患者さん向け広報誌「Kニュース」No.13

インタビュー

地域の皆さまとともに倉敷中央病院を育てたい

赤い屋根まごころ基金制度運営委員会 委員長 高橋 晃

赤い屋根まごころ基金制度運営委員会 委員長 高橋 晃

はじめに、この「赤い屋根まごころ基金」とはどういうものか、その趣旨などを聞きたいのですが。

髙橋 倉敷中央病院は、皆さまご存じのように大原孫三郎氏によって造られましたが、設立当初から倉敷紡績の職員だけでなく、広く地域の方々の診療を行い、地域に密着した病院を目指してきました。

私たち病院職員もその理念を受け継いで、患者さんに貢献できるような医療の質の向上、設備の充実を図ってきました。これをさらに一歩進めて、病院自体も患者さんを始めとした地域の皆さまに支えていただき、私たちと一緒になって、よりよい病院を造っていっていただきたいという考えで、寄附を募ることにしたわけです。

インタビュー画像「赤い屋根まごころ基金」という名前の由来はなんですか

髙橋 実は、基金を始めるにあたって院内で名称の募集を行ったところ、倉敷中央病院の象徴の一つである、赤い屋根瓦からのネーミングが多く寄せられました。そこで「赤い屋根」という言葉に、基金の趣旨である「まごころ」を組み合わせて、この名まえとなりました。

実際には、どんな方が、どのような場合に寄附をされたのでしょうか

髙橋 当院で治療を受けられた患者さん、そのご家族の方が大部分です。治療が終わった後に、お世話になりましたということで寄附を申し出られる方が多いのですが、中には、不幸にして病気で亡くなられた方のご遺族からの申し出もあります。

また、基金の趣旨に賛同されて寄附を寄せられた一般の方もいらっしゃいます。

誰でも寄附ができるのでしょうか

髙橋 最近ではどこの病院でもほとんどなくなったと思いますが、医療従事者への謝礼というものが取りざたされたことがありました。当院ではそのようなものは一切行われないようにしていますが、そういったものと混同されるといけませんので、これから入院をする予定の方や現在入院中の方、そのご家族の方からのご寄附はお断りをしています。

もちろん、退院されたあとでのご寄附は受け付けています。

集まった基金はどんなことに使われるのでしょうか。

髙橋 基金の制度の運営にあたっては、専門の運営委員会で適切に行います。使途については、基金設立の趣旨にそう形で、有意義に使わせていただきたいと考えています。快適な病院環境の整備や、皆さまの健康維持や病気予防に役立つ事柄が主な使途になります。

具体的には、車椅子の購入ですとか、外来に設けている患者さんのための図書室の充実などです。

また当院は、ボランティアさんを受け入れていて、外来での患者さんのご案内や車椅子の整備などの活動をしていただいています。こうした活動がスムーズに行われるための支援にも使います。

今後、病棟の増改築を行う予定で、将来的には入院病棟にも患者さんのための図書室を整備したいと考えています。一部の方からのご寄附には、研究の費用に当ててほしいとの要望もありますので、その趣旨もくんで、臨床研究の設備の充実を図りたいとも考えています。

ご寄附いただいた方のご要望があれば、もちろん、それを優先いたします。

今後の見通しはいかがでしょうか

髙橋 一昨年12月から始めたところで、皆さまへの基金のご案内なども十分ではなかったのですが、それにもかかわらず、約1年間で1千万円を越えるご寄附をいただきました。今後は、さらにこの基金の存在や、その意義を広くご案内して、一層の充実を図りたいと考えています。

基金の運営については、収支報告はもちろん、病院の年間の活動状況や将来構想などを盛り込んだ報告書を作成して、皆さまにお知らせいたします。基金の趣旨をご理解のうえ、ご支援・ご賛同くださいますようお願いいたします。

トピックス

総合保健管理センター(人間ドック施設)、機能評価の認定を受ける

機能評価受審 画像昨今、医療の各分野では、皆さまによりよい医療、健康診断等を安心して受けていただけるようにと、第三者による機能評価が行われています。当院も、二度の認定を受けていますが、このたび総合保健管理センター(人間ドック施設)が、日本人間ドック学会より、「人間ドック・健診施設機能評価」の認定を取得しました。

評価は受診者の満足と安心、健診の質の確保など、5つの領域にわたり、185項目で行われます。認定取得にあたり当センターは、「倉敷駅近くに立地し、近隣には同法人の病院を持つ。専門医も数多くそろえ、看護師、検査技師、放射線技師も年間受診者2万人強に見合った人員を確保しており、施設面においてもゆったりとした環境を提供されている。倉敷中央病院と連携もあり、健診の質の確保や受診後のフォローアップにおいても体制が確立されている」との評価をいただきました。

当センターは昭和62年11月に開設し、

  1. 病院色を一掃するため、病院から少し距離を置いた場所に設置。
  2. 健康食レストラン「ルリエール」を創設。
  3. 本院の大型コンピュータとオンラインで結び、検査データの短時間処理を可能にした(受診当日に結果説明を行っています)。
  4. 本院のバックアップによる最新の医療技術集積の利用を可能にする。

等の特徴をもっています。

今回、機能評価を受審するに当っては、施設的には次のような点を改良しました。

  1. レディースコーナーを設け、乳がん、子宮がん検診を受ける方々を男性から隔て、安心して検診を受けていただけるよう配慮した。
  2. 待合コーナーを拡げてパソコンを設置し、週刊誌の種類を増すなど、リラックスしてお待ちいただけるように心掛けた。
  3. 肺機能・聴力検査室などをより充実させ、プライバシーも守れるように配慮した。
  4. スリッパの消毒機器を導入して、より衛生的に保つようにした。また、個人情報保護のためのルールを徹底し、広く受診者の皆さまのご意見を伺うために、御意見箱を増やしました。

このたびの機能評価合格を踏まえて、当センターの内容をさらに発展、充実させていくよう努力したいと考えています。

PET-CT検診始まる

PETとは、Positron Emission Tomography(陽電子放出断層撮影)の略で、ペットと呼ばれています。

がん細胞の多くは、正常な細胞に比べて多くの糖分を消費します。PET検査は、その性質を利用して、ブドウ糖によく似たFDG(フルオロデオキシグルコース)という薬を注射し、その集まり具合を検出して診断する検査です。PETで得られた画像とCTで得られた画像を組み合わせて、より精度の高い画像で診断する方法がPET-CT検査です。

見つけやすいがん

1cm以上の塊があり、ブドウ糖をよく取り込むもの
頭頸部がん、乳がん、甲状腺がん、肺がん、食道がん、大腸がん、胆のうがん、胆道がん、膵臓がん、子宮がん、卵巣がん、悪性リンパ腫、悪性黒色腫

見つけにくいがん

薄く広がり、塊をつくらないもの
肺がんの1部(PET-CT検診では、胸部CTも同時に行うので、発見が可能)、肝臓がんの1部、腎臓がん、前立腺がん

見つけられないがん

5mm以下の小さながん、膀胱がん、表在がん(食道、胃、大腸、子宮頸部など)
お申し込み・お問い合わせは以下の番号まで。
086-422-6800

ヘルシーリビング

肝臓病の話(肝臓病教室の紹介)

消化器内科部長 下村 宏之

消化器内科部長 下村 宏之

肝臓は身体の中のどこにあって、どんな働きをしている臓器なのでしょうか?肝臓は、おなかの右の上の方で肋骨に囲まれたところにあります。重量はおよそ1200gです。

肝臓は、化学工場に例えられますように、さまざまな仕事をしています。まず、皆さんが食事で取り入れた栄養を、身体が利用できる形(糖、脂肪やアミノ酸)に変換したり、すぐに使わないエネルギーを、グリコーゲンとして蓄える働きをしています。また、胆汁を作り、脂肪やビタミンなどの消化吸収を助けています。身体の隅々まで大事なホルモンなどを運搬するたんぱく質や、出血した時に血液が固まるよう働くたんぱく質も作っています。

身体が活動をしている間にできる老廃物を、身体に害のない物質に変えたり、体外へ排泄しやすい形に変える働きもしています。また、薬やアルコールなどを代謝して、無毒化しています。

胃腸から身体に入ってくる微生物や異物に対する免疫反応も、肝臓の中の細胞がコントロールしています。

「肝腎」「肝心」などと重要な物の例えに挙げられている「肝(臓)」は、このようにとても大事な働きをしています。

肝臓病の種類

肝臓に起こる病気は、原因によって分類され、ウイルス感染が原因のウイルス肝炎、肝臓に脂肪がたまって働きが悪くなる脂肪肝、アルコール飲料の摂取が多いために起こるアルコール性肝障害、その他自分に対する免疫反応が原因の自己免疫性肝障害(自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変など)等があります。一方、病気の起こり方や状態によって、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変というように分類することもあり、原因と状態を組み合わせて、「C型慢性肝炎」というように呼んでいます。

肝臓病の症状には、全身倦怠感、食欲不振、吐き気、黄疸、腹水、意識障害などがありますが、病気が進行しないと気付かないことが多く、「沈黙の臓器」とも呼ばれています。

倉敷中央病院では、患者さんの肝臓病の療養にお役に立てるよう、病気の成り立ちや薬の話、食事の注意、運動療法、社会保障について、「肝臓病教室」を開いて説明しています。これまでに取り上げた内容のいくつかを、簡単にご紹介しましょう。

C型肝炎

C型肝炎は、C型肝炎ウイルス(HCV)が肝細胞に感染し、ウイルスを除去しようとして肝炎が始まります。肝炎は慢性化しやすく、半数の患者さんでは肝硬変へ進行すると言われています。大量飲酒や肥満、鉄分の取りすぎは肝炎の進行を早めます。肝炎の程度(病期、ステージ)によって、肝がんの発生率に違いが見られますので、進行した慢性肝炎では、早期に治療することをお勧めしています。

C型肝炎の原因治療はインターフェロン療法ですが、最近リバビリン(経口抗ウイルス剤)を併用することで治療効果が改善し、ペグインターフェロンを使用して、注射回数を週1回に減らす治療法が行われるようになっています。ウイルスの型・量、病期の程度、年齢、合併症に応じた治療法を選択するようになりました。

このような薬には、副作用も種々のものがあります。インターフェロンによる発熱や倦怠感、白血球や血小板減少、間質性肺炎、脳出血、眼底出血、リバビリンによる貧血、催奇形性をはじめ、十分な説明を受けてから治療を始めていただいています。

こうした治療には、多くの患者さんが医療費についての不安をお持ちです。多額の治療費がかかりますが、保険の種類や収入に応じた補助の制度もありますので、医療福祉担当者にご相談ください。

最近の慢性肝炎に対する治療

【C型慢性肝炎】

● リバビリン+ペグインターフェロン併用療法
これまで、1型でウイルス量の多いC型慢性肝炎患者さんだけが保険診療の対象でしたが、2005年12月より、他のウイルス型でも量の多い場合には、使うことができるようになりました。また、インターフェロン再治療の場合は型・量に関わらず使用可能です。

● インターフェロン自己注射
肝炎の活動性が高い場合には、肝炎の活動性を抑え肝がんの発生を減らすことを目標にして、少ない量のインターフェロンを長期にわたって注射することが有効であると考えられています。そこで、患者さんがご自分で注射をすることが保険診療でできるようになりました。注射できるインターフェロンは従来型のαインターフェロン製剤で、安全のため量は600万単位程度までで、2週間に1度診察においでいただきます。夕食後に注射することで、副作用が軽減されるという利点もあるようです。主治医とよくご相談ください。

B型肝炎

B型肝炎も、B型肝炎ウイルス(HBV)が肝細胞に感染し、それを排除しようとして肝炎が起こります。C型肝炎と異なり、成人で感染した時には慢性肝炎になる率は低いのですが、出生時に感染すると持続感染します。現在、HBVを持っている妊婦さんから生まれる新生児には、HBVの感染を予防する処置がとられています。B型肝炎でも、一部の感染者では慢性肝炎から肝硬変へ病気が進み、肝がんも発生してきます。

B型肝炎では、若年者で多いのですが、自然にウイルスが減っていき肝炎が治まる現象が見られます。そこで、治療は35歳以上の肝炎患者さんや、若いけれども肝炎の活動性の盛んな患者さんを対象としています。ウイルスの増殖を抑える治療として、抗ウイルス剤(ラミブジン、アデフォビル、エンテカビル)や場合によってはインターフェロン治療が行われます。ウイルスの増え方や肝炎の状態に応じた治療法が選ばれています。

B型肝炎はワクチンで予防が可能ですので、感染する可能性が高い方には、ワクチンを接種することを強くお勧めします。

最近の慢性肝炎に対する治療

【B型慢性肝炎】

● 抗ウイルス剤
ラミブジン(ゼフィックス)という抗ウイルス剤には、長期間の治療中にこの薬に対する耐性が生じるという短所がありました。2004年12月からアデフォビルという抗ウイルス剤が保険診療で使えるようになり、ラミブジン治療を行いやすくなっています。さらに、慢性肝炎のみに適用されていましたが、肝硬変の患者さんに対しても、正式に保険診療での使用が認められました。

肝臓病教室

毎月開かれている肝臓病教室では、医師、看護師、薬剤師、栄養士、臨床検査技師、理学療法士、医療ソーシャルワーカーなど、それぞれの専門家が、皆さんのお役に立つ話をしています。また、普段の診察で聞けないような質問もお受けしています。興味をお持ちの方は、参加自由ですのでどうぞおこしください。開催の日時や場所などの予定は、院内にポスター掲示をしています。

肝臓病の診断や治療の方法は、次々と新しくなっています。皆さまに最新の、役に立つ知識を得ていただけるよう、これからも企画していきますので、どうぞご参加くださり、ご意見等をお寄せくださるようにお願いします。

お知らせ

「赤い屋根まごころ基金」のご案内

倉敷中央病院は、創立当初より地域の皆さま方への社会的貢献をその目的の第一と考えて医療を行っています。今後もこの創立の理念を発展させ、地域との双方向のコミュニケーションを図りながら、急性期基幹病院としての役割を担っていきたいと願っています。

ここに紹介させていただく「赤い屋根まごころ基金」は、これからの病院づくりを皆さま方に応援していただきたく、皆さま方からの温かいご厚志を受け入れる場として設けました。これを機に、病院の運営については皆さま方のご要望を伺いながら、さらに地域に開かれた病院を目指したいと考えます。

基金の趣旨をご理解のうえ、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

  • 『赤い屋根まごころ基金』は、次のようなことに使わせていただきます。
    1. 地域の皆さまの健康づくり、病気の予防など。
    2. 明るく快適な病院環境にするための整備。
    3. 病院で行う臨床研究に対する支援。
    4. ボランティア活動に関する支援。
    5. ご寄附いただいた方のご要望があれば、優先いたします。
  • 『赤い屋根まごころ基金』は、院内に設けられた基金運営委員会で適切に運営いたします。
  • 『赤い屋根まごころ基金』の活動内容(寄附金の受け入れ・使用状況など)については、ご寄附いただいた方をはじめ、広報いたします。
  • 『赤い屋根まごころ基金』へのご寄附は、入院予定・入院中の患者さま、ならびにそのご家族には、ご遠慮いただいています。
    「すべての人に平等に」という創立者の精神に基づき、誤解を招きやすい入院予定・入院中の患者さま、ならびにそのご家族からの寄附はご遠慮いただいています。

お問い合わせは 外来15番窓口または基金事務局 086-422-9030

QQ車 院内ニュース

QQ車は、皆さまに倉敷中央病院のできごとを運ぶ(お伝えする)コーナーです。

ヘルシーフェスティバル

毎年11月の第2週は全国糖尿病週間として、各地で関連行事が行われます。41回目となる平成17年は、「療養は明るく楽しく前向きに」が標語でした。

当院は第3週の11月14日から18日まで、一般の方と糖尿病の患者さんを対象にした「ヘルシーフェスティバル」を総合保健管理センターで開催しました。

18日には三豊総合病院 代謝科医長の米井泰治先生を講師にお招きして「糖尿病の合併症を防ぐために」と題して、糖尿病の治療目標や予防のための食事・運動療法についてお話ししていただきました。会場は80席がほぼ満員で、講演会に先立ち、リハビリ療法士の指導で「座ったままでできる簡単ストレッチ」を、参加者全員で行いました。

当日は血糖測定や尿糖の検査、保健・薬・運動・栄養相談なども随時行い、皆さん楽しんでお帰りいただけたようです。

期間中はロビーで糖尿病のパネルや食事療法の展示も行いました。今回は「外食メニューの上手な選び方」を中心にしましたが「実際に目で見ると分かりやすい」という方が多く、好評でした。

ヘルシーフェスティバル 風景画像1 ヘルシーフェスティバル 風景画像2