患者さん向け広報誌「Kニュース」No.5

インタビュー

変革の時代に対応するために 新しい院長基本方針を作りました

院長 高三 秀成

院長 高三 秀成

倉敷中央病院では、新しい院長方針を作られたそうですが・・・

高三 当院には「患者本位」「全人医療」「高度先進医療」を三つの柱とした「私達の基本理念」があります。医療環境が大きく変わろうとしている現在、その理念を日々の医療の中で実践するために、よりふさわしい内容となるように院長基本方針を作成しました。

具体的な内容は、どのようなものですか?

高三 当院は、地域の皆さんに支持される病院であるために、急性期の医療を行う地域の基幹病院として、世界水準の医療を提供していきたいと願っています。「患者本位」を常に最優先し、全職員が自主的・積極的に日々の診療ならびに業務に参画します。

院長方針の第一は、総合的医療の実践です。科学の進歩は目覚しいものがあり、医療は著しく専門分化・高度化しています。当院も、高度先進医療を行うため、一人ひとりの職員は各自の専門分野を究めていきますが、患者さんを診療する場合は、一つの専門分野だけではなく、その病気に関係する各診療科の医師や看護師、薬剤師、各種検査の専門技師等が協力して、総合的に患者さんを診療するということです。

第二の医療安全に関しては、患者さんの切実な願いがあると思いますが・・・

高三 当院では医療安全の確保のために、「人は誤りを犯す」ということを前提に、各種マニュアル類の作成や、医師を対象としたワークショップを始めとする職員の研修会等を開催して、積極的に、全病院的に取り組んでいます。

また昨年、厚生労働省・医療安全対策検討会議が取りまとめた「医療安全推進総合対策」にそって「医療安全管理指針」を作成し、一層の充実を図りました。

私は、医療事故防止のためにはコミュニケーションが一番大切だと考えています。職員間はもとより、職員と患者さんとの間に、何でも話し合える雰囲気を作ることが必要です。

そして、検査や注射の時のお名前の確認には積極的に協力していただくなど、患者さんとともに医療安全の文化を作り上げ、定着させていきたいと願っています。

疑問や質問があれば、何でも聞けばいいのですね。

高三 ぜひ、そうしてしてください。第三の説明ある医療にも関係しますが、これからの医療は、昨年、策定しました「『患者のみなさまの権利』宣言」で取り上げた、インフォームド・コンセントと自己決定権が重要になります。

患者さんが診療を受けられる場合、病状を調べるために検査を行いますが、事前にその検査について効果や危険性を説明し、納得した上で検査を受けていただきます。その結果をもとに、患者さんに正しく病状を伝え、どのような治療法があるのかを、成功率や危険性を含めて患者さんが理解できるように説明して、患者さんにご自分の治療法を選択していただきます。

そのためにも、分からないことは、どんどん質問してください。

院長基本方針には、説明ある医療を実効あるものにするために、患者教育の必要性をあげています。これは、少しおこがましい表現かもしれませんが、患者さんにご自身の医療に参画していただくために、ご自分の病気について理解していただきと考えるからです。

皆さまに、病気や健康についての情報を提供するスペースを、温室の南に作りました。書籍・雑誌の閲覧を中心に、インターネットで情報収集もできるコーナーです。「医療情報の庭」と名づけました。ここでしっかり情報を得て、医師や看護師等とのコミュニケーションにお役立てください。

開かれた病院とは、どういうことですか

高三 当院は、これまで多くの先輩たちが地域の方々との間に信頼関係を作りあげてきたことにより、皆さま方や医療機関の方々に支えられて、今日までやってくることができました。現在、わが国は社会のあらゆる分野で構造改革が求められ、医療の分野でも大きな制度改革、変革が実施されようとしています。

今後一層、皆さま方ならびに地域医療機関との信頼関係、連携が重要になってきます。そのためにも、病院をオープンにして双方向のコミュニケーションを図りたいと願っています。

当院では現在、50名を越える方にボランティアで来ていただいています。外来での患者さんのご案内や、「医療情報の庭」の運営をお願いしていますが、そうしたボランティア活動を通じて、当院を知っていただいたり、当院に対する要望をお聞かせいただきたいと思っています。

またこの「Kニュース」も開かれた病院の一つだと思っています。

今後は院内見学会や講演会などを開催して、病院を診療の場としてだけでなく、健康の維持増進・社会貢献の場としてお役に立てたいと考えています。

そうした院長方針を実現させるために、人材育成が必要になるのですね。

高三 そうです。いくらりっぱな方針を作っても、それを実践するのは一人ひとりの職員です。職員の質的向上を図るために目標管理による人事制度を導入し、職員の能力開発のために、できるかぎりの支援をしています。

社会のあらゆる分野で構造改革が求められる変革の時代に、ひるむことなく、積極的に地域のニーズに耳を傾けて、患者さん本位の医療を実践する職員の育成に努めたいと考えています。

トピックス

「医療情報の庭」にようこそ

医療情報の庭 画像

倉敷中央病院では、1月6日より「医療情報の庭」を開設しました。この部屋は患者さんやご家族の方に、病気や健康についてはもちろん、医療制度や福祉について知っていただくお部屋です。

約900冊を越える書籍を中心に、雑誌、ビデオ等を置いています。書籍・雑誌はより多くの方にご利用いただけるように、室内での閲覧のみにしていますので、必要なところはコピーをしていただくようになります(有料です)。今後も書籍を購入し、蔵書数が十分に増えた時点で貸し出しを検討したいと思っています。また、インターネットを利用して、医療・健康に関する情報検索もできます。

病気や検査などのわかりやすい説明パンフレットも用意しました。これはご自由にお持ち帰りいただけます。

当院は、昨年策定しました『患者のみなさまの権利』宣言にも述べていますように、今後は説明のある医療が必要であることを実感しています。医師をはじめとする職員は、病気・検査・治療方法について積極的に説明させていただきますが、あらかじめ「医療情報の庭」で知識を得ていただければ、理解しやすくなると思いますし、疑問点なども聞いていただくことができます。職員の説明が分かりにくければ、納得のいくまでご質問いただければ結構なのですが、この部屋を利用していただくことで、一層ご理解が深まるのではないでしょうか。

場所は旧温室ホール、神経内科の待合だった所です。熱帯魚のいる所といえば、お分かりいただけるでしょうか。

毎週月曜日から金曜日まで、午前10時から午後4時までご利用いただけます。運営はボランティアさんにお願いしています。どうぞ、お気軽にお越しください。

ヘルシーリビング

知っておきたい糖尿病の知識 -軽症糖尿病が増えています-

糖尿病とはどんな病気?

糖尿病内科 主任部長 高橋 健二

糖尿病内科 主任部長 高橋 健二

糖尿病という病気の名前は皆様ご存じのことでしょう。そう、検診などで尿に糖が出て、糖尿病の疑いがありますよといわれる病気ですね。

尿の病気ではなく血糖値が上がる病気で、きっちり治療しないと全身の大小の血管に障害が出てきます。糖尿病は生活習慣病の中でも、高脂血症や高血圧症などと並ぶ代表的な疾患です。

糖尿病が増えている

最近この病気の患者数が随分増えているとの統計が厚生労働省より発表され、それによると日本全体でなんと600万人以上の方が糖尿病、さらにその同じ数だけの「予備軍」がいるというのです。

何ということでしょうか。合計すると1200万人で、実に日本の人口の10人に1人は糖尿病かその心配があるというのです。しかも、そのうち実際に医療機関で糖尿病の治療を受けている人は全体の4分の1にしか過ぎないというのですから、これは厚生労働省ならずとも大変な事態ではないかと考えてしまいます。

このように増えている糖尿病はほとんどが2型糖尿病(以前の成人型糖尿病です)で、とりわけ増加が著しいのが、自覚症状のない軽症例です。しかし「軽症」だからといって軽視してはいけないという研究結果も発表されています。

「軽症糖尿病」とは

では、軽症糖尿病とはどんな特徴を持っているのでしょうか? まず、軽症ですから自覚症状がありません。したがって自分も家族も気付かないで何年も過ぎてしまう。

血糖値は、食前は100mg/dlくらいで尿糖も出ない、しかし食後に測定すると200mg/dlを超えることもあり尿糖も出る。

さらに、血液中の中性脂肪や総コレステロールが高く、肥満気味である、おまけに血圧まで高いことがある。

加えて、最近行われた日本やヨーロッパでの研究で判明したことは、このような「軽症」糖尿病であっても動脈硬化(冠動脈硬化症や脳梗塞)を起こしやすい、などの特徴をもっています。

糖尿病の検査

さあ大変です。軽症であっても動脈硬化、とりわけ心臓の冠動脈硬化症を起こしやすいというのです。それではこの軽症糖尿病を早く発見するにはどうすればいいでしょうか?

まずは、このタイプの糖尿病は食後の血糖が高いことが特徴ですから、血糖値を食事の前だけでなく食後にも測定してみましょう。ブドウ糖負荷試験(GTTといいます)を医療機関で受けるともっと詳しくわかります。

食後2時間やGTTの2時間血糖値が200mg/dl以上ならもう軽症糖尿病に間違いありません。2時間値が140~199mg/dlなら耐糖能障害(または境界型)といい、これも広い意味の軽症糖尿病にはいります(図参照)。

75gブドウ糖負荷試験(GTT)と糖尿病の診断 図

血糖の検査以外にも、グリコヘモグロビンという検査があります。これは血糖値が高いと月遅れで上昇してきます。この値が5.8%以上だと軽症糖尿病が疑われます。

軽症糖尿病の対策は?

以上のお話から、食後の血糖値を下げること、または上げないことがとても大切なことがおわかりでしょう。それではどうすればいいでしょうか?

まずは三度の食事の注意です。食べ過ぎや間食を控えることはもちろん、食べ方に注意が必要です。すなわち、ゆっくりと・よくかんで・一口を少な目に・主食と副菜を交互に・十分な食物繊維をとり・お茶や汁物も十分に・和食を中心とし・旬のものも楽しみながら・そして上品にいただくことを心掛けましょう。このような食べ方は食後の血糖上昇をゆるやかにし、なによりこの心得は日本人の正しい食事のマナ-そのものと言っていいでしょう。

それでも十分な血糖の改善がみられないときにはお薬が必要となることもあります。また、軽症糖尿病にしばしば合併しやすい高脂血症や肥満も問題です。

まとめ

糖尿病の期間の長い、進んだ糖尿病はもちろん、「軽症」でも決して軽視し、放置してはいけません。どうも肥満気味だなと感じる方、中性脂肪の多い方、家族内に糖尿病の方のいる方は是非近隣の医療機関での検診をお勧めします。

もし食後の血糖が高いことがわかれば早速食事の注意を開始し、運動不足を解消して体重を適正にコントロールする、このような正しい生活習慣を続けることがとても大切です。

お知らせ

受診日当日の予約について

受診日当日の予約について 画像

予約診療がなかなか時間どおりに進まず、皆さまに大変ご迷惑をおかけし、強いお叱りを受けています。誠に申し訳ございません。

院長特命のプロジェクトチームを作り、待ち時間の短縮を検討していますが、予約が時間どおりに進まない理由の一つに、予約なしで受診される患者さんの多いことがあげられます。そうした場合は、決められた時間内に診療する患者さんの数が増えて、どうしても予約時間に遅れが生じます。

予約を時間どおりに進めるには、予約率を上げることが何よりと考え、電話による当日受診受付の対象科を増やしましたので、ぜひご利用ください。複数科を受診される場合もご利用ください。

当日受診受付の対象となる方は、小児科、外科、整形外科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、形成外科、皮膚科のいずれかの科の受診を希望される方で、当院に一度でも受診をされたことのある(カルテ番号をもたれている)方です。また、これらの科については、3か月以内に受診された方は、お薬のみの受診予約もできます。

なお歯科の予約変更は、直接、歯科にお電話してください。

歯科

086-422-7905

また1月14日からは、CT、MR、心エコー、RI、腹部エコー、脳波、内視鏡等の検査予約の変更も、コールセンターでうかがいます。

QQ車 院内ニュース

QQ車は、皆さまに倉敷中央病院のできごとを運ぶ(お伝えする)コーナーです。

夏季実習の学生の感想から

夏季実習の学生の感想 画像倉敷中央病院では、医師をはじめとするさまざまな職種で、多くの実習生を受け入れています。昨年は86名の医学生を受け入れました。その一人、京都大学医学部6年生の中野栄子さんの感想をご紹介します。

臨床実習の第一段階が終了し、この夏休みは大学病院以外の病院をいくつか見て回ろうと思い、倉敷中央病院の夏季実習に応募しました。特に、複数の科を経験して、総合診療の基礎が学べる数少ない病院の1つであること、将来、専門医を目指すための研修という理念を打ち出していること、そして地域に密着しつつ高度先進医療に取り組んでいることを聞き、今回の実習を大変楽しみにしていました。

3日間の実習でしたが、午前・午後としっかりプログラムを組んでいただいていて、短い時間でさまざまな科をまわることができました。先生方はお忙しい中で熱心に教えてくださり、1つの質問を機に、関連したテーマについて幅広く話してくださることもしばしばありました。とても勉強になると同時に、医療をリードしようとされる姿勢に感銘を受けました。また看護師さんをはじめコメディカルスタッフの方々がきめ細かく、温かな雰囲気で働いておられるのも印象的でした。

病棟で研修医の先生の下について実習する時間があれば、研修の雰囲気がより分かったかもしれないと思い、少し残念でした。しかし、歓迎会を開いていただき、先生方から貴重なお話をうかがう機会を設けていただけて本当にうれしく思いました。

短期間でしたが有意義で充実した実習でした。

高三院長、救急医療功労者で表彰

高三院長、救急医療功労者で表彰 画像救急の日の昨年9月9日、本院院長の高三秀成が、平成14年度岡山県救急医療功労者として、石井岡山県知事から表彰されました。 

本院では、地域の皆さまの命を救うため、救急医療を優先して行っています。平成12年には、救急医療の質の向上と患者さんのアメニティの向上を目指して、救急医療センターの増改築を始め、救急医療に係わる手術センター、ICU(集中治療室)、CCU(冠動脈疾患の集中治療室)、NCU(脳疾患の集中治療室)等を整備・拡充し、平成13年には救急患者さんを43,799人、救急車搬送を4,116件受け入れました。こうした実績が評価されて今回の表彰となりました。

救急医療は地域医療の基盤です。今後ともさらに体制・システムを整備し、24時間、あらゆる疾患に対応できるようにします。

地域の皆さまにも大好評 倉敷中央ケアセンターまつり

倉敷中央ケアセンターまつり 画像倉敷中央ケアセンターでは、地域の方々との交流を図り、皆さまに愛されるケアセンターにしたいと、昨年11月9日にケアセンター祭りを開催しました。

プログラムは当施設の特徴を生かした介護相談、血圧・体脂肪測定に加え、バザー、ピアノコンサートなどで、喫茶コーナーでは、職員手作りのクッキーが好評でした。

300名近い方がお越しくださり、多くのボランティアさんにもご協力いただき、地域への広がりを感じました。