患者さん向け広報誌「Kニュース」No.8

インタビュー

美容外科を始めました -新しい生活のお手伝いを-

美容外科主任部長 小山 久夫

美容外科主任部長 小山 久夫

美容外科を始められたそうですが、そもそも美容外科とはどういうものですか

小山 美容外科は形成外科の一分野で、以前は美容整形と呼ばれていましたが、十年位前から、美容外科という名前で認められるようになりました。病気ではありませんが、本人が気になる部分を治したり、改善するということです。

例えば、一重まぶたを二重にしたり、しみを取ったりすることですね。

また、病気でないため保険はききません。

病気の治療ではないのに、なぜ、倉敷中央病院がするのですか

小山 美容外科はとてもデリケートな分野ですし、治療法によれば危険も伴いますので、患者さんと医師とのコミュニケーションが重要になります。そのあたりが十分でなくてトラブルになるケースを、皆さんマスコミ等で目にされたことがあるのではないかと思います。

最近、美容外科に関心を持つ方や、実際に治療を受けたいという方が増えていますので、本来の美容外科を普及するために、大病院でも行うようになってきました。当院も、そうした社会的な要望にお応えするために始めました。

美容外科を受診したいと希望される方にはいろいろな理由があると思いますが、例えばしみやあざなどで自分でも気づかないうちに消極的になられている方に、少しでも自信を取り戻して、新しい生活を始めるお手伝いができればいいなと思っています。

倉敷中央病院が行う美容外科として、どんな特徴がありますか

小山 まず第一に、安全な美容外科を目指します。ベテランの形成外科または皮膚科の専門医が担当しますので、安心して治療を受けていただけると思います。

治療にあたっては、インフォームド・コンセント(十分説明し、納得して治療を受けていただくこと)をしっかりと行います。そのために、初診は助言・指導という観点から、患者さんと十分にお話し合いをします。

患者さんの悩みをしっかり受け止めて、適切な治療法について詳しく説明をし、納得した上で治療を受けていただきます。もちろん、治療の危険性についても、十分に説明します。

美容外科というと若い方のものと思われがちですが、高齢社会の今日では、中高年の方にも、高い関心がもたれています。当院では、そうした方々にもお出でいただけるような、落ち着いた雰囲気にしたいと考えています。

実際には、どのような治療が受けられますか

小山 当院では、治療はレーザー、光線、手術の三つの方法で行います。脱毛、ほくろ・あざ・しみの除去は、最新レーザーを使用します。光による治療では、そばかす・くすみなどのトラブルに対して、内側から活性化して、肌の質感を改善します。手術では二重まぶた、わきがなどの治療を行います。

受診は完全予約制、診察室も個室で、患者さんのプライバシーには十分配慮していますので、ご安心ください。

治療の効果はどうですか

小山 肌には個人差があります。レーザーや光線を使っての治療については、期待した効果が出るまでに個人差もあり、2~3回治療を受けていただくケースが最も多く見られ、それを実践的な水準と考えています。

治療後は、どうすればいいのですか

小山 手術はほとんどの場合、そのままで結構です。レーザーや光線による治療を行った場合は、化粧等でカバーして、直射日光に当たらないようにしてください。

治療後一か月くらいに、経過をみせていただきます。

受診については、気軽にご相談くだされば結構かと思います。

トピックス

世界水準の先進医療の実践と21世紀の病棟づくりのために

9棟完成イメージパース 画像

前号でお知らせしましたとおり、本院北東端にありました、9棟の建て替え工事が始まりました。新しい建物は地下1階、地上7階で、当院の使命である世界水準の先進医療を実践するために、心臓病センターの新設、内視鏡センター・放射線部門の拡充を行い、一層のアメニティに配慮した病棟を作ります。

心臓疾患の診療は、当院の得意分野の一つです。現在、診療は循環器内科と心臓血管外科で行っていますが、外来診察室、各種検査室が分散しているため、患者さんには大変ご不便をおかけしています。

診察・検査・治療施設を一体化した心臓病センター

そこで、心臓系の集中治療室も含めて、心臓病に関する診察・検査等を行う施設を1か所にまとめて、心臓病センターとすることになりました。地階は血管造影室で、装置を1台増設して5室になります。カテーテル検査後の回復室も一層のプライバシーの確保とアメニティに考慮します。1階は循環器内科と心臓血管外科の診察室と心電図・超音波などの生理機能検査室、2階は心臓系の集中治療室を30床を設置し、3階が心臓系の病棟となります。

心臓病センターの長所は、これらが一体化することで、患者さんを総合的に診療することができることです。患者さんの動線も短くなりますので、少しでも気持ちよく受診していただけます。

内視鏡の検査は個室で

内視鏡センターに関しては、検査ベッドを10台に増やして個室化し、回復室のプライバシーを充実させます。

放射線部門については、1階にMRを1台、地階に放射線治療装置のリニアックを1台増設します。

また、総合保健管理センター(人間ドック施設)の充実のために、アメニティに一層留意したサテライトセンターを新設し、ドックのオプション検査を受けられる方に、静かなリラックスした環境でお待ちいただいて、倉敷中央病院の高度な検診を、トップレベルの医療機器で受けていただけるようにします。

病棟は、ご家庭の雰囲気に

3階から7階までは病棟となります。本院の使命である高度医療を、ご家庭にいるのと変わらない環境で受けていただけるよう、アメニティに一層の配慮をします。多床室は四床ですが、すべてのベッドが窓に面するように設計されています。

また、屋上は皆さまに緑を楽しんでいただけるよう、緑あふれる回遊式の庭園にします。

工事の終了は平成17年5月末、稼働は7月からの予定です。

ヘルシーリビング

インフルエンザについて

呼吸器内科主任部長 石田 直

呼吸器内科主任部長 石田 直

今年もインフルエンザのシーズンが近づいてきました。インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって起こる呼吸器感染症です。インフルエンザ患者が咳をするとウイルスが細かい霧状になって飛散し、これを周囲の人が吸い込むことにより、ウイルスがのどや気管支について感染を起こします(これを飛沫感染といいます)。

インフルエンザウイルスにはA,B,Cの3種類の型がありますが、このうちA型のウイルスは世界的な流行を起こすことで知られており、古くは1918年のスペインかぜ(全世界で4000万人が死亡したといわれています)や香港かぜ、ソ連かぜなどと呼ばれてきたものです。B型は地域的な小流行を起こし、C型は散発的にしか発生しません。

突然の高熱から全身症状へ

通常の感冒が比較的発熱は低く症状も軽微なのに比して、インフルエンザに罹ると突然高熱を発し、強い頭痛や咽頭痛、関節痛など全身症状が顕著です。高熱は通常は2~3日で解熱傾向を示しますが、咳や鼻水、全身倦怠感はその後しばらく持続します。

重症のインフルエンザではウイルス自体による肺炎を起こすことがあります。この場合、両側の肺に陰影が出現し呼吸困難感が強くなります。また、インフルエンザに罹った後に2次的に細菌による肺炎を起こすことがあります。特に高齢者や心臓、肺に基礎疾患を持つ人、妊婦では肺炎を起こして重症化しやすいといわれていますので注意が必要です。また小児のインフルエンザ脳症も近年問題となっています。

インフルエンザの診断は、流行時期に典型的な症状を呈していれば容易ですが、ウイルス学的な検査を行うこともあります。近年開発された方法は、インフルエンザウイルスの抗原を検出するもので、綿棒でのどや鼻腔をこすって検体をとり調べる方法です。短時間で結果がでるので外来でも行えますが、インフルエンザに罹っていても陽性に出ないことがありますので注意しなければいけません。

薬剤療法も可能に

インフルエンザに罹ってしまった場合、従来は有効な薬剤がなく対症療法を行っていましたが、最近新しい薬剤が開発されて利用できるようになりました。
これはノイラミニダーゼ阻害剤という種類の薬剤で、ウイルス粒子の表面に付着してウイルスが増殖するのを防ぐ作用を持っています。パウダー製剤で吸入するタイプのものと、内服の薬剤の2種類が発売されています。この薬剤を使用すると、発熱の持続が1-2日間短くなるといわれていますが、発症早期、できれば48時間以内にはじめることが必要です。
その他、鎮痛解熱薬(小児では使用は要注意)、咳止めなどが症状に応じて投与されますが、細菌感染の合併がある場合には抗菌薬の投与も行われます。

予防はワクチン接種で

インフルエンザの予防では、ワクチン接種が最も基本となります。インフルエンザワクチンは、以前は学童に対して集団接種が行われてきましたが、1994年の予防接種法の改正により中止となり、ワクチンの接種率は激減しました。しかしながら、欧米では日本と逆にハイリスクグループへの接種を積極的に進め接種率は向上しています。日本でもようやく高齢者の接種に対して一部公費負担が行われるようになり接種率が回復してきました。

インフルエンザのワクチンは、前シーズンまでの流行したウイルス株を考慮して、次シーズンの流行を予測し、A型より2種類、B型より1種類のウイルス株を選び作成します。全く新種のインフルエンザが出現した場合には、従来の株のワクチンでは無効であり、新たに作成する必要がありますが、それが利用できるようになるまでは、世界中の誰もが新しいインフルエンザに対して免疫がないということになります。

高齢の方には、ワクチン接種をお勧めします

ワクチンは誰に接種してもよいのですが、特にハイリスクグループの人には必要です。米国でワクチン接種が強く勧められている対象は、65歳以上の高齢者、肺や心臓に基礎仕疾患を持つ人、老人ホームや介護施設の入園者、糖尿病や腎不全などの慢性疾患を持つ人、長期アスピリン投与を受けている小児や若年者、インフルエンザ流行期に妊娠後半に入る妊婦となっています。

ワクチンの接種方法は、成人の場合1回皮下注射するだけです。副作用としては、注射部位が腫れたり熱を持ったりすることがありますが、通常は一過性です。稀に重篤な副作用も報告されています。ワクチンは卵から作成していますので卵アレルギーのある人は接種できません。

ワクチンで100%インフルエンザの予防ができるわけではありませんが、高齢の方、リスクを持った人は是非接種を受けられることが望ましいと思います。ワクチン接種を行ってから抗体が上昇するまで1ヶ月近くかかりますので、できる限り年内に接種されることをお勧めします。

インフルエンザワクチン 製造量の推移 図