんこに圧迫して撮影します。特に若い人の場合はかなり痛いようですが、少し我慢してください。
乳がんの死亡率を減少させることに成功した欧米では、乳がん検診にこのマンモグラフィを取り入れています。そして、乳がん検視の受診率も非常に高く、70%以上あります。
これに対し、日本では、やっとマンモグラフィが乳がん検診に取り入れられたものの、検診の受診率はかなり低く、最も高受診率の地方でも、触診のみで30%、マンモグラフィ併用では10%以下です。これでは折角のマンモグラフィ併用検診もその効果を現すことはできません。
やっと、わが国でも、マンモグラフィ併用検診の年齢が40歳に引き下げられました。乳がんの発生は欧米の約3分の1といえ、年々増加していますので、このままの乳がん検診受診率であれば、いずれ乳がん死亡率は欧米を追い越すことになるかもしれません。こんなことで世界一にはなりたくありません。
貴女も、マンモグラフィ併用検診を受診して、早期のうちに乳がんを見つけて、乳がんで亡くなることのないようにしましょう。
貴女の命を守るのは、貴女自身です。
QQ車 院内ニュース
QQ車は、皆さまに倉敷中央病院のできごとを運ぶ(お伝えする)コーナーです。
看護系の進学希望者を対象にオープンスクール開催
倉敷中央看護専門学校では、毎年春と秋の2回オープンスクールを、夏には看護一日体験入学を実施しています。これは、看護系の進学を希望している方に、同校の環境や学生生活の一端を知ってもらうために行っているもので、10月22日に行われた秋のオープンスクールには、社会人8名を含む49名(うち男性3名)が参加しました。
内容は学校紹介・校内見学、体験学習などです。体験学習は洗髪、包帯交換、移送などを在校生の指導のもとに行いますが、春に行われたオープンスクールでは、血圧測定で、初めて経験する血流の音を聞き逃すまいとする真剣な姿が印象的でした。
在校生との交流会では学生生活・受験対策などについて活発な質疑が交わされた後、病院見学と学食体験をして半日を終わります。
今回の参加者のアンケートには、「看護の仕事や体験がもっともっとしたくなり、期待で胸がいっぱい」「患者さんの気持ちを第一にすることが大切だということが分かった」など、貴重な体験をしてもらえたことが伺われ、同校の印象として「伝統があり実習を重視している。人間愛など看護を学習する環境が整っている」「先輩方がとても優しく、活き活きしていて、私たちの小さな疑問にも答えてくれた」などが書かれていました。
看護職に関心をお持ちの方で、ご希望がありましたら随時見学をお受けしていますので、ご連絡ください。(086-422-9311)