患者安全推進室

GRM
橋本 徹

当院は1999年に医療事故防止委員会を立ち上げました。2004年には医療安全の専門部署を設置し、以来、医療の質と安全の向上に取り組んでおります。
医療現場ではヒューマンエラーを完全に防ぐことが難しいからこそ、職員一人ひとりがその本質を理解し、事故を起こさない対応や、エラーが重大な事故につながらない仕組みづくりを推進しています。新入職員には、安全意識の向上を目的とした包括的な研修を積極的に実施しており、ICTや機械化の導入による人為的ミスのリスク軽減にも努めています。
また、多職種が連携して柔軟かつ迅速に対応できる体制づくりにも注力しており、職種の壁を越えて一歩踏み出した対応ができた事例は「Good Job」として称え、共有しています。こうした取り組みにより、あらゆる側面から医療安全へのアプローチを行っています。
また、国内外の最新の知見を積極的に取り入れ、全国の先進的な医療機関との交流にも力を注いでいます。地域の連携医療機関とも協力し、地域全体で医療安全を高める活動にも継続的に取り組んでいます。

業務内容

当院では患者さんやご家族に質の高い医療を安全に提供するため、医療安全推進室が中心となって、下記の通りさまざまな取り組みを行っています。

活動内容

医療安全管理体制の構築

・患者安全推進委員会の開催(毎月)
・クオリティマネージャー会議(毎月)

※クオリティマネージャー
医療現場のフロント(各病棟、外来、各センター部門)および支援部門に配置し、以下の業務を担っています。
・各職場における医療の質指標の数値向上や、医療事故の原因分析および防止策の検討
・医療体制の改善方法などへの検討や提言
・医療安全報告の積極的な提出
・委員会で決定した医療の質・安全管理に関する事項の所属職員への周知徹底

・患者安全推進室定例会議(毎週)
・安全管理マニュアルの整備

教育・研修

・チームSTEPPS
・新入職員オリエンテーション
・新入職医師対象のセーフティマネジメント研修会
・事故想定訓練
・M&Mカンファレンス
・医療安全講演会

情報収集・分析

・医療事故の原因分析および調査
・Good Job事例の収集

※Good Job
患者安全の推進には、職種間の壁を越えて一歩踏み出した行動ができる環境づくりが大切です。このような環境は、医療事故の発生の防止、ならびに影響度を最低限に抑えることにつながります。「あれ?」「おかしいな?」と感じたときに、ためらわずに次のアクションを起こせる、心理的安全性の高い文化の醸成を目指しています。また、事例は「Good Jobレポート」として収集し、優れた取り組みを共有・表彰することで、病院全体の意識向上につなげています。

「世界標準」の患者安全の取り組み

患者さんを間違えないために2つの方法で確認しています

外来へ掲示しているポスター

当院では、患者さんを確認する際に「患者さんの氏名」「生年月日」2つをお答えいただいています。外来でのお呼び出しなどで、同性同名、似たお名前の方が入室されることがまれにあります。患者さんを間違ないように、たびたび氏名と生年月日をお尋ねいたします。ご協力をお願いいたします。

患者さんの転倒・転落を予防しています

プラスワン・パス

外来では、転倒・転落の恐れがある患者さんには「プラスワン・パス」を身に着けていただいています。このパスは職員が「転倒・転落の恐れがある患者さんだ」と判断して見守るための目印です。
パスを着用された患者さんが再受診される際には、ご本人・ご家族からお申し出いただき、パスを着用いただいています。

病棟では、転倒転落アセスメント表を用いて患者さんのリスクを判断し、必要な対策を講じます。

 

手指衛生を徹底し、医療関連感染のリスクを軽減します

WHOの「医療における手指衛生についてのガイドライン」にならい、患者さんに触れる前後、清潔・無菌操作の前、患者さんの周りに触れた後、体液に触れる可能性があった後の5つのタイミングで実施します。このほか、必要と判断される場面で手指衛生を行います。

手術の部位、手技、患者さんが正しいことを確認しています

手術や侵襲的処置の前に、関係スタッフが一旦手を止め、次の項目について確認します。

  • 患者氏名
  • 生年月日
  • 実施する検査、処置、治療
  • 実施する部位(左右の確認含む)
  • 同意書の有無

ハイアラート薬の安全性を高めています

ハイアラート薬とは、不適切な使用によって患者さんに重篤な被害がおよぶ危険性の高い薬品のことです。保管場所を定め、その薬がハイアラート薬であると表示しています。取り扱いは定められた講習を受けた職員のみが可能です。

医療者間で情報を引き継ぐとき、確実に伝わる方法を用いています

医療者間で情報の引き継ぎを行う場面では、原則口頭指示を行いません。やむなく行う場合は、受け手は指示内容を決められた用紙に記入して読み上げ、復唱します。伝えた側はその内容が正しいかどうかを明確に伝え、定められた時間内に記録に残します。
このほか、重大な診断検査結果の報告についても手順を定めています。

スタッフ紹介

氏名 役職 専従・兼任
橋本 徹 副院長
HQM推進センター長
医療安全統括責任者(GRM)
患者安全推進室長      等
兼任
沈 正樹 脳神経外科・脳卒中科主任部長
医療安全統括副責任者(副GRM)
兼任
塩津 昭子 医療安全管理者
看護師長
専従
西出 康晴 作業療法士 専従
堀 佳奈美 事務 専従
平尾 慎吾 心臓血管外科部長 兼務
長久 吉雄 外科部長 兼務
花澤 豪樹 放射線治療科部長 兼務
高田 左代美 看護管理部医療安全担当看護師長 兼務
小林 宏太朗 薬剤部薬務・薬品情報室 兼務

医療安全を志す医療従事者の方へ

放射線治療科
花澤 豪樹

2021年に当院に着任した際、山形前院長が研修会の冒頭に「当院は医療の質・安全を最重視している」と強い眼差しで明言されました。これまで赴任した病院とは何か違うと感じたのを覚えています。Quality Managerの拝命をきっかけに、いつか当院の医療安全の中枢で勉強したいと思うようになりました。ある日遂に思い立って鼻息荒くGRMの橋本副院長に「チームに入れてください!」と直談判に伺うと、柔和な笑顔で「肩の力を抜いて明るく取り組んでいこう」とその場で快諾いただきました。

ミーティングでは、インシデントレポートを推理小説のように読み解き、どんな事象が潜んでいたのか、想像力を総動員して探ります。私は一介の放射線治療医ですので、他部署の業務内容を把握するだけでも一苦労ですが、逆に先入観がないことが強みだと思うようにしています。

医療安全活動を頑張るとどうしても放射線治療業務に穴ができることがありますが、有り難いことに理解ある当科のスタッフが嫌な顔ひとつせずカバーしてくれています。私の活動がたったひとつでもよいので事故を防ぐきっかけになることを夢見つつ、これからも志高い素晴らしい仲間に囲まれ、笑顔で活動を続けたいと思います。