患者さんから私たちがよく聞かれる質問をあげてみました
・基礎体温について
・排卵誘発を勧められたが抵抗を感じる
・HCG について
・流産後の質問
・2回流産をしたが反復流産の検査を受けるべきか
・40代で体外受精の意味 |
| 基礎体温について |
基礎体温についての質問は、ほんとうに多いです。
よくある質問と、その答えです:
「全体的に低温だけど大丈夫ですか」→低温期と高温期があれば大丈夫です。
「排卵後すぐに高温にならず、ゆるやかに上昇するけど大丈夫ですか」→大丈夫です。
「排卵日に下がらないけど大丈夫ですか」→大丈夫です。排卵日にぐっと下がるとはかぎりません。
「ばらつきが多くて心配です」→体温はいろんなものの影響を受けています。低温期にぽんと高温の日があることもありますし、逆に高温期に低温の日があることもあります。また、夜勤をしているかたでは、排卵があっても低温と高温がはっきりしないことがあります。
「低温期の長さがばらばらです」→低温期が2週間だったり、3週間だったり、あるいはもっとばらばらなかたがあります。妊娠は可能ですが、排卵日がわかりにくいという問題がありますので、排卵誘発をお勧めすることもあります。
「高温期の長さがばらばらです」→排卵がある周期では高温期は12〜14日程度あります。高温期が10日以下の場合は、卵胞閉鎖といって、排卵直前に卵胞がしぼんでしまった、という可能性があります。ただし、さきほど申しましたように、排卵後2〜3日、低温という方もありますので、いちがいには言えません。正確には産婦人科を受診して、診断を受けてください。
「最近、低温期が短くなってきました」→低温期がとても短く、1週間ちょっとしかない、という場合は、卵巣機能が低下している可能性があります。40歳をすぎると、低温期が短くなる現象が起こります。卵巣機能をはかる指標というのは、いまだに明確ではありませんが、ひとつの目安として月経3日目に
FSH (卵胞刺激ホルモン)を採血ではかって、高値であれば卵巣機能低下と診断する方法もあります。くわしくは産婦人科でご相談ください。一方、もともと低温期が14日あったのに、最近は12日です、というような場合は、あまり問題はないと考えられます。
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| 排卵誘発を勧められたが抵抗がある |
30歳の結婚2年目の者です。今までにエコー、精子の検査、卵管造影ともに異常ありませんでした。基礎体温が排卵予定日になっても上がらず、今日のエコーでも卵胞が育ってないようです。排卵誘発剤を今度から使いましょうと言われました。血液でホルモン検査もしないうちから、卵胞が育っていないと断言できるのでしょうか。ショックで先生に何も聞けずに、次回生理が始まったら受診ということで、帰ってきてしまいました。排卵誘発剤とはどういう治療をするのかも、聞かなかったせいか説明もなく、あまり副作用もないので大丈夫ですとだけ。あとで考えて、いろいろとショックと不安とでいっぱいです。
排卵誘発剤を使う、ということは女性にとって、とても抵抗を感じるようです。排卵は妊娠に不可欠なことなので、慢性的な無排卵には治療が必要です。医師の指示にしたがって排卵誘発剤を使われることをお勧めします。ただし、肥満が原因である場合には、体重を落とすことで解決する場合もあります。
一方、ふだんは排卵があるのに、なぜか時々、無排卵の周期がある、というかたもあります。健康な女性でも1年に1回程度は無排卵周期があるといわれていますので、たまたま通院中に無排卵周期があっても、次の周期に期待したらよいと思います。しかし無排卵周期がしばしばあるようでしたら、排卵誘発をしたほうが妊娠には近道であろうと思います。
なお質問中の卵胞発育がないことはエコーだけで診断できるのか、という点ですが、これはエコーだけで診断できます。
私は27歳で、半年前に結婚し、はやく子供がほしいと思っています。もともと生理不順で半年から一年くらい、生理がこないこともありました。基礎体温をつけても、高温期と低温期がなくバラバラです。独身のときから産婦人科に通っていて、生理を起こすために薬を飲み続けていました。医師からは多嚢胞性卵巣と言われ、妊娠するには排卵誘発剤を使わなくてはいけないと言われています。
排卵誘発剤とは何なのかが気になります。奇形の子供が産まれる確率が高くなったり、三つ子や四つ子になる可能性も高くなるのでしょうか。もし、そういう可能性が高くなるのなら、排卵誘発剤は使わず、自然に任せて(いつのことになるか分かりませんが)妊娠した方が良いのかなと悩んでいます。
この質問も前ページのかたと同様、排卵誘発剤を使う、ということに拒否反応を示しておられます。しかし、このかたのように明らかに慢性的な無排卵で多嚢胞性卵巣 (PCO, polycystic ovary) とはっきり診断されている場合には、無排卵を放置してもいいことはありません。
PCO の治療ですが、未婚のかたの場合、もしくは妊娠を望まない場合、定期的に月経を起こすだけで十分です。妊娠を望む場合には、排卵誘発剤を使うべきです。
多胎妊娠が起こる可能性は否定できませんが、排卵誘発中に複数の卵胞発育があればエコーでわかります。卵胞が2個3個できればふたごさん・みつごさんになることもありますが、そうそうあるものではありません。むしろ何回もトライしてやっと単胎妊娠にめぐりあえる、ということが普通です。また奇形児の可能性は特に増加するものではないと考えられています。
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| HCG について |
先日、排卵日予想とタイミング指導を受け、そのとき排卵を促す注射を受けました。指示された日に夫婦生活をしました。その2日後に妊娠検査薬をしてみたら、陽性(妊娠である)と出ました。こんなに早く妊娠するんでしょうか?
タイミング法のページに書きましたように、排卵の少し前に脳から LH というホルモンが出ます。この LH ホルモンは卵の最終的な成熟と、卵胞の破裂(排卵)を起こすホルモンです。LH はまだ市販されていませんので、そのかわりに同じ作用をもつ HCG というホルモンを注射して排卵を促すことがあります。HCG とは胎盤でつくられるホルモンであり、自然では、HCG は排卵期には分泌されません。
妊娠反応は HCG を検査しています。HCG を注射されていないかたで HCG が陽性であれば、これは妊娠している、という意味になりますが、HCG を注射されたかたで HCG が陽性である場合には、妊娠しているのか妊娠していないのかは不明です。この質問の場合には、排卵から2日後ですので、注射された HCG が検出されただけで、妊娠を意味するものではありません。
HCG は排卵期だけでなく、排卵後の時期にも黄体ホルモン刺激療法としても使われています。妊娠検査をされる場合、ご自分がどんな注射を受けておられるかをよく確認して検査をしてください。 |
| 流産後の質問 |
「流産後、それまで30〜40日周期だったのに、50日くらいの周期になりました。また妊娠できるのかとても不安です」
→流産後しばらく(長いと半年くらい)生理不順になるケースがあります。多くは自然に元に戻るようですが、半年以上生理不順がつづくようでしたら、産婦人科を受診してください。流産をきっかけに無排卵になっている場合があります。
「流産の後、いつから妊娠してもよいのか」
→これもよくある質問です。流産の時に、子宮のなかを鉗子できれいにする手術を受けられた場合、少なくとも1回は月経があるまでは避妊するべきです。手術後、月経がないままにすぐに妊娠されると、胎盤が子宮筋層に深くはいりこむ「癒着胎盤」が起こる可能性があるからです。「癒着胎盤」で妊娠されると、赤ちゃんの成長には問題ないのですが、赤ちゃんが生まれたあと、胎盤が出る時に大出血を起こすことがあります。
一方、手術を受けていない場合には、特に避妊期間をもうける必要はありません。 |
| 反復流産の検査を受けたほうがよいか |
Y県(岡山県ではありません)に住む主婦です。前回の妊娠は7週になっても胎児が見えず、流産となりました。今回も8週になっても胎児が見えないままで流産という形で手術をしました。先生は2回までは偶然がかさなったということもあるので、もし3回も続けば何かあるんでその時検査しましょうと言われます。私は再婚で過去子供を産んでます。今の主人とは2回もこういう結果になり主人に申し訳ない気持ちでいっぱいです。赤ちゃんが見えないままという例はどのくらいの割合であるのですか?また検査を受ける必要はないでしょうか?
→(私の回答です):2回流産をされてとても残念だったとお察し申し上げます。ご質問のお返事ですが、結論から言いますと、その先生が言われる通りです。流産は妊娠の15〜20%を占めます。流産が2回続くことも5%くらいの率であると考えられております。今のところ、精密検査は必要ないと思います。
→(それに対するお返事です):いろいろありがとうございます。忙しいなか助言のメールをいただき落ち込んでいる私には感謝いっぱいの思いです。マイナス思考にならないように又頑張ろうと思います。本当にありがとうございました。
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| 日本の産婦人科医療事情 |
「日本の産婦人科医療事情」などと、えらそうなタイトルで恐縮です。
が、新聞でもよく書かれていますように、現在わが国では産婦人科医がたいへん不足しております。外来診療をしつつ、分娩や急患に対応している病院がほとんどであり、不妊や流産など時間をかけて話を聞きメンタルケアを必要とする患者さんに対する対応はまだまだというのが実情です。
メールでよくお聞きするのが「先生がいそがしそうで質問したいのにできない雰囲気です」ということです。その気持ち、よくわかります。いそがしそうな居酒屋で、もう少し注文したいんだけどやめとこうかな、と遠慮してしまう小心者の僕には、その気持ち、とってもよくわかります。
それから、小さい病院では産婦人科医が一人か二人しかいない、というのも問題です。産婦人科でも不妊・反復流産というのはひとつの分野にすぎないので、たまたま、その地域の病院には不妊のことがわかる医師がいない、ということもよくあるのです。「不妊のことを質問すると機嫌が悪くなる産婦人科医」というのも実際にいます。しかし、そのドクターは癌治療にはたいへん詳しい医師なのかもしれません、そのドクターは本当は癌治療をしたいのに、不本意にも小さい病院に勤務しているのかもしれません。そのドクターを恨まないでください。 |
| 44歳で体外受精を受けられている方からのメール |
最後に、私にとってとても印象に残っているメールを紹介させて頂きます。メールをくださったかたのプライバシーに触れるという問題もありますが、いろんな示唆に富む内容であり、あえて紹介させていただくことにしました。
A国(ヨーロッパの某国)で本日4回目の体外受精を受けました。本日、2つの受精卵を子宮に戻してもらって今、帰宅したところです。なんとも空虚な気分で眠れず、もう夜中ですが、突然で勝手ながら、ご相談のメールを書かせていただいております。わたくしはもうすぐ44歳になります。仕事に一生懸命で結婚が遅れそれでも4年前に結婚いたしました。結婚前から 妊娠は試みておりましたが、結婚後半年で自然妊娠いたしました。40歳のときでした。が、8週間で流産となり悲しい思いをいたしました。それから、何ヶ月か出来ませんでしたので、病院に相談にいきましたら、すぐに体外受精を薦められ試みましたが成功しませんでした。本日返してもらった受精卵は10個取れたうちの2個ですが5日目の理想的な分裂にはなっていないません。先生は、「2週間待ってみましょう」としかおっしゃいませんが、難しいなら、はっきり言っていただいたほうが大きな期待をして悲しい思いをいなくてもいいかもしれません。
本日のわたくしの質問は1)外で、5日目までにちゃんと分裂していない受精卵を子宮に戻してそこから遅まきながら上手く着床することがあるのでしょうか?2)「なぜ、ちゃんと分裂しないんでしょうか?」3)高齢の場合は分裂が問題なのですか?それとも、着床が難しいのでしょうか?
母国語が通じないところで体外受精を受けるのは、大変ストレスであろうとお察しいたします。こちらにご相談されたのも、日本語で相談できる場所を求められて、のことかと存じます。それでは、わたくしの個人的な意見を述べます。なかには不愉快な内容もあるかと思いますが、お互い顔も知らない者どうし、むしろドライに受け取ってください。
38歳以上のかたが妊娠しにくくなるのは、ひとえに卵の染色体異常が増えるからです。受精卵がつくられても、染色体異常が致死的であればあるほど、その受精卵は早期に発育停止します。また染色体異常が軽度になってくると、妊娠し、胎児がエコーで確認される時期まで成長しますが、子宮内で死亡したり、出産後早期に死亡したり、などの原因となります。
体外受精は、簡単にいうと、卵と精子を出会わせる治療です。現在、体外受精を受けられていますが、卵管閉塞、乏精子症などの問題がなければ、あまり体外受精の意義はありません。卵に問題があるのでなかなか妊娠しないのですから、卵と精子を出会わせる治療をしても、あまり意味がないのです。
残酷なことばかり言いましたが、これが現実です。受け入れられるでしょうか。
もうひとつ、きびしいことを申し上げますが、これまで仕事が面白くて、結婚を後回しにされてきたわけですが、人生はやはり、ひとつ得れば、ひとつ失う、というところがあります。あなたは、もしかしたら今後子供さんができないかもしれない。しかし、そのぶん仕事を通して、自分を磨く、あるいは社会に貢献されてきたのではないでしょうか。あなたの今の生活に、子供さんができれば、今よりもハッピーになるのでしょうが、子供さんがいないことは不幸なんでしょうか?そんなことはないと思いますよ。以上、ご参考になれば幸いです。
お忙しいところ早々にお返事を頂きまして感謝しております。卵子の染色体異常のお話よく理解できました。仕事との両立ということなどのメンタルなご意見も真摯にうけとめております。
現在わたくしの受けております体外受精の治療について卵管閉塞、乏精子症などの問題がなければあまり治療の意味がないという事実は理解できましたが少々驚きました。先生がおっしゃるのは上記の様な問題のない場合は自然に受精することは可能なので卵に問題があるわたくしの場合には同じ事を、体内でするか体外でするかであまり変わりがない。と言うことであろうと存じます。ただ、今のわたくしにとりましては上記のような医学的なことは存じませんでしたが医学の力をお借りしまして10か月分のチャンスを一回で頂ければ・・と今は思っている次第でございます。
しかし先生の話を伺って1つ疑問が出て参りました。もしかしたら一度に10個もの卵を成長させるということはやはり無理やり大きくしている訳でしょうから質が悪くなるということもありえるのでしょうか?それとも、本来の質の10ヶ月分の卵に相当するのでしょうか?体に負担をかけ10個も採取することにより質が落ちるのしたら、それこそ、あまり治療の意味のないことです。お忙しいところ、色々ご相談にのって頂けましたこと 重ねて御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
お返事をいただき、ありがとうございました。最後のほうで、10個の排卵誘発は、量と質において10ヶ月分の卵に相当するのか、というご質問がありましたが、なかなか難しい問題であります。日頃の診療における感触からしますと、排卵誘発された10個の卵は、良好のものから不良のものまでばらつきがあります。単純に10ヶ月分には相当せず、ざっと半年分くらいにあたるのでは、と感じます。(科学的根拠のない数値です。値にはこだわらないでください)。ご参考になれば幸いです。
→お陰さまでわたくしの疑問も随分解決いたしました。本来ならば先生にメールでご相談にのって頂くなどということはありえない事で外来診察に伺いご相談にのって頂くのが筋でございましょう。先生のご好意で海外で不安であろうとご配慮いただきまして色々教えていただいて本当にありがとうございました。
以上が私にとって、とても印象に残っているメールです。メールを掲載することについて、ご本人の了解を得ておりません、ご迷惑をおかけしましたら大変もうしわけありません。
それにしても、高齢で不妊治療を受ける場合、体外受精あるいは不妊治療自体がどの程度意味を持つのか、というのはとてもむずかしい問題です。実際、40代で体外受精で妊娠・出産されているかたもおられ、まったく無意味とは言い切れないし、しかし、大金と時間をつぎこむほどの意味があるとも思えないし…実は僕自身も答えが出せません。でも、ひとつ言えるのは、「努力したら結果が出る」というものではない、ということです。特にキャリアウーマンの方は、それまで「努力は報われる」という実体験をされているかたが多いので、不妊治療だけはそうはいかない、という事実をご理解いただいたほうがいいのかな、と思っています。 |