患者さん向け広報誌「Kニュース」No.17

インタビュー

医療の質向上と患者さん参加の医療を目指して

院長 小笠原 敬三

院長 小笠原 敬三

4月に院長に就任されました。
自己紹介をお願いします

小笠原 高松市の出身です。小学生の頃、二度も大病をして健康の大切さを知ったことが、医者を意識したきっかけでしょうか・・・

大学は京都大学で、肝臓・胆道・膵臓疾患を中心とした腹部外科を学び、特に膵がん治療に興味を持って研究しました。

東町で道標を見つけたことから、鴨方往来を知り、江戸時代の遺跡や町並みに興味を持ちました。東京に行くと、そうした遺跡や安藤広重の「名所江戸百景」に描かれた場所を尋ねたり、公園として開放された大名庭園を散策します。

中央病院はいつからですか。

小笠原 昭和56年に着任しました。外科医は藤岡十郎院長以下9名で、夜遅くまで手術をしていました。当時外科では胃・十二指腸潰瘍、食道静脈瘤など消化管出血の患者さんを数多く手術していましたが、私自身は胃・大腸がん以外には膵・胆道・肝臓・食道がんの患者さんを多く担当しました。

専門の外科以外には、どのようなことを・・・

小笠原 平成11年に外科主任部長に就任後、少しずつ病院運営に関わってきました。カルテや検査記録の記載・管理・開示から始め、医療の標準化を目指すクリティカルパスや、診療報酬包括支払制度(DPC)の開始とともに、「診療の質管理」の担当へと広がりました。

また、ジェネラル・リスク・マネージャーとして、医療安全管理室と協力して、医療事故防止、職員の安全研修会、事故想定訓練などの開催にかかわりました。当院は地域がん診療連携拠点病院として、岡山県西部に質の高いがん診療を提供するために、がん診療に従事する医師などの医療者の研修や、県民の皆さんへの情報提供などを行っていますが、そちらの方も責任者として対応していました。

今後は、どのようなことに取り組まれますか?

小笠原 病院として「医療の質」の向上を第一に考えています。医療の質といいますと、治療困難な患者さんに対する「質の高い医療」と、患者本位で安全な医療を効率的に提供する、いわゆる「良質の医療」という二つの面あります。これを実現するためには、医師や看護師その他の医療者が最新の医学知識や医療技能の熟達に努め、医療情報を共有し、協調して医療を実施する必要があります。いわゆるチーム医療です。この実現に努めます。

また、質の高い良質な医療を病院全体として提供するために、「医療の質管理室」を設置します。同じ診療科で、医師によって医療にバラツキがないように標準化を行い、診療方針や各種のルールに則って診療を行っているかどうかを評価しながら、必要とあれば教育的指導を行っていく組織です。

当院にはすでに医療安全管理室(医療安全の推進)、感染制御チーム(院内感染防止など)、栄養サポートチーム(栄養改善、床ずれ予防)、緩和ケアチーム(疼痛緩和、症状緩和)、臨床研究センターがありますが、これらの組織と連携をとりながら、医療の質の向上を図っていきたいと考えています。

患者さんとの関係は、どうなりますか?

小笠原 医療は技術が高度になればなるほど複雑で理解しがたく、また、結果を確実に予測することが難しくなってきます。また、病気は流動的で、状況は常に変化しています。健康を回復する技術や薬はありますが、技術には合併症、薬には副作用があります。それを十分認識した上で治療に利用しなくてはなりません。私たち医療者は最善を尽しますが、結果は予測や期待と大きく異なることもあります。まず、このことをご理解いただきたいと思います。

病気に対しては、患者さんと医療者が協働で闘うことが必要です。皆さんには、積極的にご自身の医療への参加をお願いします。

私たち医療者側は病状や治療法をまとめた文書・ビデオ・DVDなどを準備し、分かりやすい説明に努めます。皆さん方も「医療情報の庭」などを利用して、ご自身でも学習してください。互いに話し合って、情報を共有して治療を進めていきましょう。患者さんから積極的に質問してもらえるように、医師・患者関係を良好に保つよう努めたいと思います。

ヘルシーリビング

新型インフルエンザへの備え -情報を正しく理解し、冷静な対応を-

呼吸器内科 主任部長 石田 直

呼吸器内科 主任部長 石田 直

4~6月に起こった新型インフルエンザの流行は収束し、マスコミも含めたパニック状態は一旦収まりました。しかしながら、6~8月に冬季を迎えた南半球の国々では、多くの患者発生が報告されており、国内でも8月から新型インフルエンザ患者の発生が急増して、死亡例も次々報告されるようになりました。岡山県は今まで比較的患者の発生が少なかったのですが、おそらく秋から冬にかけて、本格的な大流行が来るものと予想されます。1シーズンで全人口の25~30%が罹患するのではないかとの予測もあります。

当初、今回の新型インフルエンザは低毒性であり、発症しても軽症で済むとの認識がみられていました。初期の日本での対応が、H5N1のトリインフルエンザ由来の新型ウイルスを想定したものであったため、過剰な防御設備や検疫が行われた反動で、特別なことは要らないといった風潮もみられました。しかし海外の報告をみていると、死亡率は通年の季節性インフルエンザよりもかなり高く、決して軽症とはいえません。特に若年者であっても、急性の呼吸不全を呈して人工呼吸を含む集中治療が必要になる例や、糖尿病や慢性の呼吸器疾患を持つ人、妊婦が重症化する傾向がみられます。

大流行時はすべての医療機関が対応

今後、日本でも流行が拡がり、すべての年齢層に発症がみられるようになると、若年者での重症例に加えて、高齢者において、細菌性肺炎を続発して重症化する例が急増すると思われます。たとえ重症化率や死亡率が低くても、罹患する人が桁違いに多いため、必然的に重症例が多くなります。そのような状況下では、全国の病院はいずれも外来、入院とも患者が殺到し混乱が生じるものと思われます。日本中で入院ベッドが不足するとか、人工呼吸器が足りなくなるといった事態が起こりかねません。少数の施設で対処することは無理であり、すべての医療機関が対応する必要があります。

こうして秋から冬にかけて大流行が予想される中、各医療機関ではガイドラインを作成して体制の整備を行うことや、治療薬を備蓄するなどの準備を進めていますが、急激な事態の変化が生じた時には、対応しきれない可能性もあります。さらには、タミフル耐性のウイルスがどの程度増加するかなど、予想のつかないこともまだまだあります。新型に対するワクチンも生産され始めましたが、供給量が少なく、すぐに多くの人に接種できるわけではなく、優先順位を決める必要があります。

感染予防には、外出・人ごみを避けましょう

では、このような状況のもと、一般の方々はどのような対策をとればよいのでしょうか。もし、流行がおこってインフルエンザの蔓延状態となったときには、不要不急の外出は避けるべきです。通勤や通学も時間をずらして、人込みの少ない時間帯を選択することが望ましいとされています。医療機関には数多くのインフルエンザ患者が受診していることが予想されますので、インフルエンザでない人が受診することにより感染する可能性は十分あり得ます。よって、急がない受診や、入院患者へのお見舞いなどはできるだけ避けるべきです。

熱や咳で受診する場合はマスクをして

もし、発熱や咳嗽などの呼吸器症状があり受診される場合には、マスクを着用して受診していただき、窓口で予め症状を伝えましょう。蔓延期には、病院はインフルエンザ患者のためにベッドを用意する必要があります。検査入院など急を要さない入院は延期になる可能性もあります。もし、かかりつけの先生を持っておられる場合には、まずその先生に相談されることが良いと思います。

咳で飛び散ったウイルスを吸って感染します

無症状の人が日常の場所でマスクをすることが有効かどうかについては議論があります。欧米の国々では、一般の場所においてマスクをしている人はほとんどみかけません。インフルエンザは飛沫感染なので咳によりウイルスの含まれた拡散したしぶきを吸入することで感染が起こります。ヒト-ヒト間の距離をとること(約1~2m)により大抵の場合は防ぐことができますが、電車やバス内では近接する場合もあり得ます。大事なことは咳エチケットを守ることです。咳やくしゃみが出る場合はティッシュ等で受けて、そのティッシュは他の人が触れないように捨てましょう。咳が多い人が外出される場合は、マスクを着用したほうが良いと思われます。

マスクとうがい

マスクを着用する場合には、正しくつけることが必要です。鼻と口を必ず覆うようにして、鼻部分を鼻筋にフィットさせます。マスク表面には病原体がついている可能性もありますので、外す時や廃棄する時は、マスクの表面に触れないようにしましょう。原則、使い捨てで1日1枚が目安です。

また外出から帰ったら、まずうがいと手洗いを行いましょう。うがい自体はインフルエンザを防がないといわれていますが、他の気道感染症の予防には有効です。マスクを外した時も、手洗いする方が良いとされています。

インフルエンザに罹ったら、軽症は自宅安静が第一です

もしインフルエンザに罹られたならば、軽症であれば医療機関で投薬をうけ、自宅で安静に過ごすことが求められます。できるかぎり外出はやめましょう。就寝する部屋は別にするなど、家族とはできるだけ接触を少なくして、家族内感染を防ぎましょう。家族の方は、患者さんに接する場合はマスクを着用しましょう。

現在のところ、新型インフルエンザについては、タミフルやリレンザといった抗インフルエンザ薬が有効であり、これらの薬剤を発症早期から用いることが重症化を防ぐといわれています。

高齢者、心臓・肺に病気のある方、免疫低下の方は肺炎に注意

高齢者や心臓・肺に基礎疾患をもっておられる方、免疫状態の低下している方は、インフルエンザ罹患後の、二次的な肺炎発症が問題となります。このような人については、肺炎球菌ワクチンの接種が勧められます。これは肺炎すべてを予防できるものではありませんが、肺炎の最も多い原因である、肺炎球菌による肺炎の発症および重症化を抑えるといわれています。ただし、日本ではこのワクチンは現在のところ一生に1回しか接種できず、また保険適用がないので自費となります。ワクチンの効果は約5年程度継続するといわれています。このワクチンも国内で品薄状態となっていますので、リスクの高い人や高齢者への接種が勧められます。

咳エチケット 画像

QQ車 院内ニュース

ボランティア総会開催 -活動範囲が広がり、内容も充実-

ボランティア総会開催 画像倉敷中央病院では、約60名のボランティアさんが外来、医療情報の庭(患者さん図書室)、病棟、園芸、手芸、イベントの開催などいろいろな分野で活動してくださっています。

4月18日に行われた平成20年度総会には、ボランティア会員32名、病院職員12名が出席しました。

常務理事 相田より会員の皆さまへ日々の活動のお礼・感謝の言葉が述べられ、病院の現状・今後の計画について紹介がありました。続いて表彰状・感謝状の贈呈がありました。平成20年度の活動実人数は78名で、活動回数2,682回、活動時間7,990時間と前年度より大きく伸びました。

総会に続く意見交換では、会員の方より患者さんの目線で病院への質問・要望などがあり、病院からは質問に対する説明や検討させていただきたいとの回答がありました。

総会終了後「どんな医者を育てたいですか?倉敷中央病院における医師養成の現状」という演題で総合診療科主任部長 福岡敏雄から臨床研修の目的・必修化・義務化の流れや、研修施設としての当院の現状についての講演が行われました。

ボランティアさんは病院に地域の風を送り込み、患者さんに寄り添い安らぎを与えてくださる方です。ボランティア活動に関心をお持ちの方は、ご連絡ください。

看護の日 記念行事 -積極的な質問に、健康に対する関心の高さが-

看護の日 記念行事 画像近代看護を築いたフローレンス・ナイチンゲールを記念して、誕生日(5月12日)を含む一週間を看護週間として毎年、各地でさまざまなイベントが行われています。当院でも地域の方々をお招きし、記念行事を開催しています。今年は5月13日と平日でしたが、82名の方が参加されました。

はじめに看護部長の黒瀬正子から、当院の役割や看護体制、ナイチンゲールの功績などの説明がありました。

続いて「肝臓を健やかに」という演題で、消化器内科部長 下村宏之が、肝臓の役割や肝臓病の種類など、画面を使って分かりやすく話をしました。健康食品による肝障害の危険性についての説明では、参加者から驚きの声が上がっていました。講演後は参加者からも積極的に質問があり、健康に対する関心の高さがうかがえました。

最後に看護師による超音波骨評価や体脂肪測定、二股聴診器による血圧測定、健康相談を行いました。今年度は看護相談・介護相談に加えて栄養相談も行いました。パンフレットを参考に自分の測定結果と比較されたり、ご自身やご親族の健康問題、介護保険制度について相談されたりしていました。

参加された方からは「毎年、楽しみにしている」といったうれしいご意見もありました。今後も地域の皆さまの健康の保持・増進に努めます。