患者さん向け広報誌「Kニュース」No.18

インタビュー

かかりつけ医を持ちましょう -地域医療連携について-

総合相談・地域医療センター 担当 松岡 孝

総合相談・地域医療センター 担当 松岡 孝

最近、地域連携ということばをよく聞きますが、これはどういうことなのでしょうか?

松岡 最近の医療は非常に高度、専門的になっているので、これまでのように、病気になってから元気になるまで、一つの医療機関で治療を受けるということが、難しくなってきています。地域の開業医さんや病院がそれぞれの専門を生かして、役割分担・協力して患者さんの治療にあたるというのが、地域医療連携です。

倉敷中央病院は、どのような役割をするのですか?

松岡 地域で開業されている先生、例えば内科の先生は、患者さんを総合的に診療できるようにと、幅広い分野の知識をお持ちです

一方、当院では高度化・専門化された医療に対応できるようにと、医師は最新の医療知識と技術の習得に力を入れており、高度な医療に対応するための医療機器・設備を整えています。

そこで、地域の開業医の先生方からご紹介をいただいた患者さんに専門的な検査を行い、診断をして、患者さんと相談しながら今後の治療を決め、当院で必要な専門的な治療や手術を行うことが当院の役割と考えています。

では、病気になったらどうすればよいのですか?

松岡 まず、お近くの先生に診ていただいてください。先生は、豊富な経験と幅広い知識で診療してくださいます。そして、より専門的な検査や治療が必要な場合には、当院に紹介状を書いてくださいますので、それをもって受診してください。紹介状があると、受診の予約を取ることができますので、スムーズに受診していただけます。この点からも、かかりつけ医を持たれることをお勧めします。

かかりつけ医とはどのようなものなのですか?

松岡 ご家族の日常的な診療をしてくださる、身近かなお医者さんのことです。慢性的な病気やかぜ、気になる症状などを気軽に相談できます。ご家族も含めて病歴、病状、健康状態、生活環境や嗜好まで把握していただけるので、いざというときに、すぐに対応していただけます。

また、夜や土曜日も診療されているところがありますので、受診しやすく、待ち時間も少ないと思います。

専門的な検査や治療、手術が必要な場合は、当院を紹介してくださいます。紹介状には患者さんのこれまでの経過などが詳しく書かれているので、検査やお薬の重複がなく、当院での診療がスムーズにできます。

そして、当院での治療が終わっても、引き続いての治療やお薬、経過観察が必要な場合は、かかりつけ医の先生に診ていただきます。

かかりつけ医を持っていない場合は、どうすればいいですか?

松岡 お近くの診療所などの先生にお願いするのがよいですね。ご自分も含めご家族全員の命を預けるのですから、何でも気軽に相談でき、信頼関係の築ける先生を見つけられることをお勧めします。当院の地域医療連携室でも相談いただけます。

かかりつけ医の先生と倉敷中央病院は、どのようにして、連携をとられて いるのですか?

松岡 当院では、地域の先生方と勉強会や情報交換の場を持つなどして、連携を深めています。また、当院と地域の先生方との連携をスムーズに運ぶ連携係りとして地域医療連携室があります。

私の専門の糖尿病では、「糖尿病連携パス」を作っています。パスには患者さんの治療計画や経過、検査結果などが記載されています。これを利用して、普段はかかりつけ医の先生に診ていただき、半年に一度当院にきて、かかりつけ医の先生のところではできない検査をしたり、半年間の検査データをみて、診療のアドバイスをさせていただいたりして、患者さんの病状に応じて、必要な治療が切れ目なく提供できるようにしています。

連携パスは、胃・大腸・肝臓・肺・乳腺のいわゆる五大がん、脳卒中、大腿部頚部骨折などの疾患に作られていて、主な病気については、今後も作成していく予定です。

地域の皆さんに、質の高い医療を安心・安全に受けていただくため、地域の医療機関と連携していきます。

トピックス

ボランティア活動15年目に

緑のエプロン 画像倉敷中央病院では、患者さんに快適な環境で安心して受診していただきたいという思いから、平成9年10月、ボランティアさんの受け入れを始め、15年目を迎えました。

5名の病院OBで、外来の患者さんのご案内・車椅子の介助から始まったボランティア活動ですが、患者さん用図書室「医療情報の庭」、病棟とその活動範囲を広げ、現在では、56名の方が、緑のエプロンをつけた「グリーンはぁと」のメンバーとして、笑顔と温かいことばで活躍してくださっています。

ボランティアさんは、患者さん・地域と当院を結ぶ大切なかけはしです。より多くの方にボランティア活動に参加していただいて、一緒に病院を良くしていきたいと考えています。
活動の概要をご紹介します。

外来フロア

外来フロアで患者さんをご案内 画像

外来患者さんに病院内のご案内、車椅子の介助や自動再来受付機、自動支払機の使い方の説明。また、入院される患者さんの病棟へのご案内など。

医療情報の庭(患者さん図書室)

医療情報の庭で図書管理を行っています 画像

患者さんやご家族に病気について学んでいただくスペースです。
医療の専門書をはじめ病気予防、健康の維持・増進、看護・介護などの本や雑誌・ビデオ・DVDがあり、インターネットでの情報収集もできます。ボランティアさんは、図書の整理および本を探すお手伝い。

園芸サークル

園芸サークルでは院内緑化に貢献 画像

9棟屋上に、季節の色とりどりの花を育てて、患者さんやご家族に憩いの場を提供しています。ここでは花壇の花植え、水やり、樹木の剪定、芝刈り、草取り、花がら摘みなど。

手芸サークル

手芸サークルの作品 画像酸素ボンベ・ポータブルトイレなど病棟で使用する器具のカバー、小さく生まれた赤ちゃんの洋服、幼児用パズル・絵本などの作製。

病棟ボランティア

入院中の患者さんの車椅子でのリハビリ送迎、清拭用お絞りの準備など看護師のお手伝い。

ひまわりの会

院内学級や脳卒中病棟での昔話の読み語り、紙芝居や詩の朗読など。

外来フロア 平日 8時~16時
医療情報の庭 平日 9時~16時
園芸サークル 随時
赤ちゃん同窓会 毎月1回 第4土曜日 8時30分~16時
手芸サークル 随時
ひまわりの会 第一水曜日 13時~
病棟ボランティア 平日 9時30分~16時
保育ボランティア 平日随時(予約制)
どんぐりの会 偶数月 第2土曜日 12時~16時30分

※ご希望の活動日、活動時間はご相談させていただきます。
※学生の方は、休暇中の短期ボランティア活動も可能です。

詳しくは電話でお問い合わせください
倉敷中央病院ボランティア事務局 (三宅・大磐)
086-422-0210(内線3928・3967)

ヘルシーリビング

冬の感染症(かぜ症候群と感染性胃腸炎)の注意点と予防-手洗いが大切

かぜ症候群

小児科 主任部長 新垣 義夫

小児科 主任部長 新垣 義夫

冬になりますとせき(咳嗽)、鼻水(鼻汁)、鼻づまり(鼻閉)、発熱、くしゃみ、のどの痛み(咽頭痛)、頭痛などで病院を受診する子どもたちが増えます。中には息をするたびにゼーゼーいう(喘鳴(ぜんめい))子どもたちも見受けます。これらは「かぜ症候群」を中心にした呼吸器感染症の症状です。

鼻、のど、気管支などの上気道の粘膜に炎症が起こる病気を総称して「かぜ」あるいは「かぜ症候群」と言います。80~90%はウイルスが原因とされ、その種類は200以上とされています。インフルエンザやRSウイルスもその仲間です。今回は特にRSウイルス感染症を紹介します(図1)。

図1:RSウイルス感染症の年別・週別発生状況

RSウイルス感染症は特に乳幼児で重症化します。年長児や成人では鼻かぜ程度のことが多いのにもかかわらず、乳幼児においては細気管支炎などの下気道感染症を起こし、集中治療室での治療が必要となることのある、怖い呼吸器感染症ウイルスのひとつです。

特に、低出生体重児や、あるいは心臓や肺にもともと病気を持っている子どもたちや、免疫不全のある子どもたちは重症化するリスクが高いと言われています。

RSウイルス感染症では、鼻水が多く、また、せきがみられます。重症になってくると、ゼーゼー(喘鳴)が聞こえ、肩で息をする(肩呼吸)ようになります。

飲めない、眠れない子は医師の受診を

家庭で子どもたちが「かぜ症候群」かなと思われた時は、次の点に注意して看てあげてください。

まず、①遊ぶかどうか、②食べるかどうか、③飲めるかどうか、④眠れるかどうか(寝付けるかどうか)の4点です。この順番で悪くなっていきます。逆に良くなる時は、この逆の順番で良くなってきます。

遊ぶ、食べるができている子どもさんはまだ大丈夫です。遊ばない、食べない子どもさんでも、飲めて、眠れていたら家で看ることもできます。しかし、飲めない、眠れない(寝付けない)子どもさんは、医師に診てもらってください。これが大事なことです。

熱があっても、せきをしていても、遊べて、食べている子は大丈夫です。しかし、熱やせきなどの症状の無い子どもさんでも、飲めない、眠れない場合は、医師に診てもらってください。

安静、栄養、保温が大切

さて、では病気にならないようにするにはどうしたらいいでしょう。病気に対するには、基本的に①安静、②栄養、③保温が大切です。これは①安静と③保温で不必要なエネルギーの消費を押さえること(体力を温存すること)と、エネルギーの基になる②栄養を摂ることが大切であることを意味しています。感染に対する余力(いわゆる感染に対する免疫力・抵抗力)を残しておくことになります。

免疫力を高めるということでは、RSウイルスに対する抗RSウイルスヒト化モノクローナル抗体製剤であるシナジスがあります。シナジスはもともと病気のある子どもたちや低出生体重児に限定して使用されます。

かぜの予防は「手洗い、うがい、マスク」

「かぜ症候群」の予防で大事なことは、「手洗い、うがい、マスク」です。一般的にウイルスをはじめとする病原体は、手から口や鼻に運ばれることが多いと言われています。したがって、感染予防には手洗いがもっとも大事で、もっとも効果的です。

呼吸器系の感染症にはうがいとマスクが加わります。咳エチケットが大事ですね。ウイルスを含んだせきやくしゃみの飛沫が飛ぶ範囲は1.5mぐらいと言われています。2mあれば飛沫による感染は防げるようです。

感染性胃腸炎

冬はもうひとつ注意しておかなければならない病気があります。嘔吐、下痢、発熱などの消化器系の症状(お腹の症状)を呈する、いわゆる〝感染性胃腸炎.です。図2は倉敷市の感染性胃腸炎の年間の発生頻度を示したグラフです。感染性胃腸炎も冬場に多いことがわかります。

図2:感染性胃腸炎 H21年~H23年報告数比較(倉敷市)

ノロウイルスとロタウイルス

冬場の始まりはノロウイルス、後半はロタウイルスが主体です。また、ノロウイルスよりロタウイルスの方が、症状が強いとも言われています。潜伏期間は、ロタウイルスが1~3日、ノロウイルスが12~48時間です。感染力が強く、厄介な感染症です。

ロタウイルスに感染した乳幼児は、下痢便か白くなることがあります。多くは2~7日で治ります。まれにけいれん(胃腸炎関連けいれん)、脳症などを合併することがあります。ロタウイルスによる感染性胃腸炎は乳幼児が多く、ノロウイルスは学童、成人にも多くみられ、再感染もあるとされています。

水分と電解質の補給が大切

嘔吐、下痢によって身体の水分と電解質が失われます。水分と同時にこれらの電解質(塩分)の補給が必要です。参考までに家庭で作れる水分・電解質補給用の溶液の作り方を示しておきます。

経口補水液の作り方 砂糖40g(大さじ4と1/2杯)と食塩3g(小さじ1/2杯)に湯冷ましを1リットル加える。
レモンやグレープフルーツなどで風味をつけてもいい。また、やや塩辛いので食塩を少なめでもいい。要は水分と電解質の補給。

感染性胃腸炎の子どもたちの見方も先に述べた4つの点、すなわち①遊ぶかどうか、②食べるかどうか、③飲めるかどうか、④眠れるかどうか(寝付けるかどうか)の4点です。飲めない子や眠れない子は医師に診てもらってください。また、病気に対するのも、基本的に①安静、②栄養、③保温です。

便や吐物に注意

感染経路としては、糞口(経口)感染、接触感染、飛沫感染があります。ノロウイルスは二枚貝などの食品を介しての感染も有名です。便中に多くのウイルスが排出されており、また、吐物の感染力も強く、乾燥して粉塵化した吐物からの感染も考えられています。他人にうつしやすい時期としては、病気の始まりである急性期が最も感染力の強い時期とされていますが、便中に3週間以上排泄されることもあると言われています。

手洗いは流水下で石鹸 食器は熱湯消毒、食品は加熱

便や吐物の処理に加えて、手洗いが非常に大切となります。ウイルスが付着した水、食物、あるいは手を介して感染するので、この時期は手洗いを励行することが大切です。ノロウイルスは速乾性すり込み式手指消毒剤やアルコール消毒が無効なため、流水下に石鹸で手洗いをします。

食器などは、熱湯(1分以上)や0.05~0.1%次亜塩素酸ナトリウムを用いて洗浄、食品は85℃、1分以上の加熱が有効とされています。

おわりに

今年はマイコプラズマ肺炎、マイコプラズマ感染症の発症数も例年になく増加しています。体調管理に気をつけて、手洗いによる感染予防を守り、冬を乗り切りましょう。