手術支援ロボット ダヴィンチ(da Vinci)による
腎がん手術
腎がん
腎(細胞)がんは、腎臓の実質的な働きを担っている細胞が、がん化し悪性腫瘍になったものです。40歳~70歳代に多く発症し、男女比はおよそ2:1です。初期段階では自覚症状がないことが多く、早期発見が難しいがんでした。現在ではエコーやCTで早期に発見することが可能となり、人間ドックや健診で見つかることも増えています。
腎がんの原因
原因は正確には分かっていませんが、危険因子として肥満や喫煙、高血圧などが指摘されており、長期間透析を受けている患者さんも、腎がんになる可能性がとても高くなることが報告されています。また特定の遺伝子に異常のある家系では、一般の方より腎がんリスクが高いことが分かっています。
腎がんの治療
基本的には手術を行い、がんの大きさに応じて腎臓摘除術もしくは腎部分切除術による根治切除を目指します。比較的小さながんに対してはロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術を行い、周りに正常腎組織を少しつけた状態でがんを切除しつつ腎機能の温存を図ります。大きめのがんに対しては腹腔鏡下腎摘除術を行いますが、腎臓周囲への浸潤があるような大きながんに対しては開腹手術による腎摘除術を行います。すでに転移のある場合や、術後に転移したときは、がん細胞に特有の標的分子を狙う分子標的薬治療や、がん細胞が免疫から逃げることを阻止する免疫チェックポイント阻害薬を使用した全身治療を行っています。
ダヴィンチを用いたロボット支援腎部分切除
ダヴィンチは腹腔鏡手術で使用する手術支援ロボットです。内視鏡は最大15倍のズーム機能をもつ3次元ハイビジョン画像であり、体内を鮮明かつ立体的に拡大視野でみることができます。腹部に5~6箇所1 ~ 2cmの手術器具を挿入する小さな穴をあけます。内視鏡と手術用の鉗子を挿入したあと術者はコンソール(操作用卓)に腰掛けてモニター画面をのぞきながら遠隔操作で手術をします。
まず腎の腫瘍を確認した後、腎動脈の血流を止め腫瘍切除を開始します。切除面からの出血や尿の流出に対して、縫合や焼灼、止血剤の貼付を行います。手術時間は平均して2~3時間程度、麻酔時間を含めると4~5時間で手術室から戻ってきます。手術後4~7日間程度で退院可能になります。
ただし、腎がんに対しての手術は、腎部分切除術にのみ保険適用が認められています。腎臓を全部摘出する必要がある場合は、従来の腹腔鏡手術や開腹手術を行う必要があります。
患者さんへメッセージ
腎がんは、健診などで偶然見つかる機会が増えています。小さいうちに見つかるとロボット支援での腎部分切除術が可能になります。当院では、ロボット支援手術だけでなく腹腔鏡手術、開腹手術の経験も豊富です。また、転移のある進行した腎がんに対しても新しい薬物療法が次々開発されており、こちらに関しても最新の治療が提供可能です。一口に腎がんといっても病状はさまざまで、治療法がかなり複雑になっています。患者さんにとって最善の治療を提供できるよう日々努力しています。