患者さん向け広報誌「Kニュース」No.14

インタビュー

限られた資源を有効に生かして

救急医療センター センター主任部長 七戸 康夫

救急医療センター センター主任部長 七戸 康夫

救急医療センターといいますと、交通事故や重症の患者さんが次々に救急車で運ばれてくる、騒然とした医療現場という印象がありますが、実際には、何人くらいの患者さんが受診されているのですか?

七戸 そうですね、昨年1年間で7万人弱、1日平均すると約190人の方が来られました。これは200床くらいの病院の1日の外来患者さんの数に匹敵します。

今年の元旦は、約500人の方が受診されました。

どのような患者さんが来られるのですか

七戸 発熱や腹痛など、比較的症状の軽い方から、脳卒中や心筋梗塞などで、救急車で搬送される方までさまざまです。

そのような環境の中で、先生はどのようなお仕事をされているのでしょうか?

七戸 私は麻酔科を専門として、重症の患者さんを助けたいという思いで21年間やってきました。しかし、救急医療に対する社会の要求は「いつでも、どんな症状にも、すぐに対応して欲しい」というようにどんどん増幅していて、私たち医療者との思いにずれが生じてきていることを最近感じます。

とは言われても、救急に来られた患者さんはすべて受け入れされていますよね。

七戸 そうですね。24時間、軽症から重症まで分け隔てなく受け入れ、全診療科に対応する体制をER型救急と呼ぶことがあります。アメリカのテレビドラマER(Emergency Room緊急救命室)ですね。これも、当院救急医療センターの大切な役割の一つだと思っています。

ただ、スタッフや診察室の数など、資源にも限度がありますので、患者さんの容体によっては、長時間お待ちいただくこともありますので、そのあたりはご理解いただきたいと思います。

「昼間に受診をしたけれど、よくならないので救急に来た」とおっしゃられる場合がありますが、病状はすぐには変わりませんので、しばらくは家で様子をみるということも必要です。

当院は地域の基幹病院として近隣の医療機関と役割分担・連携をして、皆さまの治療・健康増進を図りたいと考えています。普段からご近所にかかりつけの先生をお持ちになると、日常の病気に対する不安や心配はお気軽に相談いただけますし、緊急の場合でも、一度かかりつけの先生に診ていただき、救急受診の必要がある場合は、紹介状を書いていただくとスムーズに救急を受診していただけます。

救急車の場合はどうですか?

七戸 昨年1年間に約7千台受け入れました。1日平均20台、1時間に1台ということになりますが、実際には真夜中はあまり来ません。多いときには5分に4台くらい来て、入り口で渋滞していることもあります。

救急隊の方はしっかりとした救急医療の教育を受けられていて、私とホットライン(直通電話)で結ばれています。医師の眼、手として、逐一患者さんの状態を報告してくれますので、到着してからの対応がスムーズにいきます。われわれの仕事を補完してくれています。

ただ、ベッドが空いていなかったり、専門の医師が手術中などで対応できない場合は、お断りする場合もでてきます。

救急車をタクシー代わりに使ったり、救急を時間外診療と勘違いされている場合があるという話も聞きますが・・・

七戸 それはよくないですね。救急医療や救急車は、それが本当に必要な人が、必要な時に利用できるようでないといけません。ただ、どういう状態が緊急かというのが一般の方では判断が付かない場合がありますので、かかりつけの先生を持たれるということが大切になるわけです。

皆さんが譲り合って、限られた資源を有効に利用して健康に過ごしていただきたいと願っています。

トピックス

病院ボランティア -笑顔と温かいまなざしで-

緑のエプロンをかけて、にこやかに患者さんをご案内したり、再来受付や支払いの機器の使い方を説明してくださっているボランティアさんを見かけられたことがおありでしょうか。

倉敷中央病院では現在、41名の方が病院ボランティアとして活動してくださっています。患者さんに早く健康になっていただきたい、院内で気持ちよく過ごしていただけるようにと、医療情報の庭(患者さんの図書室)の運営、お花を生ける環境整備などにも携わってくださっています。

当院では、ボランティア活動は患者さんと病院を結ぶ大切な活動と考えています。ボランティアさんがいることにより、病院という非日常的な環境が緩和され、少しでもお家にいる時の気持ちになっていただけると思います。より多くのボランティアさんにお出でいただき、地域と病院の架け橋になっていただきたいと思います。

活動の概要は次のとおりです。

外来フロアで

外来フロア ボランティア外来患者さんに病院内のご案内、車椅子の介助や自動再来受付機、自動支払機の使い方の説明。また、入院される患者さんの病棟へのご案内など。

医療情報の庭(患者さん図書室)で

医療情報の庭(患者さん図書室)ボランティア患者さんやご家族に、病気や医療について学んでいただくスペースです。ここで知ったことを元に、職員とのコミュニケーションを密にしていただく目的で設けています。医療の専門書をはじめ病気予防、健康維持・増進、看護・介護などの本や雑誌・ビデオがあり、インターネットでの情報收集もできます。ボランティアさんは、図書の整理および本を探すお手伝いをしています。

園芸サークル

園芸サークル ボランティア9棟屋上庭園に、季節の色とりどりの花を育て、患者さんやご家族に憩いの場を提供しています。ここでは花壇の花植え、水やり、樹木の剪定、芝刈り、草取り、花がら摘みなど。

赤ちゃん同窓会

赤ちゃん同窓会 ボランティア当院で生まれた赤ちゃんが3か月後に集まる会があります。

ここでは、会場設営と後片付け、お母さまのお手伝い、一緒に来られる兄弟の遊び相手など。

手芸サークル

酸素ボンベなど、病棟で使用する器具のカバー、幼児用パズル・絵本等の作製。

病棟ボランティア

病棟ボランティア 患者さんの移動の介助・院内散歩などの生活支援、清拭用お絞りの準備など看護師のお手伝い。

詳しくはこちら

外来フロア 平日8時~16時
医療情報の庭 平日9時~16時
園芸サークル 随時
赤ちゃん同窓会 毎月第4土曜日 8時30分~16時
手芸サークル 随時(自宅活動)
通訳ボランティア 依頼時
病棟ボランティア 10時30分~

詳しくは電話でお問い合わせください

倉敷中央病院ボランティア事務局(遠藤・大磐)
086-422-0210(内線3928、3967)

ヘルシーリビング

骨が折れる話

はじめに

整形外科 主任部長 松下 睦

整形外科 主任部長 松下 睦

骨は硬くて丈夫、その骨が折れるのはものすごく強い力がかかったとき、たとえば車にひかれるとか、高いところから転落するなどの状況で起こると思われているでしょう。ところが、野球のボールを投げただけで腕の骨が折れたり、捻挫をしたら足首の骨が折れたり、骨が案外もろいものだということは、整形外科医になるとすぐに分かります。高齢になると、もっと簡単に骨が折れるという話です。

骨とは?

骨の組織はカルシウムとリン酸からできた結晶が、コラーゲン(結合組織の仲間には、みな含まれています)の網目の中にぎっしりつまった構造をしています。リン酸カルシウムの結晶は硬いのですがそのままではもろいので、コラーゲンがからまることで割れにくく(折れにくく)なっています。

骨はこのような硬くて割れにくい組織でできていますが、実は内部はスポンジのように穴だらけで、その穴には、骨髄といって血液を造る組織が入っています。

骨の成長と成熟

思春期まで骨はどんどん大きくなるとともに、そこに含まれるカルシウムの量も増えていきます。骨の中のカルシウムの密度(骨密度といいます)は成長が止まった後も増えて、30歳ぐらいでもっとも強い骨が出来上がります。この時期に食事の偏り(牛乳などカルシウムが多いものが嫌い)があると、骨の大きさは普通でも、カルシウム密度が少ない弱い骨になります。

このように、若い頃の食事や運動、その人の遺伝の影響で、骨の強さには大きな個人差ができます。

骨の老化

女性の場合は45歳頃から65歳頃まで、女性ホルモンの減少により骨の中のカルシウムが急速に失われます。この時期には、カルシウムを食べてもそれ以上のカルシウムが尿に出て行き、その差のカルシウムが体内から失われ、結局、骨のカルシウムが減ることになります。

ただし骨が小さくなるのではなく、骨の中の穴が大きくなる(骨の中がスカスカになるという感じです)ということで、これを骨粗鬆症(こつそしょうしょうと読みます)といいます。男性は女性と違いゆっくり減りますから、骨粗鬆症は女性に多く、また若い頃に骨が弱い人は早くから骨粗鬆症になり、ヤセた人は骨粗鬆症になりやすいと言われています。

骨が折れるとは?

丈夫な骨でもそれ以上の力がかかれば折れますが、骨粗鬆症では骨が弱くなるため、ずっと簡単に折れてしまいます。若い人の骨密度が70%以下になると急に骨折しやすくなることが分かっており、女性では65歳ぐらいから骨折が増えてきます。

たとえば、つまずいて手をついたら手首の骨折、尻餅をついたら背骨の骨折、足を捻ったら付け根(大腿骨頸部)の骨折と、この三か所が高齢者の骨折の代表選手です。

80歳代になるとさらに骨が折れやすくなります。植木鉢を持った時に少し腰の痛みがあり、次の朝には起き上がれなくなっていた、というような例です。転倒もしないで、常識では骨が折れると思われないような動作で骨折する人が増えています。

骨折の症状・診断の落とし穴

骨折をしたらその瞬間から非常に痛い、この常識はもちろん正しいのですが、骨粗鬆症性骨折には当てはまらないことがあります。

先の例では、植木鉢を持ってから強い痛みが出るまでに間があります。本人も周りの人も、自然に痛くなったと感じて骨折とは夢にも思いません。それを聞いた医師も骨折ではないと思い込んでしまいます。思い当たる原因のあるなしにかかわらず、強い痛みが足腰に生じたら、高齢者では骨折をまず考える必要があります

病院や診療所でレントゲンを撮影して、「骨は折れていません」と言われても安心できません。骨粗鬆症の骨折はレントゲンで見えないことがあり、CTですら分からないことがあります。さすがにMRIではわずかな骨折でも骨の色がはっきり変わるので見逃されることはありません(図1、2)。二週間たってもまだ痛い、痛みが逆にひどくなるようなら、もう一度レントゲンを撮影してもらいましょう。骨折のところで骨がズレて、レントゲンで見えることがよくあります。 「病院で骨折はないと言われた」という理由で、痛いのに我慢して動いてしまい、余計にひどくなるという不幸な例が実は多いのです。

87歳女性 レントゲン画像

図1. 87歳女性,激しい左股関節痛。
レントゲンでは骨折が見えません。

MRI画像

図2. MRIで左の骨の色が変わっています。(白矢印) 骨折でした。

骨折の治療

骨折の治療はどの骨が折れたかによってさまざまですが、一般的には足の付け根の骨折(大腿骨頸部骨折)は全く動けなくなりますので、手術が必要になります。手術により早くリハビリをすることができれば、また歩けるようになります。当院ではこの手術が年間250件程度行われています。

よくある背骨の圧迫骨折は、しばらく安静にしていると痛みが治まり、二週間ぐらいで何とか起き上がれて、徐々に歩けるようになります。このように一般的には圧迫骨折は直りやすくて手術の必要はないと言われています。

ところが、骨粗鬆症のひどい人で「圧迫骨折が直らない」例が増えてきました。骨折後何か月間も痛みが続き、まともに起き上がれないような場合は、骨折が固まっていません。そのまま放っておくと脊髄の神経が圧迫されて、下半身麻痺まで出てきます。ここまで進むと大きな手術が必要となります。圧迫骨折で痛みが続いた場合は、ぜひ専門医に相談してください。

骨折の予防

骨折の痛みが治まってやっと動けるようになったら、すぐにまた反対の足が折れた・・・・・・、というような例には事欠きません。一度骨折を起こすと二度目は非常に起こりやすく、三度目はもっと起こりやすくなるという連鎖反応が生じます。一度は何とかリハビリで回復できても、二回目はさすがに歩けなくなる人が増えてきます。つまり、一度骨折した人は次の骨折の予防が大事だということです。

予防には(1)転倒の予防と、(2)骨粗鬆症の治療(骨のカルシウムを増やす)という二つの面があります。家の段差をなくしたり、手すりをつけたりというのは(1)にあたります。(2)では食事のカルシウムだけでは無理で、薬が必要です。現在、毎日1錠(週に1錠の薬もあります)服用するだけで骨のカルシウムが増えて、骨折が半分に減るという薬がよく使われています。高齢の方で一度骨折を経験したら、骨粗鬆症の検査を受けてみてください。骨密度が若者の70%以下であれば、ぜひ薬を服用してください。なお、薬は長期(年単位)の服用を覚悟してください

特に女性は45歳ぐらいから急に骨のカルシウムが低下しますので、骨折がなくても50歳ごろに骨密度の検査を受けておくと、将来の骨折危険度が予想でき、骨折前からの予防が可能です。

おわりに

高齢者の骨折がどんどん増加しています。ご本人の苦痛、不便だけではなく、医療や介護に必要な手間と費用も含めて、深刻な事態になっています。食が細くてヤセた人、背中が曲がってきた人、身長が低くなってきた人、要注意です。ぜひ骨密度検査を受けてください。

QQ車 院内ニュース

QQ車は、皆さまに倉敷中央病院のできごとを運ぶ(お伝えする)コーナーです。

第2回地域がん診療連携拠点病院 市民公開講座開催 - 肺がんをテーマに -

当院は質の高いがん医療を全国どこででも受けられるようにするため、地域におけるがん診療の連携の推進を目的に設けられた地域がん診療連携拠点病院の指定を受けています。その役割の一つに、地域の皆さんにがんに関する情報をお知らせするという大切な役目があり、2月17日に「肺がん」をテーマに市民公開講座を開きました。

講演は当院人間ドック施設の総合保健管理センター副所長の光藤和代が「健診で見つかった肺がんについて」と題して、肺がんの原因の1位はタバコであること、肺がんにかかった場合は、女性の方が生存率が高いこと、喫煙開始年齢が低いほど、また喫煙量が多いほど肺がんになりやすいことなどを話し、肺がんのレントゲンやCT画像を紹介しました。続いての講演は、同センター医長の小笠原弘子の「禁煙外来の紹介」で、2名の方の卒煙体験談もありました。

また、同時に開催された健康フェア「メタボリックシンドロームについての体験コーナーとパネル展示」では、呼気一酸化炭素濃度測定、頸動脈超音波検査等が好評で、検査希望者の長い列ができていました。

市民公開講座開催 風景画像1 市民公開講座開催 風景画像2

肝臓病教室のお知らせ

日時:6月9日(土)、14時~15時30分
場所:第1会議室(外来棟3階)
テーマ:健診でみつかる肝臓病

心臓の突然死を救うAED(自動体外式除細動器)ボックス設置

AED設置 画像皆さん、AEDという言葉を耳にされたことがおありでしょうか。AEDは自動体外式除細動器といって、心停止の一番の原因である、重症の不整脈を治療する機器です。突然の心停止を救うためには、一刻を争う治療が必要です。そのため、最近は学校や公共施設でも設置されるようになり、ご覧になった方もいらっしゃるかと思います。

当院は病院ですので、必要な部署にはもちろん常備していましたが、昨年12月、新たに外来5か所に設置しました。同時に職員に対して定期的に研修会を行い、機器の使用法だけでなく救急蘇生の基礎を指導し、実践に備えています。

リバーサイド病院との間にシャトルバス運行

昨年9月1日より、患者さんならびにご家族の受診・お見舞いなどの際にご利用いただくため、当院とリバーサイド病院の間にシャトルバスの運行を始めました。費用は無料ですが、申し込みが必要です。

当院から乗車される場合は1-10総合案内で、リバーサイド病院から乗車される場合は10番中央受付で、申込書をもらってください。

出発時刻
倉中発 リバーサイド発
9:00 10:00
13:00 14:00
15:00 16:00