患者さん向け広報誌「Kニュース」No.16

インタビュー

地域の医療機関と連携して、患者さんの診療を行います

副院長 山形 専

副院長 山形 専

倉敷中央病院は、岡山県から地域医療支援病院の承認を受けられたそうですが、これは、どんなことをする病院なのですか?

山形 以前は、病気になって病院にかかると、その病気が治るまで、その病院で治療を受けていました。しかし最近は、よりよい医療を効率的に提供するために、地域の病院や診療所が役割分担をして、患者さんを診療する、地域完結型医療が進められています。

そうした中で地域医療支援病院とは、地域の医療機関から紹介を受けた患者さんを中心に、専門的な検査や治療、手術などを行う病院のことをいいます。また、救急医療を行うことはもちろんですが、ベッドや医療機器を他の医療機関の先生方が利用できるようにしたり、地域の医療従事者の資質向上のために研修会を行います。

紹介状がないと、診察してもらえないのですか?

山形 最初に皆さんに、「かかりつけ医」を持たれることをお勧めします。かかりつけ医というのは、ご家族の日常的な診療をしてくださる身近なお医者さんのことです。気軽に受診してさまざまな健康上の相談ができますし、専門的な検査や治療、入院が必要な時は、適切な病院を紹介してくださいます。その紹介状に基づき、もう一歩深い、専門的な検査・診断・診療をするのが私どもの役割です。

当院には、昔からファンがいらっしゃって、風邪やケガ、ちょっとした体調不良の場合も受診に来られます。これまで当院を支え、信頼してくださっている方々で、ありがたいことですが、当院での検査・治療が必要な方に、分かりやすく詳しく説明し、納得して医療を受けていただくことが今後の姿と考えます。急激に、いつも必ず紹介状を、ということは難しいと理解していますが、役割分担ができるよう、地域の医療機関とは、普段からしっかり連携をしていますのでよろしくお願いいたします。

急に体調が悪くなった場合はどうすればいいのですか?

山形 理由も分からずに急に激しい頭痛がしたり、心臓が苦しくなったりすると、不安ですね。またその他の疾患につきましても、退院後や外来受診後に何か不安のある場合は、遠慮なく、直ちに当院外来または救急医療センターにお出でください。

昨年1年間に当院は、救急患者さんを約72,000人、救急車を約7,300台受け入れました。救急患者さんを責任を持って受け入れることが、市民の皆さんに対する一番の貢献ではないかと考えています。

それを聞いて安心しました。

山形 現在建設中の建物には、規模・体制とも充実した救急医療センターを造ります。また、それまでの間、対応できるよう、現在の救急医療センターも、拡張工事を始めました。

ただ、救急診療も患者さんが多く、救急が救急になっていないとお叱りを受けることがあります。救急にお出でになる場合は、そのあたりのことも、ご考慮いただければと思います。

最近は、入院してもすぐに退院するように進められますが・・・

山形 そうですね。当院での治療を必要とされ、入院を待っている方が大勢いらっしゃいます。そうした患者さんのために、当院での治療が終わられた方には、退院や転院を進めています。患者さんのご希望にそった転院先をお探ししますので、早目にご相談ください。

転院や退院をされたからといって、当院の診療が受けられなくなるというのではありません。当院での検査や治療が必要になったときは、転院先の先生や、かかりつけ医の先生が、紹介をしてくださいます。

最近は、当院と地域の先生が協力して患者さんを診療するために、地域連携パスというものを作っています。パスには患者さんの治療の過程や薬、容体などが記入されていますので、パスを通じて患者さんの治療が一環して行われるわけです。その他、パスがなくてもいろいろな方法で地域の医療機関と連携しています。

新しい医療の流れをご理解いただいて、ご協力のほど、よろしくお願いいたします。

トピックス

新棟建設

このたび倉敷中央病院は、当院の役割とあるべき姿を見失わず、創立以来の理念である社会貢献を実現するため、「質の高い効率的な医療」「地域完結型医療」等を実践すべく、11の課題とその解決のための施策を盛り込んだ、今後5年間の中期計画を策定しました。
この中期計画を実行する一環として、5月7日、新棟の建設を開始しましたのでご紹介します

当院はこれまで、地域基幹病院として地域住民の皆さま、ならびに地域医療機関に信頼される病院づくりを目指してきました。最近では外来の全面増改築、心臓病センター、内視鏡センターならびに病棟の新築およびリニューアル、放射線センターの改修および最新の画像検査機器の導入などを行い、地域の方々に、高度な医療を安心して受けていただける医療環境の整備を行ってきました。

今回の建設にあたっては、国の医療計画の見直しの中で、4疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)5事業(救急医療、災害時医療、へき地医療、周産期医療、小児医療)の確保のために医療連携体制の整備が求められている今日、当院がその機能を十分に果たし、近年、急激に患者さんが増加している急性期医療への対応をよりスムーズに行えるよう基本計画を作成しました。

新棟建設 イメージ画像

新棟建設工事の主な内容は次のとおりです。

急性期病院の核となる手術センター(21室、既存のものを含めて28室に)を2階に、4階に集中治療室 38床(ICU 12床、NCU・SCU:脳神経・脳卒中集中治療室14床、EICU:救急患者集中治療室12床)を設けます。

1階には救急医療センター、入退院支援センター、画像診断部門を設けます。

当院は昨年、救急患者さんを約72,000人、救急車を約7,300台受け入れました。現在は救命救急患者さんと一般救急の患者さんを同じスペースで診療していますが、新しい救急医療センターではそれをゾーン分けし、それぞれに必要とされる医療を、スムーズに行えるようにします。

入退院支援センターは今回、新たに設置されるもので、当院に入院される患者さんが、外来での入院準備段階から、入院され、当院での急性期医療を終え、自宅や次の医療機関に移られるまでを一貫して支援する部署で、患者さんの退院後も見据え、地域の医療機関と役割り分担をして、地域完結型の医療を担う要となる施設です。

地階の核医学検査(RI)部門には、がん検診に威力を発揮するPET-CT を3台(現1台)に増設可能とします。

5~13階は病棟で各階42床(計378床)、当院の使命である高機能の医療が行えるよう臓器別センター化(脳・神経センター、呼吸器センターなど)を図ります。

新旧あわせた全病棟を再編成し、消化器センター、緩和ケア病棟や、乳がん・婦人科がんの患者さんのための女性専用病棟などを新設します。また、いずれの病棟も、ご家庭と変わらない環境で過ごしていただけるよう、アメニティーに配慮した設計となっています。

これらの建物は2期にわたって建設され、1期工事の竣工が平成22年9月、すべての工事が終わるのは平成24年7月の予定です。

ヘルシーリビング

喫煙と耳鼻咽喉科疾患

耳鼻咽喉科・頭頸部外科 主任部長 土師 知行

耳鼻咽喉科・頭頸部外科 主任部長 土師 知行

耳鼻咽喉科で扱う領域を「頭頸部」といい、眼球、脳を除いた顔面頭部から頸部全体が含まれます。頭頸部には呼吸の通り道である鼻腔、口腔、咽頭、喉頭が存在し、喫煙により直接たばこの煙や有害物質にさらされます。そのため、喉頭がんをはじめとする頭頸部がんや咽頭、喉頭の良性疾患の多くは、他の部位と比較しても喫煙との関連が特に強いことが特徴です。

頭頸部領域の疾患で、喫煙との関係が最も懸念されるのががんです。世界保健機関(WHO)による「喫煙とたばこ煙」のヒトに対する発がん性評価では、頭頸部がんのうち、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、鼻・副鼻腔がんが喫煙と因果関係があるとされています。また、喫煙とがん死亡率に関する日本の調査では、喉頭がんの場合、非喫煙者と比べ喫煙者ではがんの危険率が32.5倍と高くなっています。

さらに、がん患者の中で喫煙が原因であると考えられる割合は96%と、がん全体の中で最も高く、非喫煙者はまず喉頭がんにならないといっても過言ではありません。口腔・咽頭がんもまた同様に喫煙者が非喫煙者と比べ約3倍罹患しやすいと報告されています。

喫煙と関係のある主な疾患

1. 喉頭がん

喉頭がんは頭頸部がんの中で最も多く、約25%を占めています。60~70歳代に多くみられ、男性が女性の10倍と圧倒的に男性に多いことが特徴です。また、前に述べたように、長年の喫煙者に非常に多く、たばこをすわない人がかかることはまれです。

喉頭がんの約60%は声帯という声をつくるところに発生するため、かすれ声が症状として現れやすく早期に発見されやすいのですが、進行すれば高度のかすれ声だけではなく、呼吸がしにくくなったり、ものが飲み込みにくくなったりします。1か月以上かすれ声が持続する、特に長年にわたり喫煙されている方では、すみやかに耳鼻咽喉科専門医を受診されることをおすすめします。

治療は、声帯に限局する初期のものでは放射線治療が主体となります。初期のがんの場合、5年生存率は90~95%と他のがんに比べて高く、早期発見が特に重要となります。しかし、進行がんの場合は、放射線治療や抗がん剤では根治が望めないため、手術が主体となります。

また、進行がんでは発声機能をそのままの状態で残すことが難しくなります。がんの広がりが限られているときは、喉頭の一部を切除して発声機能を残すことも可能ですが、食事の際にムセを生じることがあります。がんがかなり広がっている場合は、喉頭を全部摘出する手術を行います。そのため、術後は発声機能を失うことになります。

2. 口腔・咽頭がん

口腔・咽頭がんとは、口腔・舌、上咽頭、中咽頭、下咽頭がんを総称したものです。この領域は食べ物の通り道でもあるため、発がんには喫煙とともに飲酒が大きくかかわっています。また、頸部のリンパ節に転移しやすいことも特徴のひとつです。

この部位は会話をしたり、ものを食べたりするのに大きくかかわっている部位であるため、がんの治療によってその機能が損なわれることになります。手術により欠損した部位には、腕や腹部または大腿部より血管のついた皮膚を採取し再建したり、おなかの腸を移植して食物道をつくったりします。

しかし、進行したがんの場合、高度の嚥下障害が残ることは避けられず、進行した下咽頭がんでは嚥下機能は保たれるものの喉頭がん同様に術後は発声機能を失うことになります。

3. ポリープ様声帯および慢性咽喉頭炎

ポリープ様声帯は声帯全体が浮腫により腫脹するもので、喫煙が原因とされています。長期にわたって喫煙を続けている女性に発症することが多い病気です。症状としてはかすれ声で、低くて太い声になりますが、腫脹が高度になれば呼吸がしにくくなることもあります。治療は顕微鏡を用いた声帯の微細手術で、声帯内に貯留した粘液状の内容物を除去します。

また、喫煙を続けると、たばこの煙で咽頭や喉頭の粘膜が長期に刺激を受け、慢性的な炎症を生じ、のどの違和感やかすれ声が生じます。咽喉頭の粘膜は発赤しており、これが慢性咽喉頭炎です。当然のことながら治療は禁煙が第一となります。

禁煙治療のすすめ

頭頸部がんでは、がんの治療後も喫煙を継続すると、同じ部位や別の部位でまたがんが発生するリスクを高めることになります。そのため、たとえ最初のがんの治療がうまくいったとしても、喫煙を続ければ生命の予後が著しく悪くなるというわけです。

一方、最初のがん治療後であっても禁煙を行えば続いて発生するがんの割合が低下し、生命予後が改善することが分かっています。5~10年間禁煙すればそのリスクは半減し、15年では非喫煙者と同じレベルに達するとされています。

当然のことながら、頭頸部がんになる前に禁煙できれば、がんのかなりの部分が予防できると考えられます。禁煙治療のポイントとして最も重要なことは、喫煙が頭頸部がんをはじめとした耳鼻咽喉科領域の疾患に深く関与していることを十分理解していただき、できるだけ早く禁煙を実行することにあります。

最近は禁煙外来をもうけている医療機関も増えており、当院でも総合保健管理センターで保険診療で行っています。喫煙を続けている患者さんに対して禁煙の動機を高め、それを支援していくことも私たち耳鼻咽喉科医の役目と考えています。

禁煙外来のご紹介

総合保健管理センター 副所長 小笠原 弘子

禁煙外来では約12週間にわたって治療を行います。従来のニコチンパッチに加えて、6月からチャンピックス(商品名)という内服薬も処方できるようになりました。チャンピックスはニコチンではありませんので、今までニコチンパッチを使用することが難しかった循環器疾患のある方にも使用することができます。また内服から一週間はタバコを吸っても良い薬です。

タバコがやめられないのはニコチン依存症という病気です。ニコチンパッチやチャンピックスという禁煙補助薬を使用することによって、禁煙に伴う禁断症状を多いに軽減することができます。すでに200名を超える方が禁煙外来を受診され、禁煙に取り組まれました。禁煙したい皆さま、私たちと一緒に禁煙に取り組みませんか?

禁煙治療コースの違いは?

ニコチンパッチ(貼り薬) チャンピックス(内服薬)
薬剤使用期間(標準) 約8週間 約12週間
通院期間 (受診/処方回数) 約12週間
(受診5回/処方3回)
約12週間 (受診7回/処方6回)
※新薬のため2週間ごとの通院が必要です。
作用 ニコチン離脱症状を軽減します。 ニコチン離脱症状を軽減し、喫煙による満足感も抑えます。
主な注意点など 皮膚アレルギー・循環器疾患のある方などは症状によって使用できない場合があります。 腎疾患のある方・心療内科処方薬内服中の方・機器操作をされる方などは、症状によって使用できない場合があります。
総費用 (保険料3割負担の場合) 約40,000円(約12,000円) 約60,000円(約18,000円)

診療日

月曜~金曜日… 15:00~ 土曜日… 10:00~

予約制ですので、お電話でご予約ください。
(電話:総合保健管理センター 086-422-6800

QQ車 院内ニュース

第3回地域がん診療連携拠点病院 市民公開講座 -「大腸がん」をテーマに-

第3回地域がん診療連携拠点病院 市民公開講座 風景画像当院は質の高いがん医療を全国どこででも受けられるようにするため、地域におけるがん診療の連携の推進を目的に設けられた、地域がん診療連携拠点病院の指定を受けています。その役割の一つに、地域の皆さまにがんに関する情報をお知らせするという大切な役目があり、2月16日に「大腸がん」をテーマに市民公開講座を開催しました。

講演は、「わかりやすい大腸がんの話」と題して、当院人間ドック施設、総合保健管理センター 副所長、菊辻徹が食生活と身体活動が及ぼす影響について、便潜血検査が陽性になった場合の精密検査の重要性、大腸ポリープの早期発見が大腸がんの予防につながることなどを話しました。

会場横のフロアで同時に開催された健康フェア 風景画像続いて同センター 医師、木村桂子の「正しく知ろう認知症」と題する講演があり、その後、活発な質疑応答が行われ、関心の高さが伺えました。

会場横のフロアで同時に開催された健康フェアにも多数の方が来られ、血圧・血糖値測定、脳いきいき検査のほか、メタボリックシンドロームと認知症に関するパネルにも関心を寄せられていました。

看護の日 記念行事 -積極的な質問に、健康に対する関心の高さが-

看護の日記念行事 講演5月10日、当院外来棟3階にある大原記念ホールで「看護の日 記念行事」が開催されました。「看護の日」は、5月12日のナイチンゲールの誕生日に因んで制定されたもので、当院では看護の心を地域の皆さまに伝え、気軽に看護にふれていただく機会として、毎年イベントを行っています。

今年は院長補佐・整形外科主任部長の松下睦が、「背骨の話」と題した講演会を行いました。地域の皆さまの興味・関心の高いテーマであったのか、募集人数を超える180名の申し込みがありました。講演は、脊椎の構造や神経の話をとてもわかりやすく、ユーモアを交えて説明したので「大変勉強になった」「脊椎の大切さを再認識できた」と大好評でした。

看護の日記念行事 骨密度測定看護師が行った看護相談・介護相談は順番待ちが絶えず、予定時間を過ぎても並んで待つ方がいらっしゃるほどでした。食事療法や運動療法についての相談や、介護保険の活用の仕方についてなど、多数の質問を受けました。

また、測定コーナーでは今年初めて行った超音波骨評価に長い列ができました。測定後は結果をグラフ上で確認して安心されたり、日頃どんなことに気をつければよいですか、と尋ねられたりしていました。

アンケートには今後もこのような催を続けてほしいという意見が多数あり、地域の方々に自分の健康状態や日常生活の注意点について再認識してもらうと同時に、当院を知っていただくよい機会になったのではないかと思います。